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大阪では第5波の10倍超...第6波で急増する「高齢者施設クラスター」 コロナでも"入院困難"...第7波に備えて医師たちが訴え

2022年03月18日(金)放送

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 去年12月からの新型コロナウイルスの感染第6波。ピークアウトしたとも言われていますが、大阪では3月17日に新規感染者が約5000人、死者数は39人と発表され、高い水準で推移しています。そんな中で深刻なのが、相次ぐ高齢者施設でのクラスター(感染者集団)です。「病院に入院させたいけど難しい」そうした現状を取材しました。

クラスター発生の施設で訪問診療チーム「KISA2隊大阪」が対応

 3月15日に撮影された映像。そこには、防護服を着た医療従事者と新型コロナに感染した高齢者たちの姿がありますが、ここは病院ではなく、大阪市内の高齢者施設の食堂です。約100人が入所する施設で、30人ほどが新型コロナに感染。クラスターが発生していました。
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 施設では、医師や看護師らで作る有志の訪問診療チーム「KISA2隊大阪」が治療に当たっていました。

 (入所者に話しかける医師)
 「きょうのこの治療でだいぶ良くなる。だからもう一息頑張ってもらえますか」
 「(フェイスシールドは)着けたままにしましょう。点滴はもう終わりました」
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 ぐったりとする高齢者たち。認知症や耳が遠いなどの理由から、感染者との意思疎通も容易ではありません。

 【注射を打つときのやりとり】
   (入所者)「痛~い!」
 (医療従事者)「頑張って」
   (入所者)「わかった、もうええ!」
 (医療従事者)「動かないで」
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 厳しい現場でも医師や看護師は落ち着いて治療を進めます。

  (医師)「風邪ひかれているのかな?」
 (入所者)「ひいていない」
  (医師)「この点滴でご気分悪くなったりしていない?」
 (入所者)「今のところな」
  (医師)「もうちょっとで終わりますのでね、このままもうちょっと頑張ってよ」

収束後に“別のフロアで発生” 医師らが介入して施設職員の支えに

 チームの代表を務めるのは小林正宜医師です。去年12月からの第6波では高齢者施設への往診が増加し、約30か所まわったと話します。

 (KISA2隊大阪 代表・小林正宜医師)
 「1人に感染すると、その高齢者の方がマスクをしなかったりするので、マスクをしないで他の入居者さんとおしゃべりしたりすると簡単にうつってしまうため、かなり広がってしまう状況です」
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 1週間ほどの間に感染が一気に広がったというこちらの高齢者施設。感染力が強いオミクロン株で厳しい状況に陥っていました。

 (KISA2隊大阪 代表・小林正宜医師)
 「今年2月、1つのフロアでクラスターが起きてしまって、約1か月かけて収束させたという経緯がありました。収束してから約10日経って、再度、別のフロアでクラスターが起きてしまった。非常に長い時間、スタッフの方々や入居者の方々がストレスにさらされてしまっていて、かなり疲弊されている。我々が介入することで少しでも支えになれたのではないかと思います」
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 1か月以上にわたってコロナ対応に追われた介護職員。医療の専門チームKISA2隊が入ったことで気持ちが楽になったといいます。

 (高齢者施設の職員)
 「すごくチームワークが良くて、困っているときに助けていただいた。来ていただくことで私たち介護職員もすごく安心できる」
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 リスクが高い高齢者施設でのクラスター。感染を食い止めるには「介護士の役割が重要」だと小林医師は話します。

 (KISA2隊大阪 代表・小林正宜医師)
 「クラスターが起きても、介護士さんは施設の中で介入してくださるんですが、知識が少ないとか、感染対策が十分にできなかったりするので、どんどん感染してしまうんですね、介護士さん自体が。介護士さんが感染してしまうと、それ(ウイルス)を媒介してしまう。施設の中でも介護士さんの感染予防に対する力をどんどん高めないといけないと思っていまして、それが第7波に向けた大きな課題と対策になるのではないかなと思っています」

高齢者施設関連のクラスターは第6波で「500件以上」しかし入院は『約1割』しかできず…

 第6波で発生した大阪府内の高齢者施設関連でのクラスターは、3月13日までで535件です。第4波の105件や、第5波の51件と比べても急増しています。しかしその一方で、高齢者施設での感染者などが入院できたのは、3月7日時点でわずか1割ほど(11.3%)に留まっています。

病院側は“一般の救急患者の受け入れを断らざるを得ない”状況に

 堺市立総合医療センター(堺市・西区)では、新型コロナ病床を約70床確保し、これまでコロナ患者を率先して受け入れてきました。しかし、第6波では高齢者の感染者が急増し、一般の救急患者の受け入れを断らざるを得ない状況に陥ったと話します。
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 (堺市立総合医療センター 大里浩樹院長)
 「これまでの感染の波と比べてはるかに高齢者が多い。65歳以上の高齢者は(コロナでの)入院患者の8割くらい。病院側は(大阪府の)フォローアップセンターからもコロナ患者さんを受けるし、救急からも患者さんが来られて『実はコロナだった』というようなことも非常にたくさんある。どうしても(病床が)溢れてくるので、救急患者の受け入れを少し減らさざるを得なかったなというところはあります」
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 大阪府では高齢者施設で感染者が出た場合、入院フォローアップセンターが病院へ入院調整を行います。第6波では感染者の爆発的増加で入院調整がうまく機能せず、自宅や高齢者施設での療養が増えています。病院側は府からの要請で受け入れる感染者と、療養中に悪化して施設などから救急搬送される感染者とでひっ迫しているのです。

第7波に向けて…『高齢者により早く医療介入できるシステム』が必要

 第6波での大阪府内の重症病床使用率は最大でも43.6%。これまでの波よりも低くなっていますが、実際の医療現場はギリギリの状態だといいます。

 (堺市立総合医療センター 大里浩樹院長)
 「数字だけを見ると『100%を超えなかった』と言われるかもしれないが、高齢者施設でクラスターが起こってきている。入院するまでの時間がそれなりに延びてきた。搬送されて比較的短時間の間に重症管理をせざるを得なくなるという悪循環をしていたのかなと」

 病院へ来るとすでに重症化していたケースもあるという実態。さらに高齢者ゆえに基礎疾患の悪化で入院期間が延びたり、食事などの介助も必要なため医療現場にはより負担がかかっています。
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 大里院長は第7波に向けて、高齢者にはより早く医療介入できるシステムが必要だと訴えます。

 (堺市立総合医療センター 大里浩樹院長)
 「高齢者施設に医療側が介入して、感染管理と、ある程度の治療を少し進めていけるようにすると。病院側も高齢者を直接救急などで受け入れる負担も減るだろうし、介護側もそういう介入で支えてもらえているという安心感が出てくるんじゃないかと思う。相乗りしていけるようなシステムをうまく作ることが課題かなと思います」
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 3月21日でまん延防止等重点措置は解除されますが、高齢者を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いています。

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