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「少しでも助けに」夜間往診を行う医師 "入院すべき患者が自宅療養のまま"大阪の現状

2021年05月14日(金)放送

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大阪府で自宅療養をするコロナ患者は1万4000人(5月13日時点)を超えていますが、なかには自宅療養中に容体が悪化する人もいます。そこで、府内の一部の保健所は、夜間など病院が開いていない時間帯に患者の症状が悪化した際に、患者の自宅に往診する医師を派遣する「ファストドクター」という民間企業と提携しました。ここから派遣される医師たちは、昼間は病院で勤務するなどしています。大阪だけでも150人の医師が登録されていますが、今回、そのうちの1人を取材しました。

夜間往診を行う医師

午後6時。この時間から診療がはじまる医師がいます。循環器内科医の利根川玲奈医師。普段は大阪府内の病院で勤務していますが、2020年12月、救急往診を行う医療サービス会社「ファストドクター」に登録し、週に2回、夜間往診を担当しています。

(循環器内科 利根川玲奈医師)
「(登録した2020年12月は)自宅療養とかはそこまでなかったんですけれども、少しでも助けになればなと思って」
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「ファストドクター」では保健所や患者から救急往診の依頼を受けると、コールセンターがその時間帯に勤務している医師のスマートフォンに連絡。医師は会社側が用意した車で患者の家に向かいます。
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往診に必要な医療機器も車の中に準備されています。その中には…

(利根川玲奈医師)
「サチュレーションモニター(血中の酸素飽和度を測定するもの)です。サチュレーションモニターは新型コロナウイルス陽性が出たときに貸出ができるように予備を入れています」

高熱がある30代女性

1件目の依頼は高熱がある30代の女性。新型コロナウイルスの疑いもあります。

(利根川玲奈医師)
「薬と往診バッグと感染防御のものを持って行きます」

患者の家に入る前にはN95マスクを着用。一方、防護服を着るのは家に入る直前に。近所の目を気にする患者もいるため、配慮しています。25分後、患者の家から出てきました。

(利根川玲奈医師)
「PCR検体もありますので、お願いします」

往診で持ち込んだものは消毒し、着用した防護服も毎回廃棄します。そして、利根川医師カルテを記入します。
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(利根川玲奈医師)
「34歳の特に既往歴のない女性…」

カルテはスマートフォン上で音声入力し、薬などの記録も打ち込んでいきます。

新型コロナウイルスに感染している80代女性

患者の家を離れたやさき、コールセンターから電話がありました。

(ファストドクターのコールセンター)
「発熱されまして、ちょっと元気がなくて、今まで食べられていたけれども、ちょっと水分摂取量が減ってきて…」

大阪府内の保健所から、自宅療養者の救急往診の依頼でした。コロナ患者の家に訪問する際には、何度も家を出入りしないためにも、解熱剤から咳止めなど、色々な種類の薬を持って行きます。

(利根川玲奈医師)
「何が必要かよくわからないので、多めに持って行きます」

新型コロナウイルスに感染して、自宅療養を続けている80代の女性。

(利根川玲奈医師)
「(酸素飽和度)98%ですね、いいですね」

酸素の値は問題なし。しかし、高齢で食事量も減っているため家族の心配はつきません。

(80代女性の家族)
「体力がないとここからもし数値が落ちたら、耐えられないんじゃないか…」

(利根川医師)「(家族が)脱水だから、お水が足りなくてね、ふらふらしているんじゃないかって、心配しているんだけれども」
(80代女性)「大丈夫、大丈夫」
(利根川医師)「遅くなってからじゃ遅いから、家で点滴できますので、点滴きょう1回しておきませんか?」

病床がひっ迫し、入院が必要な人も自宅療養となっている大阪。この女性も本来であれば入院した方がいい患者でした。
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(利根川玲奈医師)
「もっと状態が悪くないと入院が考えづらい状況に大阪はなっていると思うので、酸素飽和度が悪い方が優先になってしまっているので。でも少なくとも1回診察が受けられたということで、その点は(家族から)『安心した』とおっしゃっていただけた」

