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【参院選】玉石混交のネット情報「自信たっぷりな人ほどだまされやすい」専門家が警鐘 『政治系切り抜き動画』の拡散も課題「選挙期間中の収益禁止という手もあるが...線引き難しい」【解説】

参議院選挙2025

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 7月20日に投開票が行われる参院選。ネットの情報にどう向き合えば良いのか?街の有権者からは「テレビよりSNSの方が入ってきやすい」「テレビにない情報がYouTubeにはある」「フェイクが多い」「嘘が結構ある」など様々な声が聞かれますが、“ネット選挙”のメリット・デメリット・課題は?ネット上にあふれる“切り抜き動画”の実態とは?国際大学・山口真一准教授や選挙ドットコム編集部・伊藤由佳莉氏の見解をもとにお伝えします。

“ネット選挙”元年は実は去年!?

 「参議院」というキーワードを含むYouTube動画の再生回数が急激に増加しています。6月13日~7月2日(公示日前日)は約5.6億回だったのに対して、7月3日(公示日)~7月13日のわずか10日間で約11.2億回再生(選挙ドットコム調べ)。関心の高まりがうかがえるとともに、YouTubeから選挙の情報を仕入れている人が大勢いることがわかります。

 インターネットの選挙運動が解禁されたのは2013年ですが、当時は今ほどスマートフォンが普及しておらず、テレビとインターネットの利用率がきっ抗状態になったのが2019年。2020年の東京都知事選のときには、SNSで小池百合子知事への批判が多くありましたが選挙結果は小池知事の圧勝で、まだネット上の動きと結果が必ずしも結びついていなかったことがわかります。しかし去年の兵庫県知事選や東京都知事選などでは、ネットの盛り上がりと選挙結果が連動するようになりました。

 数年でここまで大きく変化した背景には、コロナ禍でインターネットに触れる時間がより長くなり、従来のテレビのようにネット動画を視聴するようになったこと、そしてネット自体が「若い人たちが使うツール」から「幅広い世代が使うツール」に変化したことが挙げられます。
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 最近の選挙でのとある出口調査によりますと、「最も参考にした情報」として、インターネットがテレビや新聞を上回り1位だというデータも。その一方で、山口准教授らの調査によると、SNS情報を「信用している」と回答したのは20.5%、「信用していない」は67.8%で、テレビや新聞よりも「信用している」と回答した人の割合が少なかったということです。

 【偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査研究 2024年】(国際大学・山口真一准教授らの研究)
 ▼家族などとの直接会話
 信用している:58.8% 信用していない:28.8%
 ▼テレビ・新聞
 信用している:61.5% 信用していない:30.5%
 ▼SNS
 信用している:20.5% 信用していない:67.8%
 ▼動画共有サービス
 信用している:22.4% 信用していない:65.3%

 こうした調査結果から、ネット上の選挙情報を「信頼はしていない」が「最も参考にしている」人が多いということが言えそうです。

ネット選挙のメリット・デメリット

 そんなネット選挙のメリットとデメリットとは?まず、候補者にとっては以下のような特徴が挙げられます。

 【候補者にとってのメリット】
 ・認知度に関係なく、自分の言葉で発信できる
 ・ポスターなどを作成するよりも低コストで発信でき、有権者側からの意見も聞くことができる双方向性
 ・24時間リアルタイムに発信できる
 ・世代ごとに違ったアピールをするなど、特定の相手に沿った内容を届けられる

 【候補者にとってのデメリット】
 ・誤解も拡散が早い
 ・炎上や誹謗中傷のリスク
 ・なりすましなどフェイクに使われる
 ・自身が見せたい像とずれる恐れ
 ・手の込んだ動画作成などをするとコストがかかる場合も

 一方、有権者から見たメリットとデメリットは…

 【有権者にとってのメリット】
 ・好きなタイミングで多くの情報を得られる
 ・時間効率(タイパ)が良い
 ・普段、興味がない人でも興味を持つことができ、投票率アップにつながる

 【有権者にとってのデメリット】
 ・正しい情報がわかりにくい
 ・注目を得やすい過激な情報ばかりが取り上げられがち…候補者が訴えている全体像を見ることが難しい
 ・誤った情報をリポストなどで拡散してしまうことで加害者になるリスクも

