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【解説】「兵士の精子を冷凍保存」ロシアが無料化 「なぜ制度化するか、これで終わらないから」ウクライナ侵攻長期化の備えか 

2023年01月05日(木)放送

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2023年の年始早々、ウクライナによる軍事施設への爆撃で大量の兵士を失ったロシア。プーチン大統領は戦争の長期化に備えて「徴兵忌避・脱走への重罰化」や「兵士の精子の冷凍保存」を進めているほか、「動員令の第二弾を用意している」と話すのは大和大学の佐々木正明教授です。(2023年1月5日MBSテレビ「よんチャンTV」より)

―――新年早々、少し不思議なニュースがありました。「ウクライナ軍の攻撃によりロシアの兵士89人が死亡した。禁止されていた携帯電話を使用して位置が特定された」とロシアの国防省が発表しています。何が不思議なのかと言いますと、「なぜ位置を特定された理由、携帯電話の使用のことも発表したのか」佐々木教授の考えでは「今後、前線に投入される新兵の戒めではないか」。

はい。発表自体がとても異例なんですけれども、今ロシア国防省は批判されており、責任者を刑事罰に問うべきだという声も出ています。89人とありますが、おそらく更に亡くなっている。なぜこの位置が特定されたのかというと、新年1月1日に、兵士がロシアにいる家族に、大量にお祝いのメールで携帯電話を使用したんです。そこで位置が特定されて、ハイマースによって一撃に兵士の宿舎が爆撃にあって亡くなったということなんです。ロシアの家族にしてみれば、息子や夫と連絡を取り合った後、亡くなっているという状況。ですから、これを発表するのであれば、必ず遺族や関係者から批判が出ます。

それでも発表した理由はですね、実はロシアのクリスマスは1月7日なんです。7日がクリスマスなんです。ですから、1月7日にまたメールを出すかもしれない、もしかしたら電話をするかも知れないということで、戒めのために発表したんではないか。新兵がどんどん投入されておりますので、その戒めとしてわざわざ発表したんではないかというふうに私は読んでおります。

―――携帯電話の使用禁止が守られてないというのは、統率がとれていないということですか?

これは当初からありました。なぜロシアの指揮官が亡くなっているのか、なぜウクライナ側に新兵が上官を批判するぼやきなどが把握されているのか、携帯電話から漏れているんですね。持っていって戦場で使われている現状がある。そして位置が特定されて大きな情報になる。これはね去年2月の開戦から同じような状況になってるのを、1月1日にまた使ったということだと思います。

―――戦争の長期化に向けて備え始めているロシアとして、佐々木教授にポイントを三つ挙げてもらいました。①動員令の効力継続 ②徴兵忌避や脱走の重罰化 ③兵士の精子の冷凍保存を無料化、ということなんですが、特に三つ目は、どういう意味なんでしょうか?

これは、家族から夫がいなくなり、もしくは息子がいなくなる。そうすると遺族からですね、結婚ができない、子を産むことができないという話が上がって、ロシアの国会で決まったことなんです。なぜ今制度化するかというと、これで終わらないからなんです。兵士がどんどんさらに動員される可能性がある。そうすると、兵士の精子の冷凍保存を無料化して、想像はしたくないですが、将来夫がいなくなった妻が、この精子を使って人工的に子供を産むということを制度化してるっていうことなんだと思います。

―――この三つを見ても、侵攻をやめるつもりはないというふうに思ってしまいます。いっぽう教授によりますと、動員令第2弾が出されれば、今度は「プーチン政権が窮地に追い込まれるのではないか」ということです。

去年9月の動員令以降、世論に変化がありました。軍事作戦支持は少し減り、和平交渉支持が増えています。はい、この第2の動員令というのは、ウクライナのゼレンスキー大統領も昨日言いました「ロシアは大量動員、またするんではないか」と。国防省が実はもう、その演説というかビデオ撮ったとされてるんですが、ロシアはまた国境を閉めて戒厳令を敷いて、ロシアの若い兵士をまた招集するんではないか、それは近々行うということも言われております。

