オウム裁判をきっかけに被害者が裁判に参加できるように【教えてもらう前と後】

5分で読める!教えてもらう前と後

2018/08/17 16:30

地下鉄サリン事件をはじめ、衝撃的な事件を次々と起こしたオウム真理教。この7月には松本智津夫元死刑囚と幹部に死刑が執行されたことも記憶に新しい。8月14日放送の「教えてもらう前と後」では、「オウム裁判」がきっかけで日本の刑事裁判のあり方が大きく見直されることになったという事実を、菊地幸夫弁護士が解説した。

裁判は被害者のためのものではなかった!?

オウム真理教を設立した松本元死刑囚は、13の事件で殺人などの罪で起訴された。一連の事件での犠牲者は29人、負傷者はおよそ7,000人にもおよぶ。そして、被害者家族は数万人規模にもなるという。しかし1996年、松本元死刑囚の初公判では、傍聴したくても、被害者やその家族のために割り当てられた傍聴席はわずか2席で、ほとんどの被害者とその家族が傍聴することができず悔しい思いをした。ちなみに、48席しかない一般の傍聴券を求めて集まった人は1万2千人にも及んだ。

これほどまで世間の関心を集めたオウム裁判がきっかけで日本の司法が大きく動く。これまでは1990年の最高裁で出された「刑事裁判は国の秩序の維持や公益のためにあり、被害者の利益を確保するものではない」という判例が基準となっていた。そして、「感情を裁判に持ち込まない」という原則のもと、被害者側が出来るのは傍聴席に座るだけで発言することも出来なかった。つまり被害者は蚊帳の外だったのだ。しかし、事態が大きく動くことに。

被害者の声が司法を動かした

ある事件で妻をなくし、被害者の思いを痛いほど感じていた岡村勲弁護士が、同じ境遇の人たちと結成した「全国犯罪被害者の会」。全国で署名活動を行い、55万人分を集め犯罪被害者の地位向上を訴えた。その声に耳を傾けたのが、当時の総理大臣・小泉純一郎。小泉内閣は、犯罪被害者の権利を認める改革案を作成。そこには「裁判は被害者のためにもある」と書かれており、それは最高裁の判例を覆す言葉だったのだ。そして2008年、「被害者参加制度」が導入される。その結果、検察官の隣に「被害者や遺族の席」が設けられ、被告への直接質問ができるように。つまり、被害者の立場は「傍聴のみで発言もできない」というものから、「裁判に積極的に参加して自分の意見も述べることができる」というものへと大きく向上したのだ。このように、犯罪被害者の声は司法制度を変え続けている。

「教えてもらう前と後」はMBS/TBS系で毎週火曜日よる8時放送。
政治・経済・健康・アート・歴史など毎回その分野のスペシャリストが登場し、決定的瞬間を教えてくれる。
「知のビフォーアフター」が体感できる番組。

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