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ベトナム人の犯罪急増『技能実習の闇』...毎年5000人前後が失踪 保護活動者が「もぐらさん」と呼ぶ人々の犯罪の根源にある厳しい現実

特命取材班 スクープ

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日本で働くベトナム人が急増する中で、ベトナム人による犯罪も増えている。ベトナム人の保護活動を行っているNPO法人の代表が、犯罪の背景にあると考える『技能実習生が直面する厳しい現実』とは。

雇い止めや賃金未払いが横行…毎年5000人前後が“失踪”

 日本で働く外国人労働者の数は、2019年ごろに中国人を抜いてベトナム人が最多となり、その数は2021年10月時点で約45万人に上っている(厚生労働省のデータより)。中国国内の経済発展や円安の影響で中国人労働者の減少が予期され、日本が積極的にベトナム人を技能実習生として受け入れてきたことがその背景にある。
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 そんな中、警察庁の調査によると、2021年に検挙された来日外国人の数はベトナム人が1908人で2年連続最多となっている。
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 なぜベトナム人による犯罪が相次いでいるのか。NPO法人・日越ともいき支援会の代表で、職や家を失ったベトナム人を保護する活動を続ける吉水慈豊さんに話を聞いた。吉水さんは技能実習生が直面する厳しい現実が犯罪の根源にあると考えている。

 (NPO法人・日越ともいき支援会 吉水慈豊代表理事)
 「やはり技能実習で来た子たちは、そもそも借金をたくさん抱えて入国していて、うまく働けなくて借金を返せないまま失踪する。その借金を返すためにはリスクを背負ってでも失踪してお金を稼ごうというような流れになっています。私は『もぐらさん』と呼んでいるんだけど、もぐらみたく地下に潜っていって、悪い仕事を継続してやろうとするということが横行していますね」
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 ベトナムからの技能実習生は、渡航費や教育費として日本円で約50万円を借り入れてから来日する。しかし、コロナの影響による雇い止めや賃金の未払いなどが横行していて、毎年5000人前後が失踪するのだという。
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 吉水さんのもとには連日のようにベトナム人労働者からのSOSが届いていた。

 (NPO法人・日越ともいき支援会 吉水慈豊代表理事)
 「まずは『先生助けて』『先生助けてください』ってきますね」

 吉水さんは、こうした人たちをシェルターで一時的に保護し、帰国や新しい職場探しの手助けをしている。

勤務先でトラブルがあり退職…オーバーステイに

 ボウ・ティ・リーさん(32)も吉水さんによって救われた1人だ。
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 勤めていた惣菜工場で同僚とトラブルになり退職。お金が底をつき、5日前まで東京都内のコインランドリーで寝泊まりしていたという。
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 (ボウ・ティ・リーさん)
 「社長は『戻れ』と言った。でも私は仕事に戻るのが怖い。友達(同僚)が危ない」
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 吉水さんが迎えに行ったとき、リーさんの在留期限はすでに過ぎていた。さらにパスポートなどの身分証も持っていなかったという。吉水さんの助けで短期滞在のビザを申請したが、オーバーステイの過去があるベトナム人の再就職は厳しく、今後は帰国する以外に選択肢がない。

 (ボウ・ティ・リーさん)
 「本当に日本に住んでいたいですが、もうちょっとで帰る。日本に住んでいたいです。(Qなぜ日本に住んでいたい?)日本は何でもできる。安全。危なくない。何でも便利です」
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 2人の子どもをベトナムに残し、日本に出稼ぎに来ていたリーさん。もし吉水さんが発見していなければ、彼女もまた不法就労などに流れていた可能性は高い。

「支援が行き届くような法律を作っていくべき」

 (NPO法人・日越ともいき支援会 吉水慈豊代表理事)
 「こういう子たちが本当にたくさん増えるんであれば、きちんと国が制度を精査して、支援が行き届くような法律を作っていかないと。(リーさんの場合は)たまたま救済できたからいいけれども、救済できなかった時は死に至るということだって想定はできる」

 発展途上国への技術移転を名目に“安価な労働力”として来日する技能実習生。しかし、その半数を占めるベトナム人が相次いで失踪し、時に犯罪に身を染める現実は、制度そのものの欠陥を示唆しているのではないか。

2022年11月04日(金)現在の情報です

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