大人気映画「天気の子」から気象に関する疑問を学ぶ

5分で読める!教えてもらう前と後

2019/09/02 21:00

2016年に公開され、社会現象にもなったアニメ映画「君の名は。」の新海誠監督の最新作「天気の子」が、現在全国の映画館で公開中だ。その劇中にある、「積乱雲」に関するセリフ「空は海よりもずっと深い未知の世界だって。積乱雲ひとつに湖ぐらいの水が含まれててさ」ははたして本当なのか...。8月27日放送の「教えてもらう前と後」では、「天気の子」で気象の監修をした気象庁 雲研究者の荒木健太郎さんをはじめとする専門家の解説で、気になる「天気」について学んだ。

空には湖くらいの量の水が浮かんでいる
アニメ映画「天気の子」には、夏を象徴する雲・積乱雲について「空は海よりもずっと深い未知の世界だって。積乱雲ひとつに湖ぐらいの水が含まれててさ」というセリフがあるが、本当に空に浮かぶ雲に、湖くらいの量の水が含まれているのだろうか。

「天気の子」で気象の監修をした、 気象庁 雲研究者の荒木健太郎さんに聞いてみると、「本当です。雲の大きさにもよるんですけど茨城県の牛久沼ですとか千葉県の手賀沼とか、そのぐらいの貯水量と同じです。1つの発達した積乱雲の中に含まれている水の量は最大で600万トンあるというような研究もあります」と説明してくれた。

600万トンの水をドラム缶に例えると、およそ3000万本分! ということは、空には湖くらいの大きさのとんでもない量の水が本当に浮かんでいるということになる。
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「晴れ」と「くもり」の決定は雲の量
「晴れ」と「くもり」は、どんな基準で決められているのか? 実は、小学5年生で習う理科の知識があればその違いはすぐに分かる。実際に小学生に聞いてみると、「雲の量が《0~8割》だと晴れで、《9~10割》だとくもりということを習いました」と答えてくれた。
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8割が雲でおおわれている空は「晴れ」。「くもり」は、見渡した空に9割以上の雲があるときだけ。すなわち、「晴れ」と「くもり」を決める基準は雲の量次第というワケ!

そしてなんと、その判断をしているのは機械ではなく人間だった! 気象庁の職員が目で見て決めているという。気象庁に入って5年目の技官・山辺大貴さんに聞いてみると、「3時間毎に外に出て、雲の形や量、それと天気を観測しています」と、毎日の業務について教えてくれた。そこで、毎日3時間ごと、午前6時から翌朝3時までの合計7回観測するという山辺さんが、どのように天気を観測しているのか密着してみた。
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観測の10分前にアラームが鳴ると、エレベーターで屋上に登った山辺さんが薄い雲を見逃さないためのサングラスを装着。そして、屋上をぐるっと歩きながら空をすみずみまで見て、雲の量と天気を1分間観測。すぐに部屋に戻り、目で見た情報を気象庁のメインコンピューターに入力した。こうして天気は決められていたのだ。ちなみに、この日の天気は、雲量1割なので「快晴」となる。雲が1割だったとしても、近くに雨雲があって雨が一滴でも目に写ったら雨と判断するらしい。
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的中率世界一を誇る日本の天気予報
天気予報でも度々耳にしたことがある「アメダス」は、教科書にも載っているので習ったハズだが、どんな役割をしていてどんな形だか覚えているだろうか? 「アメダス」は、 全国におよそ1300か所あり、風の向きや速さをはかる「風速計」「日照計」「温度計」、そして雨の量を測る「雨量計」などがワンセットになっている「無人観測システム」のこと。
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ちなみに、天気予報はこの「アメダス」と、「気象衛星ひまわり」そして、予報の計算をする「スーパーコンピューター」のシステムをメインに作られている。
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現在、天気予報の的中率は、翌日だと87%の確率で当たる。そのことについて気象予報士の森朗さんは「日本の天気予報の中でも、特に翌日の予報に関しては世界一といってもいいほどよく当たるんです!」という。そんな、日本の翌日の天気予報の的中率は、1975年は78.9%だったが、2018年には87.2%となり、どんどん上がってきている。ということは、将来的には100%当たるようになるのだろうか。

森さん曰く「100%は無理ですね。天気は高層ビルが一つ立っただけでも風向きが変わりますし、広い海の上とか山の中まで全部観測を網羅できるわけではないので、さすがに100%は無理です」とのこと。それは残念だが、他に進歩していることがある。2019年の6月からは、16日先の天気予報まで見られるようになったのだ。現在の週間天気予報の的中率は76%なので、長期旅行に行ったり先々の予定を立てたりする時に是非参考にしてみてはいかがだろうか。

「教えてもらう前と後」はMBS/TBS系で毎週火曜日よる8時放送。政治・経済・健康・アート・歴史など毎回その分野のスペシャリストが登場し、「知のビフォーアフター」を体感できる。

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