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【学歴詐称疑惑】伊東市・田久保市長『大学卒業』は勘違い?嘘?専門家「証拠や事実なければ"勘違い"認められにくい」 市議会は百条委設置案を可決し市民は刑事告発...公選法違反になる?市長は辞任し出直し選へ臨む意向表明【解説】

解説

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 田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑に揺れる静岡県伊東市。市長本人は大学を卒業したと主張してきましたが、結果的に大学を卒業しておらず除籍されていたことが判明しました。ただ、「学歴詐称の疑惑」については否定を続けています。 「勘違い」なのか「詐称」なのか。疑惑が罪に問われる可能性はあるのか…。日本大学・安野修右准教授、法政大学大学院・白鳥浩教授、川崎拓也弁護士の見解を交えてまとめました。

『学歴詐称疑惑』市長は勘違い?嘘?

 静岡県伊東市で今年5月29日に市長に就任した田久保真希氏。2019年に伊東市議会議員に初当選しています。そんな中、6月上旬に複数の市議に文書が届きました。

 【複数の市議に届いた文書より】
 「東洋大学卒ってなんだ!
 彼女は中退どころか、私は除籍であったと記憶している
 こんな嘘つきが市長に選ばれるなんて信じられない!
 議会に真実の追及を求める!
 ※こんな噓つき、卒業証書の偽造には注意を。」

 7月2日の会見で田久保市長は、「卒業証書を東洋大学までとりに行ったところ、『除籍』と判明した」「除籍だが詐称はない」と発言しています。

 【除籍されるケース】
 ■学費を期日までに納めない
 ■在学年数8年超え など
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 除籍と中退の違いについて元厚生労働省キャリア官僚で行政学者である神戸学院大学・中野雅至教授は、「重みが全然違う。大学の場合は中途退学者も復学できますが、除籍はお金納めてないのでそこで終わってしまう。全く重みが違うんです」とコメントしました。
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 7月2日の会見で田久保市長は「なぜ卒業から除籍になったのか確認していく」と発言しています。

 しかし東洋大学に確認したところ、「卒業から除籍にはならない」としています。その後、田久保市長は「卒業をしたと勘違いしたと言われると否定できない」「大学時代は自由奔放」とも発言しています。また「絶対卒業したと思っていた」と言う大学時代の同級生もいるということです。

 除籍の通知というのは、本人ではなく保証人へ知らせがくるそうです。その通知を受け取った保証人が本人に知らせていなければ、“知らなかった”という可能性もなくはないということです。

“チラ見せ”卒業証書は何だった?

 6月26日の会見では田久保市長は、「来週の会見に卒業証書や卒業アルバムなどを持参したい」とも発言しています。もし嘘をついていて隠そうとしていたら、卒業証書など持参できないため、嘘はついていないのでは?とも受け取れます。しかし実際は、この後「除籍」ということがわかるので卒業証書などの持参はありませんでした。

 そして、26日の会見より前に“チラ見せした”といわれている卒業証書はいったい何だったのか?という疑問も出てきます。この“卒業証書”について、伊東市議会・青木敬博副議長は「(卒業証書を)パッと開いては見ようとすると引っ込めちゃう」と発言していました。

 その後の7月2日の会見で田久保市長は、「卒業を証明するものだろうとお見せしたが、機能しなくなった」「卒業証書と認識して提示したが除籍である事実が出た。どうしてそうなったか確認中。これ以上の情報の錯そうがあってはならない」としています。

 もし、卒業証書として見せたものが“作成したもの”だったとすると、有印私文書偽造の罪になりますが、「他の書類と“勘違い”したなら罪には問われない」と川崎拓也弁護士はコメントしています。

公職選挙法違反に当たるのか?

 7月7日、伊東市議会が百条委員会の設置案を可決、そして市民から刑事告発がありました。

 「当選を得、または得しめる目的」で「虚偽事項の公表」なら公職選挙法違反になり、2年以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金となります。

 「虚偽事項の公表」に当たるかどうかの判断は、▼公表の度合い▼故意かどうか、によってなされます。日本大学・安野修右准教授によると「虚偽が選挙結果を左右したかどうかは関係ない」ということです。

 【ポイント1 公表の度合いは?】
 田久保市長「選挙時に大学卒業を公表していないので違反にならない」
 安野修右准教授「選挙前の市議会議員時代に、どれほど公表していたかどうかもかかわってくる可能性」

 【ポイント2 故意の嘘か?】
 田久保市長「大学を卒業していると認識」
 安野修右准教授「『大学側のミスで卒業通知』といった証拠や事実が出てこなければ『勘違い』と認められにくい状況」

伊東市議会は兵庫県に学んだ?!

 7月7日、伊東市議会は田久保市長に対し、辞職勧告決議案を可決しました。これは法的拘束力はありません。この辞職勧告決議案よりも法的拘束力ある、不信任決議案は出していません。これについて法政大学大学院・白鳥浩教授によると「百条委員会の調査結果が出る前に不信任決議を出した兵庫県の“二の舞”は避けるはず」ということです。

 一方の田久保市長は6月25日に、「『怪文書』の差出人に法的措置を検討」としていて、7月2日には「(怪文書と断じた理由は)差出人不明で恐怖を覚える文面だった」としていましたが、文書は事実を示していました。

 ではこの文書を“怪文書”と言って、法的措置を検討し始めるのを本人の判断でしていいのか?白鳥浩教授によると「告発された側が『怪文書』だと判断するべきではない」ということです。このような発言は兵庫県で問題になったはずでした。

 その後、7日夜、田久保市長は会見を開き、大学を卒業ではなく除籍になっていたことを明らかにしたうえで、「市民や関係者に多大なる迷惑をお掛けしました」と謝罪しました。そして、検察への上申書を提出の後に辞職し、出直し選挙へ臨む考えを示しました。

2025年07月08日(火)現在の情報です

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