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【解説】ドイツが供与する主力戦車『レオパルト2』は「配備されれば奪還地域が飛躍的に増える可能性」 ロシア側は国内で「第2の動員令を発令?国内脱出を防止するとの情報も」

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ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。長期戦を見据えてのことでしょうか。欧米各国が相次いでウクライナへの主力戦車の供与を表明しています。ドイツは主力戦車「レオパルト2」の供与を決定し、アメリカは主力戦車「エイブラムス」を供与すると明らかにしました。レオパルト2とはどういった戦車なのか。一方、ロシア側はこうした欧米各国の動きに対してどういった行動をとるのか。元産経新聞モスクワ支局長の大和大学・佐々木正明教授に聞きました。(2023年1月27日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

「レオパルド2」戦況を変える可能性は

―――ウクライナに供与が決まった戦車が、ドイツ製の「レオパルト2」です。NATO加盟国など16カ国が保有していて、ギリシャ353両、スペイン327両、ドイツ321両、トルコ316両、ポーランド247両、フィンランド200両など合計約2300両もあるんですね。佐々木先生、これはどういう戦車なんですか。

(佐々木正明・大和大学教授 元産経新聞モスクワ支局長、ゴルバチョフ元大統領に3度直接取材した経験がある)はい。ドイツ語でレオパルト=動物の豹を指すんです。豹のように走行力、そして守備力もある。戦闘力もちろんあります。このレオパルトは、地面のぬかるみをもろともしない。このレオパルト2が供与されますと戦況を変える可能性がある。

昨年、ハイマースというロケット砲システムが6月に供与されましたね。それで戦況が劇的に変わっていったその可能性があります。ただこのレオパルト2も「A4」と「A6」のバージョンがありまして、ドイツは「A6」改良型を渡すんですけども今ロシア側の主要戦車になっている「T90」というのがあるんですが、レオパルト2「A4」と「T90」だとT90の方が上ではないかという指摘があるんです。

ロシア側の今日の報道を見ても、「レオパルトが来ても怖くはない」ということを盛んに報じております。「A4」はおそらくギリシャやスペインに供与されている主力戦車なんですが、「A6」はもちろん最新の改良型でありますので、ロシアの「T90」を撃破する可能性があるんですが、バージョンと供与の量によるんではないかというふうに考えております。

―――ディーゼルエンジンで運用コストが安くつくんですか?

はい、これはアメリカが供与する「M1エイブラムス」と大きな違いでやはり燃費がいい、メンテナンスもしやすい、NATO諸国、欧州が多く持っておりますので供与しやすく、保守管理訓練もしやすいのがメリットだと思います。

―――訓練には数ヶ月がかかるが、配備されれば奪還地域が飛躍的に増える可能性があるということですね。

そうです。戦車部隊を組みますと、ロシア軍の防御性を突破するんではないか。ただですね、航空戦力が必要だということで、ウクライナがもう既にドイツ、アメリカに要望してるようです。航空戦力でロシア側の後方拠点を叩くことが必要、それで初めてレオパルト2の威力が増すんではないかということなので、航空戦力がどうなるかっていうのがやはり次のポイントだと思います。
―――ドイツ国内では賛否があったようですね。

(三澤肇解説委員 元JNNベルリン支局長)レオパルト2は、中東なども欲しがる高性能のタンクなんです。かつてサウジアラビアに輸出しようとして、サウジアラビアが弾圧に使うんじゃないか、っていうことでドイツ国内で反対論が沸き起こって断念した経緯もあったぐらいです。ドイツは自分たちの兵器が他国で殺戮に使われることに対して厳しいんです。

―――ドイツですから、第2次世界大戦の反省という部分は国内世論にもあるわけですよね。

特にこのショルツ首相の所属政党である社民党(SPD)がやはり単独行動はとらない、二度と第2次世界大戦のような戦果は繰り返さないということを主張しましたので、やはり供与の遅れにつながったのかなと感じています。

―――ドイツにメリットはありますか。

供与することによって結束を強めることは当然あります。これまでは、天然ガスの問題もありロシアの顔色をうかがっているところもあったかもしれませんが、戦車供与によって事態はだいぶ好転することを見ていると思いますね。

―――今決まっているのが、ドイツがレオパルト2を14両、ポーランドはレオパルト2を14両、フィンランド「そう多くない数」、イギリスはイギリスの戦車「チャレンジャー2」を14両供与すると決まっています。そしてアメリカは「エイブラムス」31両、カナダは「レオパルト2」4両の供与が決まった。主力戦車の供与は長期戦を見据えた備えだが、佐々木教授によると「配備前にロシアの大規模攻勢の可能性がある」と、これはどういうことでしょう。

昨日、ドイツの新国防相が、3月末にはレオパルト2が届くのではないかと言われておりますが、アメリカ側ですね、むしろ訓練が熟練を増すまでウクライナ側に大規模攻勢をかけない方がいいということをどうやら要望しているようです。そのポイントを狙ってですね、ロシア側は「主力戦車が届く前に、特にドンバス地域を勢力圏に置こうとしておりますので、タイムラグを狙って早めに攻撃してくるんではないか」ということも指摘されております。

