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『給食停止』は回避できなかったのか...毎朝おかず作りに頭を悩ます保護者だけでなく"業者"も市の対応に憤懣 「貧困・いじめ問題」への懸念も

2022年05月09日(月)放送

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 大阪府東大阪市で起きている「給食停止問題」。本来なら4月12日に始まる予定だった小学校の給食は、5月9日時点も一部で提供できていません。毎朝お弁当作りに追われる児童の保護者からはもちろん、給食の配送業者や小学校の先生からも市に対して憤っています。

「大変のひと言」…始まらない給食に保護者からは怒りの声

 新学期早々、東大阪市の約半数・26の小学校、1万2000人分の給食がストップしました。
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 5月2日の朝6時半すぎ、小学生3人と園児1人を育てる井上真名美さん(東大阪市居住)は、全員分の弁当作りに追われていました。給食が停止していて、おかずを持っていかなければならないのです。
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 (井上真名美さん)
 「何品入れるかと、何を入れるのかを考えることがしんどいですね。スーパーをぐるぐる回って。(Qぐるぐる回るんですか?)ぐるぐる回りますね。考えられない、思いつかない時は。保護者目線では『大変』のひと言しかないです」

 井上さんはいつもより毎朝1時間早く起きて準備し、子どもたちを送り出してから仕事に向かいます。給食の停止で負担は増しています。
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 給食停止の小学校では、はじめの1週間はお弁当で、4月18日からは『簡易給食』というものが提供されています。簡易給食とは何なのか。市内の小学校を取材すると、教室では、給食係の児童たちが紙皿にご飯をよそったりゼリーを配ったりしていました。この日、学校から提供されたのは、ごはん・牛乳・海苔・チーズ・ゼリーで、調理不要なものばかりです。
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 児童はそれぞれが持ち寄ったおかずとともに昼食。家庭への影響は毎朝の労力だけはなく、経済面にも出ています。
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 小学生2人を含む6人を育てる母親の森山さん(仮名)も早朝から弁当を作っています。給食費なら1食あたり240円ほどですが、弁当の日が増えると家計に影響が出てくると話します。

 (森山さん(仮名))
 「経済的にも影響が出てくると思うんですよ、すごく。うちも食費もすごくかかっているけど、夏休み(学校がない期間)くらい料金がかかっているわけやから。プラス3万~5万円くらいはかかってくると思わないと、やっぱり1食増えるだけでそれだけ金額があがるじゃないですか。結構な金額ですよ、ほんまに」

 なぜこんな事態になったのか。怒りの矛先は、東大阪市に…。

 (森山さん(仮名))
 「新学期が始まる前になんとかできた問題じゃなかったのかなとか、いろいろ考えたり。それなら早く言えたんじゃないかなとか、そういうことは思いましたけどね」

配送業務を落札の新業者は『仕様書』めぐり「市の対応に不満」 なぜ前業者は“協力”せず?

 一体なぜ、給食は停止したのか。東大阪市の給食は『調理場』から配送業者が各学校に運んでいます。しかし、前の業者は去年、四條畷市の官製談合事件で入札の参加停止となり、新しい業者が配送業務を落札しました。しかし、新業者は4月までに配送用トラックを用意できず、契約が解除されたのです。
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 なぜ、トラックを用意できなかったのか。新業者は取材に対して児童や保護者に「申し訳ない」と謝罪。その一方で「市の対応に不満がある」と主張しました。新業者によりますと、市が作成した仕様書には「車は17台必要で、うち6台が昇降機能付き」と書かれていたにもかかわらず、実際は違ったといいます。

 (新業者)
 「落札の後に小学校を確認すると“17台全てを昇降機能付きにしないと搬入できない”と私たちは判断した」
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 残りのトラックを購入するわけにはいかず、50年配送業務を務めたとされる前業者から車をリースしようと計画。しかし、協力が得られなかったというのです。
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 子どもたちの給食への影響が懸念される中、なぜ協力しなかったのか。前業者に話を聞きました。

 (前業者の会長)
 「(Q新業者に車を貸していたらこうした事態になっていなかったかもしれないが?)俺らは、車貸さなくても、役所から話に来たらええやん」

 会長は、参加停止を受けたわだかまりがある中で、東大阪市が2社の間に入って調整しなかったことが協力できなかった一因だと、市への不満をあらわにしました。

 (前業者の会長)
 「もちろん東大阪市の職員は給食のために配属された職員でしょ。その人たちが一時でも(給食を)止めてはならないという意識をもたないとあかんのちゃうの。(東大阪市と新業者・前業者の)3者が同じ席について話し合いがあったら、これはまた話は別やがな。そやろ?俺らのことを(話し合いもなく)ほっといて『やらなあかん』と言われたらね、たまったもんやない」