政治系切り抜き動画の制作者に聞く

 ネット選挙をめぐっては「動画の収益化」の課題も。選挙演説などを見に行った聴衆がスマホなどで撮影して、候補者の発言の一部(キャッチーな言葉を使っている部分など)だけを切り取って編集・配信することで収益を得ているケースです。TBS「報道特集」の調査によると、こうした切り抜き動画の配信は急増していて、そのチャンネル数は800を超えています(7月3日時点)。

 一体どんな人が作っているのか?約2年前から切り抜き動画を制作し始めたという鈴木さん(仮名)を取材しました。Youtubeチャンネルの登録者数は約3万人で、現在は月20本ほどの動画を副業で制作している鈴木さん。政党や候補者らが配信した会見や演説の映像から、話題になりそうな部分を切り出し約10分に編集しているといいます。

 1か月の収益は「10万円、20万円、飛んで40万円とか。最高で80万円くらい」といい、平均で月30万円ほどの収益を見込めると言います。刺激が強い題名や画像をつけることで再生回数を伸ばしているということですが、こうした動画の切り抜きにルール上の問題はないのでしょうか?

 (鈴木さん)「私の場合は(著作権の)明言をしていない『使ってもいいよ』って言われていないところも使用しているので、ある意味グレーというかブラック。許可は取っていないので無断使用になるので、動画を勝手に使っている。それでお金もうけをしている」

 著作権侵害だとして削除要請が来た場合は動画を消しているといいます。

 (鈴木さん)「公平にというか、できる限りフラットにっていう思いは一応あります。収益だけを目的にしているわけではないですし、BAN(利用停止)されるようなことをしているという事実は存在するので、BANされたらされたでしょうがない」

政治系切り抜き動画 専門家の見解は?

 こうした切り抜き動画への各党の対応はさまざまです。

 【切り抜き動画への各党の対応】(TBS調べ 7月10日時点)
 ▼容認
 維新:条件なし
 共産:拡散呼びかけ
 国民:拡散呼びかけ

 ▼条件付きで容認
 自民:偽・誤情報などは対応を検討
 公明:党ガイドラインを順守
 立憲:営利目的外のみ可
 参政:党へ届け出必要
 保守:悪意あるものは削除要請など

 ▼その他
 れいわ:期限内に回答なし
 社民:公益福祉に反する場合は対応

 選挙ドットコムの調査によると、政治系切り抜き動画は、候補者本人や政党が配信しているものはわずか数%で、90%以上は第三者が配信しているといいます。その目的として「政党や候補者を支持」「政党や候補者を批判」「収益目的」が考えられますが、“お金目的”で配信している人があまりに多いと選挙を歪めてしまう恐れもあります。

 山口准教授は、こうした切り抜き動画について「選挙期間中の『収益化禁止』という方法はある」としつつも、「ただ選挙関連コンテンツの定義(線引き)が難しい」という見解です。

 伊藤氏は「否定的な内容の動画でも『いいね』や再生回数が伸びることもあるため、再生数やコメントをうのみにしないべき」と指摘します。

情報に対して「謙虚な姿勢で検証を」

 ネット選挙の規制について、山口准教授と伊藤氏の両者とも、表現の自由などの観点から「デメリットはあるものの法規制は慎重であるべき」という見解。その上で有権者ができる対策として、山口准教授は「政策を見る・フェイク対策をする」、伊藤氏は「自衛する」ことを挙げています。

 山口准教授の研究で、こんなデータも。日本でかつて有名になったフェイク情報15件について「知っている」という3700人に調査したところ、誤っていると気づけた人はわずか14.5%、調査時点も正しい情報だと信じている人が51.5%だったということです。情報に対して懐疑心を持って見ているという自信のある人ほど「正しい情報」だと比較的信じていたといい、山口准教授は「『自信たっぷりな人』ほどだまされやすい。謙虚な気持ちで検証をするべき」と警鐘を鳴らしています。

 触れる情報全てを検証するのは困難ですが、人に喋りたい・シェアしたい時こそ慎重に検証し、正しいと確信が得られない情報は拡散しないことが、加害者にならないためにも必要だと山口准教授は訴えています。

2025年07月16日(水)現在の情報です

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