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5年連続赤字のピーチ「安いだけ」脱却のため奔走 空港視察で見つけた『荷物預ける列』に...動線・イラスト掲示・決済システムで対策「毎日の積み重ねをコツコツやっていく」

2023年11月28日(火)放送

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 安さにこだわってきた「ピーチアビエーション」ですが、経営は5年連続赤字という苦しい状況にあります。そんな中、現状を打破すべく、起死回生のプロジェクトが進行しています。『安いだけ』からの脱却。ピーチ再生の裏側を取材しました。

「安かろう、悪かろうと書かれています」5年連続赤字のピンチ

 関西空港や成田空港などを拠点に国内線25路線・国際線12路線の計37路線を展開するピーチアビエーション。11年前に日本初のLCCとして運航を開始。コンセプトは『空飛ぶ電車』です。
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 (ピーチアビエーション 井上慎一CEO ※2012年当時)「電車のように手軽な新しい航空輸送サービスが始まります」
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 セルフのチェックインに、一度に多くの客を乗せるための狭いシートなど、既成概念にとらわれない運用で格安料金を実現。安さを売りに急成長を果たしました。
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 順風満帆に見えるピーチですが、実は今、創業以来のピンチに直面していました。今年5月、トップの号令のもと集められた従業員。告げられたのは厳しい現実でした。

 (ピーチアビエーション 大橋一成CEO)「会社は赤字、品質は悪い、顧客満足も低い、これが現実なんです。“安かろう、悪かろう”と書かれています。悔しくないですか」
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 コロナからの回復で他社が黒字転換する中、昨年度の決算は純損失が124億円。そして5年連続の赤字。顧客満足度調査はランキングにさえ入らず、予定時刻の15分以内に出発できたかどうかを表す定時出発率については…。

 (ピーチアビエーション 大橋一成CEO)「圧倒的にビリです。ダントツですね。日本の航空会社は定時出発率が90%以上なんです。うちだけずっと80%台で、うっかりすると70%台まで落ちています」

 利用者に話を聞いてみると、このような声が聞かれました。

 「遅れるイメージ。3回に2回遅れる。遅れたら困るので仕事では使わないです」
 「最近3~4回くらい連続で遅れた気はします。そこまでくると『どうせそうだろうな』という感じはありますね」

関空へ視察に行くと…さっそく運航遅れが

 定着してしまった“安かろう、悪かろう”のイメージ。こうした現状を打破しようと立ち上がったのが「On Time Project」。その陣頭指揮を任されたプロジェクトリーダーが大原広一郎さんです。
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 今年7月、大原さんがやってきたのは関空のT2ターミナル。運航ボードに目をやると、運航に半時間の遅れが出ていました。

 (大原広一郎さん)「宮崎行きはさっそく30分遅れてしまっている」
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 (大原広一郎さん)「(Qなぜ遅れた?)ちょっとずついろんな遅れが重なって、どんどん午後や夕方に大きな遅れになってしまう。何かひとつ大きなことがというよりは積み重ねなんです」
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 どういうことか。例えば運航スケジュール。一般的には目的地を往復するケースが多いのですが、ピーチの場合、関空を出た飛行機は福岡、そして那覇に行ってから関空に戻るなど飛行機はフル稼働。

 効率を上げるために駐機時間も短く設定しているため、小さな遅れが積み重なり大きな遅れにつながっているといいます。

 (大原広一郎さん)「削れる部分は極限まで削ったうえでコストを低くして運賃を下げるというビジネスモデルですから。(昔より)便数が増えたのが大きいかなと思います」

観光需要もビジネス需要も高い福岡空港へ

 今年8月、大原さんたちは、運用が難しいとされる福岡空港の視察に向かいました。福岡は、菅原道真がまつられた太宰府天満宮のほか、川沿いに屋台が並ぶ福岡屋台など、海外の旅行者からも人気のエリアです。
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 市内からのアクセスのよさから観光客はもちろんビジネス需要も高い福岡空港は日本屈指の“混雑空港”。滑走路は1本のため、出発待ちの飛行機が列をつくり、ターミナルからバスで移動しないと飛行機に搭乗できない乗り場など、運用の難しさを実感します。

