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「みなさんの助けになれば」大阪の現場を救う『応援看護師』たち ひっ迫する重症病床に変化も

2021年06月03日(木)放送

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大阪府の新型コロナウイルスの「実質的な重症病床の使用率」は、4月13日に100%を超え、4月25日には125.7%に上りました。その後1か月あまりが経過した6月2日時点では61.5%と、落ち着き始めたようにもみえます。今回、取材班は4月に訪れた病院を改めて取材。医療崩壊とも言える危機を脱したその背景には『応援看護師』の存在がありました。

今年4月に120%超となった大阪の“実質重症病床使用率”

今年4月22日、大阪府の重症患者は328人いましたが、重症病床の数は272床しかなく、実質的な重症病床使用率は120.6%となっていました。28床を確保する大阪府守口市の関西医科大学総合医療センターでも重症病床は満床。医師は転院先の調整に追われていました。しかし大阪府からの患者受け入れ要請は止むことがありません。
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1人でも多く受け入れるために、人工呼吸器を外せる患者を中等症の病院に送って新たな患者を引き受けるなど、毎日患者の入れ替えが行われていました。中等症の病院に移した患者の状態も安定しているとは言えず、綱渡りの状況が続いていました。

(関西医科大学総合医療センター 中森靖教授 4月22日)
「完全に受け入れのキャパシティを超えてしまっているので、どう今を乗り切るのかというような状態ですね」

5月末には病床に一時的に「空き」が出るように

あれから1か月、病床はどうなっているのか。5月29日、再び関西医科大学総合医療センターを訪ねると、重症患者のベットを管理するホワイトボードにはいくつかの“空”の文字が書かれていました。

(看護師 坂口英士さん)
「きょう昼間に別の病棟に移動させた方もいるので3床空きとなっていますが、午後や夕方ぐらいに容体が悪化してという方が多いので、あっという間に埋まってしまうことが多く、油断はできないです」
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院内には人工呼吸器につながれた重症患者たちの姿があり、病床の様子は4月と変わらないようにも見えますが、患者のいないベッドも確認できました。重症の病床でも一時的に空きが出るようになったようです。危機的な状況を脱することができた要因の1つ、それが『応援看護師』の存在です。

「私にできることであれば…」東京から派遣

大阪府は4月に国に対して看護師の応援を要請。その結果、全国から145人が来てくれることになりました。関西医科大学総合医療センターにもこれまでに山梨県や群馬県などから26人が派遣されています。その1人が看護師の坂口英士さんです。普段は東京労災病院のコロナ病棟で働いていますが、5月1日から応援にやってきました。

(応援看護師 坂口英士さん)
「医療のひっ迫状況が容易に想像できたので、大変なところに応援に行く機会があるならば、私にできることであればお手伝いしたいなと思いました」

レッドゾーン内で重症患者の「歯磨き」

坂口さんが主に勤務しているのは重症患者らが入院するエリア、いわゆる「レッドゾーン」です。応援の間は大阪府が用意したビジネスホテルに宿泊しています。

(応援看護師 坂口英士さん)
「慣れない環境というのもありますが、なかなか疲れはとれないですね」
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いったん防護服を着てレッドゾーンに入ると3~4時間は出てきません。レッドゾーンに入った坂口さんは、重症患者の腕や足を曲げたり伸ばしたりしていきます。寝たきり状態が続くと関節が固まってしまうため、回復したときに早く動けるように関節を動かしておくのです。
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さらに歯磨きも行います。人工呼吸器が装着されて動けない患者はうがいもできないので、歯ブラシと水を吸い取る機器を使って歯を磨いていきます。

(応援看護師 坂口英士さん)
「のどの奥に唾液などが落ち込むことによって潜在的な肺炎を起こしていくこともあるんですね。口腔内を清潔に保つことでそういった肺炎などの予防をする」
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また、顔をおしぼりでふく、ベッドの上で髪を洗うなど、こうした看護は満床が続いている時期にはできなかったことでした。

(応援看護師 坂口英士さん)
「(呼吸器が)挿管されている方は、日常的な私たちが普段できるようなケアもご自身ではできない状況なので、患者さん自身の尊厳を保つためにもケアが必要になると思っています」
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関西医科大学総合医療センターで長年働き続ける看護師の田淵美幸さんは、看護師として患者のケアが満足にできていないことにジレンマを抱えていました。

(看護師 田淵美幸さん)
「(身体をふくなどの)看護師の技術とかケアは私たちがしなくても患者は亡くならない、後回しでもいけると思うと、治療を優先するだけで、自分の無力感も感じつつあった。少しずつできるようになってきたことが、今一番、自分は救われています」

精神的なサポートにもなっている応援看護師の思い

関西医科大学の系列施設で働く看護師の松田さん(仮名)も5月10日から応援に来ています。看護師歴は17年になりますが、コロナ病棟に入って初めて経験した“看護”がありました。

(応援看護師 松田さん)
「(患者を)棺にいれることは今まで私の看護師の人生でやったことなかったので、そこはすごくショックでしたし、家族のことを思うと、次に会う時は体がないんだなと」
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コロナ病棟の看護師たちが置かれていた状況は想像以上でした。看護に携わる者同士だからわかることがあります。

(応援看護師 松田さん)
「自分たちがやりたい看護、やりたかった救命センターでの看護がきっとあっただろうになって。そこを今はおいて一生懸命頑張っているスタッフたちを見たら、私ができることがあればなというふうには感じましたし、少しでもみなさんの助けになればなという気持ちです」
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応援看護師たちの思い。人手だけでなく精神的にも支えられていると、関西医科大学総合医療センターの看護師・田淵さんは言います。

(看護師 田淵美幸さん)
「一緒にこの現状を“闘ってくれる”じゃないですけど、他府県から来ていただいたりして、一緒に頑張ろうという気持ちで来ていただけていることがうれしいです」
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第4波を抑え切るまで。応援の手を借りながら今も看護師たちは患者と向き合い続けています。

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