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吉野家が"後継ぎいない飲食店"のピンチに立ち上がる!?『オーナー』と『後継者』つなぐマッチングサービス開始 70歳の居酒屋店主「いい感じでどなたかにバトンタッチできれば」

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 地元に愛される飲食店が「後継者不足」で廃業するケースが相次いでいます。そうした中、大手外食チェーンの吉野家が「店主」と「後継ぎ」をつなぐ新たなマッチングサービスを開始。“なじみの味”を守るその取り組みとは?

「寂しいです」地元に愛されたケーキ店が閉店へ 理由は『後継者がいない』

 12月11日午前7時、兵庫県尼崎市にある昭和44年(1969年)創業の「洋菓子工房エトワール」の厨房では、いつもと変わらない作業が始まっていました。ケーキが次々と仕上げられていきます。

 店の2代目・浜田智行さん(57)は、来年1月、店を閉めることを決めました。

 (洋菓子工房エトワール 浜田智行さん)「本当はできればボロボロになるまで店をやれればいいんでしょうけど、そうなってから店を畳むって結構大変なことだなと」
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 店は地元に愛され続けた“町のケーキ屋さん”。売り上げも大きく減っているわけではありません。それでも閉店してしまう理由、それは「後継者がいない」ため。

 (洋菓子工房エトワール 浜田智行さん)「子どもは2人いますけど、2人ともケーキ店をやるつもりはないので。たぶん親がいつもせかせか働いている姿を見ているので、(子どもたちは)継ぐ方には傾かなかったんだと思います。休みも少ないし…」

 さらに、冷蔵庫などが老朽化し、数年以内に買い替える必要がありました。そのためには多額の費用が見込まれましたが、浜田さん自身、60歳を目前に控える中、いつまで営業できるか不安になり、廃業を決めたといいます。

 ただ、地域の人たちにとっては「思い出の味」がまた1つなくなることになります。常連客たちからは…

 「寂しいよ。何もかもなくなっていくわ、園田。(最後のケーキを買って)みんなで祝おうって。『最後のエトワール~!』って言って」
 「親の代からこちらで(お世話になっていて)。寂しいです。だからもう1回くらい買いに来ると思います」

『後継者不在の中小企業は127万社』

 今、このケーキ店のように小規模ながら地元に愛されてきた店が、後継者の不在が理由で廃業するケースが相次いでいるといいます。日本の中小企業などに詳しい日本M&Aセンター・西日本支社長の谷川佑介さんに話を聞きました。

 (日本M&Aセンター・西日本支社長 谷川佑介さん)「バブル前とか、その辺りで創業した企業では、オーナーや社長が70代を超えているのが現状。(全国の中小企業が)約360万社ある中で、後継者不在の企業が127万社もある。『国難』と言われるくらい深刻な状況です」

 日本M&Aセンターによりますと、職業の多様化や事業の先行きが不透明な中、家族が「家業を継ぐ」ということが当たり前ではなくなっているといいます。

吉野家が始めた“後継ぎ”のマッチングサービスとは?

 そうした後継者不足という課題をビジネスで解決しようという動きも出始めています。取り組んでいるのは大手外食チェーンの吉野家ホールディングス。

 始めたのは、事業を続けたい飲食店に後継者候補を紹介する「アトツギレストラン」という新たなマッチングサービスです。今年11月に始まったばかりの新サービスで、きっかけは全国各地で目の当たりにした飲食業の衰退でした。

 (吉野家HD子会社・シェアレストラン 武重準社長)「全国にチェーン店舗を広げる仕事をしていたんですね。出張に行くたびに地元の人気店に行くんですが、行くたびにお店がどんどん無くなっているというような現状を見ました。地方の人気店では事業継承(後継ぎ)に難があることをそこで初めて知りました。ある意味(個人店は)ライバルなんですけども、飲食という大きなくくりで考えた時に、個人店の方々が輝いてこそ、チェーン店も輝くと」
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 アトツギレストランの仕組みはこうです。まず、後継者候補は最低6か月はお店でトレーニング。この間にオーナー側は自分の味をしっかり伝えられ、候補者が後継ぎにふさわしいか見極めることができます。一方、後継者候補にとっても店の採算性があるか分かるほか、そのまま店を引き継げるので初期投資も低く抑えられるというメリットがあります。

 今回、後継者を探すオーナーと後継者候補とのマッチングの現場を見せてもらいました。果たして、その“相性”は…?

「私ももう年なので…」居酒屋を営む70歳店主

 後継者を探している店は、東京都新宿区にある居酒屋「ふるさと」。開業以来25年、客のほとんどは地元の常連。昔ながらの店の雰囲気とこだわりの日本酒が自慢の店です。

 (客)「『ふるさと』の名にマッチしたような、いいお酒のつまみとかがあって、個人的には好きです」
 (客)「落ち着く雰囲気でいいですよね。食べ物もおいしいですしね」
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 店主の越智亨さん、70歳。先代から7年前に店を引き継ぎましたが、年齢的な限界を感じていました。

 (ふるさと 店主・越智亨さん)「私ももう年なので、あと5年くらいは頑張ろうかなという気はあるんですが、健康とか社会情勢もあって、いつどうなるかわかりませんし。いい感じでどなたかにバトンタッチできればいいのかなと」

 子どもも独立し、従業員にも後継ぎ候補はいませんでした。そうした中、出会ったのが、吉野家ホールディングスの始めたサービス。オーナーと後継者候補をつなぐアトツギレストランでした。

店を訪れた後継ぎ希望者「ぜひやってみたい」

 アトツギレストランの武重社長と後継ぎを希望する38歳の男性が、店を訪れました。男性は現在、週1日「間借り」の状態で別の居酒屋を運営していますが、将来、自分の店を持ちたいと後継者に名乗り出ました。集客力のある店を継ぐことは候補者にとってもメリットが大きいと話します。

 (後継ぎ希望者)「まったく新規で飲食店をやっていくのはすごく大変で、失敗している例もたくさんある。(アトツギレストランは)とっかかりとしてはすごくいいのかなと」

 そして話し合いを始めた2人。越智さん、思わず本音を漏らします。

 (ふるさと 店主・越智亨さん)「私自身、正直言って初めての試みだし、まだ働きたい、働ける間は働きたいなっていう気持ちも当然あるんですけど、ただ、いつ具合が悪くなるか」

 厨房なども見学した男性は、後を継ぐことを「前向きに検討したい」と話しました。

 (後継ぎ希望者)「すごく良かったですね。ぜひやってみたいなっていう気持ちになりました。オーナーさんが引き継ぐ前にどんな人が入るのか見たいっていうのはすごくその通りだなと思います。それで(人間的に)合う・合わないという判断は大事なのかなと」

後継ぎ希望者と会ってみて…店主の反応は?

 「現オーナー」と「後継者候補」何より大切なのは2人の相性だといいます。

 (ふるさと 店主・越智亨さん)「非常に誠実そうで。日本酒好きっていう、いろんな共通点がありましたので、好印象ではあります。この店がいいなと思ってやりたい人がいて、できれば良くしてくれた方がもっといいんですから」

 (吉野家HD子会社・シェアレストラン 武重準社長)「関係づくりがこのアトツギレストランの結構ポイントなところで、実際に間借りでやってみて、オーナーと希望者の良好な関係がつくれれば進む。こういう取り組みを完成させて、地方へも発信していきたいなと思っています」

 地元で愛される味を守るために、「後継者不足」解決への模索が続きます。

2024年12月17日(火)現在の情報です

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