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「高齢者にケガをさせるのが怖い」"足のしびれ"のコロナ後遺症で退職...オミクロンでも軽くない後遺症の実態「相当な数の方が休職に追い込まれている」

2022年10月05日(水)放送

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 大阪府の10月5日の新型コロナウイルス新規感染者数は3090人だった。過去最多は7月26日の2万5741人で、減少傾向にあると言える。しかしそんな中、コロナ後遺症の患者が急増している。大阪府に寄せられた後遺症相談件数は、7月が727件だったのに対して、8月は3054件で4.2倍になっている。オミクロン株は比較的症状が軽いとされているが、後遺症に関してはそうとも言えないようだ。後遺症外来の現場を取材した。

7月に感染…一旦仕事に復帰するも後遺症で休職

 東京・渋谷区でこれまで5000人近くのコロナ後遺症の患者を診察してきた「ヒラハタクリニック」。9月13日にクリニックを訪れたAさん(40代)は、第7波の流行真っ只中の今年7月に感染。一旦、仕事に復帰したものの、後遺症を発症して、現在まで2か月近く休職している。
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 (Aさん)
 「余裕をもって復職したつもりだったんですけど、発症から1か月ぐらい経ってまた微熱が出だして、ひどいけん怠感が戻ってきて。風邪の症状とかだるいとか頭が痛いという一般的なありふれた症状なので、それって“ただの怠けなんじゃないか”って、皆さんそれで苦しんでいるんじゃないかな」

オミクロン株は症状軽いとされているが「後遺症はほとんど何も変わらない」

 ヒラハタクリニックの平畑光一院長によると、新型コロナウイルス感染者の約12%が後遺症を発症していて、けん怠感や頭痛に加えて、思考力が低下するブレインフォグ、脱毛、味覚・嗅覚障害など様々な症状が確認されている。
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 ピーク時には全国で1日に約26万人の感染者が確認された第7波。オミクロン株の症状は軽いとされているが、後遺症にはあてはまらないという。

 (ヒラハタクリニック 平畑光一院長)
 「(症状が)軽いっていうイメージがある方はたくさんいらっしゃると思うんですけど、実はオミクロンに入ってからも、後遺症自体の一番重要な症状であるけん怠感とかブレインフォグとか頭痛とか、そういったものに関してはほとんど何も変わらないですね」

学校に通えない日が続く高校生「勉強や部活で置いていかれるのが不安」

 後遺症に苦しむ患者は関西にもいる。コロナ後遺症外来を設置している大阪府堺市の邦和病院。第7波で患者は倍増し、多い日は80人を診ているという。
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 (医師)「経過はいかが?」
 (患者)「いまだに髪の毛が抜けている状況ですね」
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 (患者・20代)「手足の力が全然入らない。パソコンを打つときに指が震えて打ちにくかったりする」
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 特に顕著なのは若い世代の患者だ。高校1年生のBさん(16)は、8月下旬に新型コロナウイルスに感染した。療養期間が終わった今も頭痛やけん怠感が続き、学校に通えない日々が続いている。

  (医師)「学校行っているの?」
 (Bさん)「今休んでいます」
  (医師)「どのくらい休んでるの?」
 (Bさん)「1週間ほど。先週火曜日にしんどくて早退してからずっと休んでいます」
  (母親)「学校に行ける目安は?」
  (医師)「まあよく聞かれるけれど個人差あるから。高校生やったら早い人なら3~4週間。今は断定できない」
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 感染前、Bさんは吹奏楽部の活動に力を入れていた。いつ学校に戻れるのか、悩みは尽きない。
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 (高校1年生 Bさん)
 「学校に行かなかったら、勉強とかも置いていかれるじゃないですか。部活も家であまり練習できないので、それで置いていかれるのがけっこう不安ですね」

退職を余儀なくされた介護士「高齢者にケガさせたりするのが怖い」

 深刻な症状に苦しむ若者もいる。大阪府松原市に住むCさん(23)。

 (Cさん)「歩くのもしんどい。横になると足が痛くなっちゃう」
  (医師)「もう1回ちょっと歩いてみて。…しびれはない?」
 (Cさん)「ぴりぴりしているくらいですかね」
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 Cさんは7月中旬に新型コロナウイルスに感染。39度の高熱が出て救急車で搬送された。感染から2か月が経った今も左の手足のしびれが続いているという。
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 (Cさん)
 「この足になってから階段の上り下りができなくて。左の足は全く床につけられない状況。つけてしまうと痛くなってしまうので。“この先歩けなくなるんじゃないか”という怖さがある」
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 10代からの夢だった介護士として働いていたCさん。足のしびれによって退職を余儀なくされた。

 (Cさん)
 「この状況で高齢者を介護すると、ケガさせたりするのが怖いから、できないと思ってやめざるを得なかったです。資格もせっかく取ったから、(高齢者の)日常生活を助けてあげたいという気持ちがあったから、なおさらできなくなったのが自分の中で悔しいというかすごくつらい」

後遺症対応のクリニック院長「休職になっている方が約500人中300人弱」

 東京でコロナ後遺症の患者を診ている平畑院長によると、ここ半年で受診した後遺症患者は生活に大きな影響を受けている人が増えているという。
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 (ヒラハタクリニック 平畑光一院長)
 「オミクロンに入ってから、労働者523人中、もう仕事を失っている方が28人いらっしゃる。休職になっている方が約500人中300人弱です。相当な数の方が休職に追い込まれている」

「酸欠になっていることがわかってきている」新たな治療法を模索

 いまだに確立された治療法はないコロナ後遺症。これまでは上咽頭擦過療法という鼻腔の奥にある上咽頭に薬液を付けた綿棒などを擦りつけ炎症を抑える治療が中心となってきた。

 平畑院長はこれに加えて新たな治療法を模索している。

 (ヒラハタクリニック 平畑光一院長)
 「空気を吸ったときに酸素をどれだけ取り込めるかっていうところが、効率が落ちてしまっている。どうも酸欠になっているらしいということがわかってきています」

 平畑院長が研究しているのは『呼吸器リハビリ』だ。

 【ヒラハタクリニックのYouTubeより】
 「この状態でまず背中に呼吸が入ることを感じていただいたり」
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 足を台の上に乗せるとお腹の筋肉が緩み、息を深く吸うことができる。こうしたストレッチで症状回復に繋がったケースがあるという。

 (ヒラハタクリニック 平畑光一院長)
 「呼吸に使う筋肉とかを伸ばしていったりとかですね、深く(酸素を)吸えるようにしていくということをしていきます。“準寝たきり状態”から、ある程度生活できる状態にまでいったという方が、大体7割5分ぐらいになっています」

 後遺症の治療は試行錯誤が続いているが未だ確立されていない。きょうも多くの患者が終わりの見えないトンネルの中で苦しみ、戦っている。

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