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「私たちが死ぬのを待っているのか」控訴に原告『落胆と怒り露わ』水俣病訴訟 原因企業「チッソ」が控訴 原告全員に賠償命じる"画期的判決"に不服 原告らを本社前で"門前払い"

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水俣病の症状に苦しむのに、特措法の救済から漏れた人たちが、国と熊本県、原因企業の「チッソ」に賠償を求めていた裁判。9月27日に大阪地裁は、原告全員を水俣病に罹患していると認定し、被告3者に賠償を命じる判決を言い渡しましたが、3者のうち「チッソ」が控訴しました。原告のひとりは「大変残念で怒り心頭。私たちが死ぬのを待っているのでしょうか」と、落胆と憤りを露わにしました。

裁判の原告の1人・前田芳枝さん(74)は、15歳の時に就職で大阪に出るまで、鹿児島県阿久根市で暮らしました。手のふるえで文字を書くのが難しいほか、調理の際も例えば、かぼちゃは手でほぐせるぐらい柔らかくしないと包丁で切れないなど、水俣病の影響により日常生活で様々な支障が生じています。

大阪地裁での勝訴判決後の会見では、「私たちは治らないんです、私たちは死ぬまでこの不自由な身体で生きていくんです」「勝訴と分かって、やっと認められたんだと…。本当にうれしい」と喜びを語っていました。

「チッソ」の控訴を受け、前田芳枝さんはMBSの取材に対し、「公正な判決だったのに、大変残念。怒り心頭です。一刻の猶予もないのに、私たちを見捨てるのでしょうか。私たちが死ぬのを待っているのでしょうか。人の痛みを分かる企業になってほしい。悲しみで一杯です」と話しました。

前田さんら原告の一部や弁護団は判決後、東京都内のチッソ本社を訪れ、控訴しないよう申し入れをしようとしましたが、チッソ側は社員は誰も対応せず、代理人のみが対応。前田さんらを社内にも入れないなど、“門前払い”の対応を取ったということです。

どんな裁判だった? 水俣病訴訟の概要

裁判の概要です。水俣病をめぐっては、2009年に成立した「水俣病被害者救済特別措置法」(特措法)で、未救済の被害者に一時金や療養費を給付するという救済措置がとられたものの、期限までに申請できなかった人や、申請したのに救済を認められなかった人が続出しました。

関西などに住み、特措法の救済から漏れた128人は、国と熊本県、原因企業の「チッソ」(旧:新日本窒素肥料)に賠償を求め、2014年以降順次、大阪地裁に提訴していました。

大阪地裁は9月27日の判決でまず、原告らの症状の原因は、八千海(やつしろかい)一円に住んでいた時期に魚介類を継続的に食べ、メチル水銀を摂取したこと以外では説明できないとして、「原告全員が水俣病に罹患している」と認定。

また、国側が原告らの賠償請求権は消滅している(=除斥期間を過ぎている)と主張した点については、メチル水銀摂取から長期間が経過した後に典型的な症状が現れるケースが少なくない点などを踏まえれば、「除斥期間の起算点は、原告らが神経学的検査で水俣病と診断された時点であり、賠償請求権が消滅した原告はいない」と判断。原告128人全員に、1人あたり275万円を賠償するよう命じました(122人は国・熊本県・チッソが連帯して賠償責任/6人はチッソのみが賠償責任)。

原告側は「画期的判決」と評価し、国や県、チッソに対し控訴しないよう強く求めていましたが、10月4日付けでチッソが控訴しました。

チッソは「この件については、お答えを差し控える」としています。

2023年10月05日(木)現在の情報です

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