2023年03月11日(土)公開
制限時間は30分「津波避難のゲーム」を被災地・大船渡市で体験 逃げている最中に『足の不自由なおばあさんに会ったらどうする?』リアルなシチュエーションに熟考
編集部セレクト
東日本大震災の発生から今年3月11日で12年です。今年3月1日時点の警察庁のまとめによりますと、12の都道県で、死者は1万5900人、行方不明者は2523人となっていて、今回初めて、去年と比べて数字に変化がありませんでした。そうした中、MBSの大吉洋平アナウンサーは以前にも訪れた東北の被災地を改めて取材。現地で行われてる「津波避難ゲーム」も体験しました。
3年前は復興工事が行われていた場所…今の様子は
岩手県陸前高田市。12年前の3月11日、この穏やかな海が一変しました。
3年前の2020年3月はまだ復興工事が進んでいましたが、今年3月に再び訪れると、その場所には、野球場・サッカーコート・子ども広場・多目的広場などが整備された高田松原運動公園(2020年8月竣工)ができていました。
去年3月、新たに慰霊碑も設置されて、犠牲者1709人の名前が刻まれました。
(大吉アナウンサー)
「神戸の東遊園地にも、震災で亡くなった方々の名が刻まれた銘板がありますが、1人1人のお名前を見ると、この何十倍、何百倍もの人々が今も悲しみを背負って生きていらっしゃると思うと、本当に胸がしめつけられます」
市内で話を聞くと…。
(Q追悼施設の存在については?)
「生きていた証が確認できるというか。機会があれば(見にいきたい)」
「行けないですよね、なんかまだね。癒されるとは個人的には思わないですね」
『大津波警報が発表されて30分以内に避難場所へ』ゲームで体験
隣の大船渡市では去年から新たな試みが。スマートフォンで津波からの避難を体験する防災観光アドベンチャーゲーム「あの日」。大吉アナウンサーが実際に体験してみました。
スマホから、地震を知らせるアラームが鳴ります。
【スマホから流れるアナウンス】
「観光で訪れた大船渡で地震に遭遇しました」
(大吉アナウンサー)
「私はキャッセン大船渡に来ている観光客で、今、地震が起きて大津波警報が発表されたという設定ですね」
位置情報システムを利用し、地図に表示されたポイントへ行くとヒントを得ることができます。東日本大震災の時、大船渡市では約30分後に津波が到達したため、30分以内でゴールにたどり着かなければなりません。
道にあるQRコードを読み込むと、「わかれ道」という表示が。
【スマホから流れる女性の声】
「じいちゃんとばあちゃん、家にいるはずだけど、私、行ったほうがいいかなあ」
すぐそこにある祖父母の家。どうしたらいいのでしょうか。
(大吉アナウンサー)
「避難場所に行くべきだと思んですよ、自分の命を守ることを考えたら。ただ橋を渡った向こうにおじいちゃんおばあちゃんがいると思うと、様子を確認しに行きたくなる人の気持ちがすごくわかる」
再び、QRコードを探しに歩きます。
(大吉アナウンサー)
「いま気づいたんですけど、時間が出ていますね。大津波警報が出てから16分がたっている」
その後、何度かQRコードを読み取ると、画面に「今すぐ『加茂神社』へ避難してください。地図上に表示された避難場所『加茂神社』がゴールです」と表示されました。
神社までは510m。すでに20分が経過していました。津波が来るまであと10分ほど。早く逃げなければ…と焦りはじめたその時。
【スマホから流れるおばあさんの声】
「ちょっと膝が悪くて、どうもね、親切に。大丈夫だから、歩けっから」
ゴール目前で新たな試練が。おばあさんを助けるか、1人で逃げるべきか。
(大吉アナウンサー)
「車いすを探している場合じゃないですもんね。おばあさんの手を引いて一緒に避難する」
そして、避難場所の加茂神社へ。すると最後に、急勾配の階段が待ち受けていました。
(大吉アナウンサー)
「おばあちゃんの手を引いて、はたしてこのスピードで上がってこられるか…いろんなことを考えますね」
(大吉アナウンサー)
「やっと、やっと着きました。最終避難時間39分12秒です」
途中、思い悩んで5分ほど立ち止まってしまいました。12年前と同じ状況であれば命を奪われていたかもしれません。
(大吉アナウンサー)
「正直30分あれば、どこか近くの高台に行けるのではないかと思っていたんですけれども、大切な人の存在があれば後ろ髪を引かれる。避難場所がわからない。すごく勉強になりますけど、リアルすぎて、いろんなことがリアルすぎて非常に苦しいですね」
震災で店を失うも再建したスナック 3年ぶりに訪問
同じの日の夜、大吉アナウンサーが3年ぶりに訪れたのは、キャッセン大船渡のスナック「どりーむ」の伊東伊佐男さんと妻・すみ子さん。2人は震災で店を失いました。
【2020年3月の取材】
(伊佐男さん)「これだけが、そのままあった」
(すみ子さん)「奇跡の1本ボトルです」
震災で唯一残ったボトルに勇気をもらい、この場所に店を再建。3年前は工事関係者や地元住民など大勢の客でにぎわっていましたが、去年は新型コロナウイルスのためリモート取材に。
【去年3月の取材】
(大吉アナ)「ここ最近のお店の状況はいかがですか?」
(伊佐男さん)「まるっきり暇ですね。厳しいです」
そしてあの、奇跡のボトルは…。
【去年3月の取材】
(すみ子さん)「(奇跡の)ボトル1本残していた方も去年亡くなったんです。ここに置いておくのはつらいので処分しました」
それから1年たってもにぎわいは戻っていません。現在の様子を聞きました。
(伊佐男さん)「まるっきり売り上げはだめですね。でもやっていかないといけないし」
(すみ子さん)「工事関係者も帰ってしまったし。何度もやめようと思ったときも、2人で言い争ったこともあるけども、息子や孫にあとを押されながらここまでやってきているんです」
そんな中、明るい話題はWBCに出場する大船渡高校出身の佐々木朗希投手です。
(すみ子さん)「大船渡の誇りです」
(大吉アナ)「3月11日に佐々木投手が登板したら、どんな思いですか?どんな意味をもちますか?」
(伊佐男さん)「(3月11日は)佐々木投手のお父さんが亡くなった日なんですよ。その時に投げるというのは、どういう縁なのかなってね」
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