サッカーワールドカップでも注目され、いまやスポーツ界では常識になっている「ビデオ判定」。実は世界で初めて導入されるきっかけとなったのが、昭和の大横綱・大鵬の一番にあったという。7月31日放送の「教えてもらう前と後」では、大鵬の取り組みを振り返り、スポーツ界でビデオ判定が導入されることになった経緯についてひもといていく。
大鵬の連勝ストップがきっかけでビデオ判定が導入へ
昭和の子どもたちの好きなものベスト3が、「巨人」「大鵬」「卵焼き」といわれるほど人気を誇った大鵬。当時、相撲中継で大鵬の一番が放映される頃には、女湯が空っぽになったというエピソードも有名だ。そんな32回の優勝を数える大横綱・大鵬の46連勝をかけた大一番で大事件がおこった。
それは、昭和44年大阪場所2日目。前頭筆頭・戸田との一番でのこと。鋭い立会いで大鵬に思いっきりぶつかる戸田。それに必死で応戦する大鵬。土俵際、両者の足はほぼ同時に外に出たように見える。最初に軍配が上がったのは大鵬。しかし審判から物言いがつき、協議の結果判定が覆り、戸田の勝利となる。そして大鵬の連勝は45でストップしてしまった。しかし、この試合が「世紀の大誤審」と呼ばれ、世界で初めてビデオ判定が取り入れられるきっかけになったというのである。いったいどういうことだったのか。
実はその勝負の翌日、新聞に驚きの記事が掲載された。あらためてビデオを見直すと、戸田の足が大鵬よりも一瞬早く土俵の外に出ていたことを確信したというのだ。つまり最初の行司軍配が正しかったことになる。
誤審にも「無様な相撲をとった自分が悪い」
相撲ジャーナリストとして60年にわたり大相撲を現場で見続けてきた杉山邦博さんは語る。
「これだけ大騒ぎになって新聞などで世紀の大誤審とまで騒がれましたから、協会としても役員会を開かざるを得なかったんでしょうね。テレビのスロービデオを参考にしようという話になって、昭和44年の5月場所から取り入れるようになりました」
2度とこのような誤審が生まれないよう、次の場所からビデオ判定が取り入れられたのだ。世界的に見ても、スポーツ界でのビデオ判定は、大相撲が初めて。
現在は、判定が難しい勝負の場合、土俵上の審判長がビデオ室とイヤホンでやり取りしながら判定を行っている。
「大鵬さんはこの事に触れられたらいつもこうおっしゃいました。『あんな無様な相撲をとった私が悪いんです』と。やっぱり大横綱でしたね」と、杉山さん。その2年後の昭和46年、大鵬は引退を発表。大横綱・大鵬は、圧倒的な強さと気高き振る舞いで、記憶にも記録にも残る伝説の力士となった。
「教えてもらう前と後」はMBS/TBS系で毎週火曜日よる8時放送。
政治・経済・健康・アート・歴史など毎回その分野のスペシャリストが登場し、決定的瞬間を教えてくれる。
「知のビフォーアフター」が体感できる番組。
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