 (大原広一郎さん)「ターミナルから離れたオープンスポットが多いですよね。多いし、その分遠いし。空港の形状は地図などで見てわかっているつもりだったけど、新たな気付きはありますよね」

カウンターには長蛇の列 所長「ボタン1つでご自身で決済できれば…」

 続いて向かったのはチェックインカウンター。荷物を預けるだけのはずが、なぜか長い列ができていました。

 (大原広一郎さん)「そこはお客さまにお知らせすることが足りていない部分もあるのかもしれません」
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 ピーチは大手の航空会社と違い預け荷物は有料。航空チケットを買う際に同時購入を促していますが認知不足なのか?さっそく現地スタッフの萩原順子福岡空港所長に確認します。

 (大原さん)「預け荷物の決済が終わっていらっしゃらない方も」
 (萩原所長)「多いですね、はい」
 (大原さん)「ほとんどですか?」
 (萩原所長)「そうですね。エアトリさんとかスカイチケットさんとかを通して買う方も多いので。航空券は買うけど、荷物まではなかなか皆さん見られないことも多いと思いますね」

 つまり価格の比較サイトから航空チケットを購入した人は、カウンターで預け荷物の決済が発生するケースが多く、どうしても時間がかかり遅れにつながるのです。

 (萩原所長)「(預け荷物の手続きが)ボタン1つで買えるように、こういうところでご自身で決済できればいいんですけど」

 大原さん、課題が明確になったようです。

遅れを改善するには他社の飛行機との調整も必要

 一方、大原さんと一緒に福岡入りした運航スケジュール担当の中村はづきさん。ダイヤに無理がないか時間を計りながら様子を確認します。

 (中村はづきさん)「(タイムテーブルで)搭乗を15分かけて行って、残りの1分で扉を閉めて出発していく流れになります。扉を閉めてから実際に動き出すまで何分かかるかをちゃんと見たいと思っています」
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 荷物の積み込みが完了して、扉を閉めていざ出発。と思いきや…隣に他社の飛行機が。

 (中村はづきさん)「今ちょうど隣のスポットにスカイマークさんの便が入ってきたんですが、もし出発準備ができていたとしても、隣に便が入ってくるので、たぶん『出発を待ってください』という指示が来ていると思うんですよね」

 出発したくてもできなければ遅れの原因に。他社との調整も欠かせません。

 1日かけて空港視察を終え、帰りは乗客目線で機内の課題を探ります。この日の福岡~関空便はほぼ満席。通路が1本のため、土産物を棚に乗せる人や座席の確認に手間取る人などが立ち止まると、着席までに時間を要します。20分遅れの出発となりましたが無事帰路につきました。

 (大原広一郎さん)「運航ダイヤが変わるのは次の冬ダイヤ。よりいいダイヤで、品質も上がって、安くていいものがうちの会社のポイントだと思うので、それを追求していきたいと思います」

3か月後…『セルフ決済システム』や『動線』『イラスト』の工夫も

 3か月後。再生プロジェクトの進捗があったと聞いて、11月9日に関空のターミナルを訪ねました。お客さんの動線をわかりやすく仕切ったり、あちこちにイラストで持ち込み禁止の表示を置いたり。
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 でも大原さんらの肝入りは、新たに設置した預け荷物の決済システム。セルフでできることで、カウンターの負担が減り、手続きがスムーズに。遅れ解消に一役買っています。

 (大原広一郎さん)「やっぱり全然違いますね。ずっと見ていますが、これを設置した後は明らかに関空の出発便の定時性は上がりました」
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 搭乗入口には座席表を掲示することで迷わず自分の席に着席してもらい時間短縮に。また冬のダイヤ改正で運航スケジュールを刷新するなど、できることから着手して、定時出発率は10%改善(75%から85% ※ピーチ調べ)したといいます。
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 (大原広一郎さん)「気軽な移動を提供する中で、品質も悪くない、時間どおりお客さまを目的地にお届けすると。いい品質が続いていくように、これは毎日の積み重ねだと思いますので、それをコツコツやっていくという思いです」

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