“2人だけで自宅療養” 新型コロナに感染している高齢夫婦  

保健所からの往診依頼は立て続けにきます。時刻は午後9時半すぎ、この日、3件目となる『自宅療養者』の往診依頼です。再び、高齢のコロナ患者でした。80代と70代の夫婦ですが、近くに住む家族も新型コロナウイルスに感染したため、夫婦だけで自宅療養をしています。

(利根川玲奈医師)
「肺の音、お父さんはそこまで悪くはないね」

夫の状態は悪化していないようですが…

(利根川医師)「お父さん何が困っていますか?」
(80代患者)「ん?」
(利根川医師)「何が困っています?」
(80代患者)「どれを飲んでもいいの?」
(利根川医師)「ロキソプロフェンという薬」
(80代患者)「1日1個?」
(利根川医師)「1日1個というかつらかったら、熱が出ていたら」

耳が遠いこともあってか、処方されていた薬もしっかり把握できていないようです。
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一方、妻は寝室への階段を上るのもつらいようで、リビングの床で寝ています。コロナの重症度を測る酸素飽和度は…

(利根川玲奈医師)
「ちょっと(数値が)あがってきましたね。なかなか90台後半にはいきそうもないか」
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96%以上で正常といわれる数値が89%。体を動かすと87%まで下がってしまいます。

(70代患者)「動いたらもう息が」
(利根川医師)「動いたら息が?」
(70代患者)「息が苦しい」

そして肺の音も…。

(利根川医師)「少し肺炎を疑うような音がするんですよ。今、酸素(濃縮器)を持ってきているので、設置だけさせてもらって、保健所には『あくまでもこれはつなぎです』と。『私の判断は入院だと思う』と伝えさせてもらってもいいですか?」
(70代患者)「はい」

応急処置として、酸素を投与することになりました。

(利根川医師)「深呼吸してくださいよ。このぐらいあれば安心かな」
  (看護師)「ちょっと楽になってきました?」
(70代患者)「なんか…ちょっと心なしか…」

この状態で、高齢の2人を残すことには不安が残ります。なんとか入院先が見つからないものか。
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(電話で話す利根川医師)
「息切れもある状況で、呼吸音も肺炎疑う感じなんです。正直、入院適応だと思うんですけれども…わかりました…」

利根川医師、保健所と交渉しますが…

(利根川玲奈医師)
「(Qいったん診療は終了?)そうですね…。しょうがないので(大阪府の)フォローアップセンターにまかせることに、するしかないですね…」

入院が必要な人もすぐには、入院できない現状。医師になって9年、もどかしさを感じています。

(利根川玲奈医師)
「CTを撮ってそこまで重症じゃないということがわかった上で在宅医療を続けるのと、現状の肺の写真を1回も誰も見たことない状況で、自宅管理を続けるのはだいぶ話が違う。これが正しい姿なのかどうかっていうのは…」

そのとき、電話が。

(電話で話す利根川医師)
「決まりました!?ありがとうございます…」

(利根川玲奈医師)
「よかったです。さっそく(搬送先を)決めてもらったみたいなので」
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新型コロナウイルスの症状が出てから6日。女性はやっと病院に搬送されていきました。

医師が話す「現状」

(利根川玲奈医師)
「十分意義ある仕事がきょうはできたかなと思っている。必要な医療を必要な人が受けられる体制を作るというのはすごく重要だと思うので、ちょっと今新型コロナウイルスでその状況が崩れつつあるのを少し感じますね。そこをなんとか維持できるように貢献できたらなと思います。(Q午前0時を過ぎましたが次の仕事は?)普通に朝7時から(病院で)勤務する予定なので、大丈夫です」

(5月14日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『コダワリ』より)

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