「教えてもらった前と後で、見る目が変わります!」を合言葉に、滝川クリステルと学ぶ今回のテーマは……池上彰と学ぶ「ニッポンが動いた日」と「君たちはどう生きるか」。「ニッポンが動いた日」編では、歴史に残る大きな事件や出来事をきっかけに日本がどう変わったのかを池上目線で解説します。また「君たちはどう生きるか」編では、池上が小学生の頃に出会い、心から感動したベストセラーを読み解きます。
池上彰の人生に影響を与えた1冊!
1937年(昭和12年)、第二次世界大戦が起こる2年前に出版された吉野源三郎の著書「君たちはどう生きるか」が、昨年漫画化されて200万部を超える大ベストセラーとなった。
帯には、「池上彰が心から感動し、人生を決めた1冊」と書かれている。
「小学校のとき父が買ってきてくれて、最初は『親に勧められた本なんて......』と反発していましたが、読んでいくうちに夢中になりました! この本は子どもに向けた哲学書です。つまり道徳の本ですが、生きる上で本当に大切なことは何か、どう生きればいいのかを考えさせてくれる作品です」と、池上が絶賛する本書はなぜ、80年のときを経てもなお売れているのか。池上が本書を徹底解説。そして本文から一節抜粋して、若者へ、そして社会へ伝えたいメッセージを披露した。
今回番組では、書かれているエピソードを映像化。加藤清史郎が主人公のコペル君を演じた。
「実は、このお話をいただく少し前に読んでいました。普段僕もメガネなのでコペルくんに似ているんじゃないって家族から言われていたので嬉しかったです」と加藤。
コペル君と様々な会話を交わしながら成長するきっかけを与えてくれる、母の弟・おじさんを演じるのは「本屋さんでこの本を見つけたとき、自分の子どもに買って渡しました」という長谷川朝晴。
そして中島ひろ子が、母親を演じコペル君の心の成長を暖かく見守る。「おじさんのように丁寧に会話をして教えてくれると、子どもでも理解しやすいし一歩踏み出すきっかけになると思います」と中島。
主人公は、本田潤一という15歳の中学2年生の男の子。コペル君というあだ名は、おじさんがつけてくれた。「普通の人とは少し違う発想をしていいな」ということで、「コペルニクス的発想」にちなんでつけたのだ。
おじさんはインテリだが失業中で、しょっちゅう家に遊びにきて話を聞いてくれる。早くに父親を亡くしたコペル君にとって、父親のような存在でもありお兄さんのような存在でもある。学校であったことを報告したり、困ったことなどを相談すると、大人の意見を押し付けるのではなくて、コペル君の意見を尊重しながらどうしたらいいのかを一緒に考えて、自分で答えを出せるように導いてくれるのだ。
ある日コペル君は、友達がいじめられているのを目撃するが、助けることができず、友達を裏切ってしまったという罪悪感に苛まれて不登校になってしまう。
そんなコペル君を見ておじさんはこう言います。
「コペル君は今、大きな苦しみを感じている。なぜそれほどまでに苦しまなければならないのか。それはね、君が正しい道へ向かおうとしているからなんだ。僕たち人間は自分で自分を決定する力を持っているのだから......」
その言葉を自分で咀嚼して勇気を振り絞って登校したコペル君は、友達に謝まることができ、さらに強い友情で結ばれることになるのだ。
池上はこう解説する。
「この本は、子どもが『読みたい!』と思って購入するというよりも大人がこの本を読んで『自分の子供に読ませたい』と感じて購入していくことが多いのでは。この中に書かれていることは、本当は親が子どもに伝えるべきことではあるのですが、会話がなかったり言うタイミングがわからない場合がありますよね。なぜ父親が私にこの本を渡したのかと考えたら、父親は私に向かって恥ずかしくてそんなこと言えなかったんじゃないかと思いました。そんな時、会話の代わりにこれを読んでごらんと言って渡してくれたのかなと。この本を読んでいる子どもにとって、本書がコペル君のおじさん的な役割を果たしてくれているのではと分析しています」
最後に、池上が最も伝えたい一節を紹介した。
「僕達人間は、自分で自分を決定する力を持っている。だから誤りを犯すこともある。しかし僕たちは自分で自分を決定する力を持っている。だから、誤りから立ち直ることもできるのだ」
この文章について池上はこう捉えている。
「今も世界のあちこちで戦争や紛争が起きています。シリア内戦は今もなお解決の糸口が見えません。でも、それもみんな人間が始めたこと。それならば人間が誤りから立ち直ればいい。人間はその力を実は持っているんじゃないか。そういうことを私たちに投げかけているんじゃないかと思うんです。つまりこれからをよくするために私たちに何ができるのか。
改めてみなさんに問います......君たちはどう生きるか」