教育委員会「民民の話なので立ち入れなかった」と主張

 給食停止という事態を回避するため、市は最善を尽くしたと言えるのか。4月の会見では記者から厳しい質問が相次ぎました。

 【東大阪市教育委員会の会見 4月8日】 
 (記者)
 「これは絶対、市の怠慢ですよ。あまりにもひどいと思うんです。(業者間で)何かあるということはだいたいわかっていたと思うんですけど、そのあたりの想像や予想はなかったんですか?あまりにも甘いと思うんですがいかがですか?」
 (学校教育部の次長)
 「そのあたりのことは想像はできますけども、あくまで今回一義的に新業者が私どもの契約の相手方になりますので、伝え方は難しいですけれども、民間同士の話になりますので、そこまでの話は私どもはどこまで話をつっこめるのかなというところです」
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 (記者)
 「想像はできたわけですよね?でもそうしなかったということですよね?」
 (学校教育部の部長)
 「民民の話になってきますので、我々としてはそこまで立ち入れなかったということでございます」
 (記者)
 「市としては改めて、どこまでが市の責任で、それに対して申し訳ないと思っていらっしゃるのでしょうか?」
 (学校教育部の部長)
 「今回、新しく業者を選定して、この間ずっと協議・調整を続けてきた訳なんですけれども、結果、最終的に子どもたちに迷惑をかけるということは、本当に我々に責任があると考えております」

お弁当やおかずを持ってこられない児童も…PTAは「いじめ問題にも繋がる」と懸念

 ずさんとも言える契約の問題に巻き込まれた子どもたち。家庭環境によって給食の停止に対応できない事態も起きているようです。

 (東大阪市PTA役員)
 「本当にお弁当を持ってこられない子や、おかずを持ってこられない子がたくさんいたり。レトルトの子もいてるんですよ、お昼にカレーのレトルト。そういう状況を見たときに、新たに貧困の差が出たり、いじめ問題にも繋がると思っていて」
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 さらに、東大阪市の現役の教諭からも「給食は学校教育のひとつだ」と怒りの声が上がっています。

 (東大阪市の現役の教諭)
 「こんな恥ずかしい話はないぞと、東大阪市で。前代未聞というかね。なにやってんねんと、つらかったですね。いま学校に求められているのが、やっぱり食もそうだし、居場所もそうだし、そういった面で、ある意味福祉的なところがやっぱり年々求められている。その一番の根本となる給食がこんなことになるとはね、まさかと本当にもう…」

『給食は子どものセーフティネット』

 行政に詳しい神戸学院大学の中野雅至教授は今回の問題について次のように話します。

 (神戸学院大学 中野雅至教授)
 「通常、仕様書を出したら行政は説明会を行います。そして入札参加業者から質疑も受けます。Q&Aが必ずあって、そこからやりとりがあるはずです。それで業者も配送業務を受託しているのであれば、業者に問題も相当あると思います。それで落札しているわけだから。それを今になってできないというのは問題があります。ただ、給食全体に責任を持つのは東大阪市役所だと思うんです。それはやっぱり責任重大で、民間業者同士の話というのではなく、責任を持たなきゃいけない」

 そして給食の役割については次のように指摘しました。

 (神戸学院大学 中野雅至教授)
 「特に給食というのは重要で、最近は『貧困の連鎖』といって、親が貧困だと子どもにも貧困が連鎖していく。それが1番露骨に表れるのが食の現場であり、学校給食です。1人で食べないといけない子だとか、粗末な食事を取らなければならない子とか、朝食を抜いてくる子とか、いろんな子どもがいるわけです。その中で給食というのは子どもにとって最後のセーフティネットだと思うのです。栄養のバランスを取れる最後のセーフティネット。これを守るのは公務員の仕事であり、教師の仕事でもあって、役所の仕事じゃないですか。これをやらなかったら何のために役所や公務員は存在するのと言われます。民間業者同士の話だからできませんとか、そういったことを聞いていると、みんな不信感を抱くと思います。ここが今回の最大の問題だと思います」

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