これがなぜ。プーチン政権の痛手になるかというと、世論調査を見ていただければと思うんですが、9月と10月の段階で数字がかなり変わっております。(9月は軍事作戦支持44 和平交渉支持48 10月は軍事作戦支持36 和平交渉支持57)9月に動員令があって、夫や息子、恋人や友達が戦争に駆り出される、それが初めて「戦争が私事になった」状況の中でプーチン大統領への批判的な態度が出てきたというのが世論調査の表れです。

さらに付け加えたいんですが、調査した「レバダ・センター」というのは、巧妙にロシア人なら今の状況で答えられるというような質問を書いておりまして、「軍事作戦支持は、プーチン支持」を意味します。そして「和平交渉支持は反プーチン」なんです。反戦なんね、ですが反戦と言ってしまうとロシア国民は答えられない。ですからこの和平交渉支持という質問項目にするという聞き方をしているんですね。

―――一方でこんなニュースも伝わってきました。アメリカの『ウォールストリートジャーナル』によりますと、侵攻開始から1年となる2月24日に合わせて和平案を提示するのではないかと。ただ佐々木教授によると「両国の要求はともに受け入れがたいものになりそう」ということで、ウクライナの要求しそうなことは「ウクライナのNATO加盟か、それに近い安全保障体制の確立」そして「国境をソ連崩壊後の状態に戻せ」ということ。一方のロシアの要求は「国際社会に対して経済制裁解除。ウクライナに対して4州併合を受け入れること」確かに噛み合いそうにないという感想ですね。

(三澤肇解説委員)どこで線引きをするのか、非常に難しく、さらにどこが仲介に入るのかっていうことが重要です。ジョージアとロシアがやったときには、フランスが仲介に入って線引きしたんだけど、今でも南オセチアとアブハジアというロシアの占領地域が国中残ってますから。そういう形で残るんですよね。どこかで妥協しなきゃいけないんですけどもどこが仲介に入ってくるのか、非常に注目しています。

(佐々木教授)プーチン大統領は1月3日に既にトルコのエルドアン大統領と話し合っております。エルドアン大統領はアメリカとも話ができるNATO加盟国ですありますので、トルコが動くことが、和平交渉に向かうんではないかという動向になると思います。

―――停戦ラインについて三つの可能性は①2014年2月までのウクライナ+クリミア半島も含めた範囲②2022年2月23日・侵攻前までの範囲(クリミア半島はロシアが一方的に併合、ルハンシク・ドネツクの一部も親ロシア派による人民共和国)③2022年9月30日の4州併合宣言後(ルハンシク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソンをロシアが一方的に併合)この可能性ですけども。

まず、停戦ラインというのは、仲介国が入って両国のトップ首脳が「停戦をしましょう」と今睨み合ってる前線をそこに政治的に固定するものなんですね。例えば朝鮮戦争があって70年以上経ちましたが北緯38度線がその例だと思っていただければと思います。ではウクライナとロシアとの戦争において、38度ラインに当たるものはどこかと、この3つのラインを提示してみました。

今は③の状況。4州をロシアが併合しウクライナが支配している地域もありますが、ここから12~1月の段階で、ヘルソン州の州都が奪還され、東部でも前線がロシア側に動いたりウクライナに動いたりしております。そこから、だんだんロシアが押し込まれている状況、そうすると②まで来るのかどうか、去年2月24日の段階まで来るか、もしここの段階になりますと「ロシアの敗北」を意味するんですね。前線がどんどん2月24日時点に近づいていくと、敗北を意味する。そうするとプーチン大統領が様々なことをやってくる、核や大量破壊兵器のリスクも高まります。そしてもし②まで行った段階で、ゼレンスキー大統領が常々言っている①クリミア半島の奪還まで行くのかどうか、そうすると、ここには大量の武器が必要で人員も必要であり、それがいつまで続くのかというところが、この戦争がいつまで続くのかという質問と同じところになります。

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