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コロナ禍で日本へ モノづくり支える町工場のベトナム人 家族と離れ離れの生活も

2021年06月08日(火)放送

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コロナ禍で海外との行き来が制限される中、それでも「日本にやってきて働く」という選択をして、技術の習得を目指すベトナム人たち。日本のモノづくりの現場を支えている方々の現在を取材しました。

ベトナム人従業員が働く町工場

大阪市平野区のプラスチック加工会社「ナカノ化学」。大手家電メーカーのプラスチック部品などを製造していて、コロナ禍で一時落ち込んだ受注は持ち直しつつあります。
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業績はもちろん、中野夏男社長がほっとしているのは、新型コロナウイルスの影響で足止めされていたベトナム人の従業員が無事来日して戦力として働き出してくれたことです。

(ナカノ化学 中野夏男社長)
「日々成長していますね。徐々に徐々に。ベトナム人は気質がまじめなので」

コロナ影響で来日予定には大幅な遅れも

去年12月の関西空港。閑散としたターミナルに“ナカノ化学”と社名を掲げて待つ中野社長の姿がありました。

(ナカノ化学 中野夏男社長)
「ベトナム人の学生を迎えに来ました。きょうは4人です」

ベトナムから韓国・仁川経由で関空にやってくるのは男性3人・女性1人。当初の予定から8か月遅れでの来日でした。ところが随分前に到着したはずの4人がなかなか出てきません。中野社長がインフォメーションに話を聞くと、検査に2~3時間ほどかかるという説明がありました。
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新型コロナウイルスの陰性証明の確認など入国審査に時間を要したため、待つこと4時間近く。ようやく4人がロビーに出てきました。

 (中野社長)「マインくんやな」
(マインさん)「はい」
 (中野社長)「こんにちは」
(マインさん)「こんにちは」
 (中野社長)「ズーさん?」
 (ズーさん)「はい」
 (中野社長)「おつかれさん」

実はこの日が初対面。これまではベトナムまで足を運んで採用活動を行ってきましたが、今回はコロナの影響で渡航できず、現地の派遣会社に頼んで人材を確保しました。

“隔離期間”を経て迎えた出社日

そして年が明けて1月5日、入国後2週間の隔離期間を経て迎えた初の出社日でした。

工場のユニフォームを手渡され、それぞれの持ち場で指導を受けます。ナカノ化学では、従業員18人のうち7人がベトナム人です。
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今回は初めて従業員として女性のヴー・ティ・ズーさん(31)を採用しました。品質管理のプロである検査員として育てるためです。
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(ズーさんに指導する中野友子取締役)
「検品をするねん。この穴がちゃんと開いているかとか、ここがとれていないかとか。その検査員やから」

ちょっとした傷や色ムラなどがあるものを取り除く作業です。

(中野友子取締役)
「素人さんやったらちょっとわからないかも。色ムラといって樹脂がちゃんと混ざっていないとか、そんなんですね。ずっとやっていたらわかります。慣れですね。な?ズーさん」

同じマンションで暮らすベトナムから来た4人。時間が合えばそれぞれ食材を持ち寄って懐かしい味をつくります。

気の置けない仲間との時間は貴重なリラックスタイム。彼らは日本に出稼ぎに来るためにベトナムの大学などで日本語の勉強をしてきましたが、生活で使うとなると苦戦しているようです。

(ヴー・ティ・ズーさん)
「日本語にはまだ慣れませんです」

そして来日から半年…残る課題は?

そして今年5月31日、4人の来日から半年が経った「ナカノ化学」を訪ねました。

検査員を目指すズーさんは、出勤して来ると、慣れた手つきで窓を開け、パートの従業員が来る前の準備を手際よく進めていきます。
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(ヴー・ティ・ズーさん)
「おはようございます。お久しぶりです。今はだんだん慣れました」

品質チェックから箱詰めまで細かい作業も一通りこなせるようになりました。でも課題もあるといいます。
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(ナカノ化学 中野友子取締役)
「安心して任せられるので。ただ電話に出るのは恥ずかしがって出ない時があるんですけど」

ほかの従業員も一人前になれるように日々経験を積んでいます。
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(ナカノ化学 中野夏男社長)
「人材として考えていきたい。今は若い子らがモノづくりに興味を持たない時代になってきましたので、彼らの力を借りていくしか私たち製造業は生き残っていけないと思いますので。存在は大きいです」

家族に会えない日々を過ごした人も

一方、大阪府和泉市にある「ナガセテクノス」。エアコンなどのプラスチック部品をつくっていますが、ここでもベトナム人の従業員が活躍しています。勤務歴3年のグエン・ホァン・クアンさん(31)もその一人ですが、最近フォークリフトの運転免許を取りました。
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(グエン・ホァン・クアンさん)
「いっぱい練習したんです。(Q難しいですか?)最初はちょっと難しいです。今は大丈夫です」

新しいことにチャレンジするなど、今まで以上に前向きに仕事に励むようになった原動力は“家族の存在”だといいます。

去年4月にグエンさんを取材した時には、出産で帰国した妻を日本に呼び寄せられず、最愛の息子にもスマートフォン越しでしか会えない日々が続いていました。
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しかし今回5月18日の取材では、夜勤明けのグエンさんを待っていたのは、息子と妻でした。1か月ほど前に来日して一緒に暮らし始めました。家族を迎え入れるために会社の寮は出て府営住宅へ。家族水入らずの生活は実に1年半ぶりです。

(妻 タイ・ライ・ホン・ニュンさん)
「家族で一緒に住めるのはうれしい。一番うれしいです」
(グエンさん)
「うれしかったですね。私も」

当初ベトナムの両親は新型コロナウイルスの感染者数が多い日本へ行くことに反対していましたが、最終的には“一緒にいたい”という思いを尊重して賛成してくれたといいます。
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(グエン・ホァン・クアンさん)
「日本に来る時の目標はお金いっぱいほしい。(今は)仕事も大事だけど、子どもが一番大事ですね。大変だけどがんばります」

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