ロシアはどう動く「世界経済を麻痺」 森元総理の「負けは考えられない」発言は…

―――戦車供与に対してロシアはどう動くのか、引き続き解説していただきます。欧米諸国に対してロシアは「世界経済全体を麻痺させる作戦」例えば小麦でやエネルギー、日本もやはり影響を受けるということになりそうです。

昨年7月ぐらいに小麦の輸出が止まって、アフリカ諸国が食糧危機に陥りかけましたよね。やはり戦況で劣勢になりますと、ロシアは小麦やエネルギーを使って世界経済を麻痺させ長期化させて、ロシア側になびく国を集めようとする、それがおそらく戦略だと思います。例えば昨日もですね。イギリスとドイツで、サイバー攻撃がありました、そういったことも警戒しなくてはいけない。

―――もう一つ、EU内でも足並みの乱れがある。

ドイツ国内でも、戦争に巻き込まれたくないと戦争当事国になりたくないという声はかなり多いです。ハンガリー、セルビアは親ロ派的な政策をとっておりますので、欧州の分断を図ろうとする揺さぶりをかけてくる可能性がありますね。

(三澤肇解説委員)特にハンガリーのオルバン政権は、特徴を持ってまして、昔から接点だったという歴史的経緯もありますし、相当な右派政権で、EUの概念とはちょっと違うことをやったりします。セルビアもロシアの影響力を受けていますし、そこら辺を巧みにロシアは突いてくるってことですね。

―――ロシア国内はどうなんですか?「第2の動員令」で国内脱出を阻止するとの情報もあるということですが。

第1の動員令は去年9月下旬に出ましたね。その際に動員を避けようとして、多くのロシア国民の健康な男子が数十万人隣国に逃れた経緯があります。これはプーチン政権にとっても諸刃の剣です。動員やれば反発が起こる。そうしますと、何らかの理由が必要なんです。「第2の動員令が出る」という、憶測や観測がロシア国内でも12月ぐらいから出てるんです。おそらく主力戦車の供与というものが一つの理由になるんではないか、これが使われるということになりますと、戒厳令を敷いて戦時態勢を強めて、「ロシアはこの戦争に負けると国家の命運がかかっている」ということを言って第2の動員令をするんではないか、というふうな可能性があると私は考えています。

―――日本国内の話ですけれど、皆さんこの発言はどういうふうに思われますでしょうか森喜朗元総理です。「せっかく積み立ててここまで来ているのに、こんなにウクライナに力入れちゃっていいのかな。」こうとも言いました。「ロシアが負けるってことはまず考えられない、そういう事態になればもっと大変なことが起きる。そのときに日本がやっぱり大事な役割をしなきゃならない、それが日本の仕事だと思います」と話しました。

これは、私も真意がちょっとよくわからないです。「ロシアが負けることがまず考えられない」っていう言葉が、1人歩きする可能性もありますし、ウクライナでは昨日キーウで爆撃があって11人が死亡している。毎日のように戦争犯罪が積み重なっている状況の中、やはりロシアを支援するような言葉というのはなかなか考えられないなと、私自身は考えます。

ただですね。私自身が思うのは、かばうわけではないですけども、ロシアが戦闘で勝っても、もう既に国際社会での地位は低下しておりますし、これは敗色濃厚だと思いますが、負けるということになりますとなかなか負けない。そのように負ける前にですね、様々なことをして、揺さぶりをかけたり、エネルギーを使ったり、様々な手を使って、負けない戦争をしてくるんではないか。そうなりますと森元総理何を言ったかはわかりませんけども、そこのポイントっていうのは少しあるんではないかなというふうにも考えます。

―――現役閣僚は「G7の主要議題なのにとんでもない」。自民党のベテラン議員は「サービス精神で、ああなっちゃうんだよな」と話しています。

(三澤肇解説委員)また出たな、という感じはしましたけど、これ場所が日印協会っていう日本とインドの協会のレセプションだったんですね。インドっていうのはロシア非難に乗らず、一線を画してきた外交をやってきましたよね。それに対するリップサービスで、森さん流のリップサービスでもあるということと、やっぱり自身がプーチンさんと親しくしてきたということと、和平交渉等々で日本が間に入りたいというような意図もある中での発言だと思うんですが、今G7の議長国やっててですね。この発言はちょっと、っていうのが正直なところです。

―――そして岸田総理はウクライナ訪問を検討。国会で自民党の茂木幹事長は「G7広島サミットでは、ウクライナ支援がテーマになる、総理のウクライナ訪問が望ましい」と発言しました。岸田総理は「現時点では何ら決まっていないが、諸般の状況も踏まえ検討していく」と話しています。佐々木教授によると、可能性ゼロではないと。

私はウクライナ訪問するのは、かなり確率が高いと思います。よっぽどのことがない限り、治安上の問題、諸事情がない限りですね、私はこのドイツの訪問の際にですね、ウクライナに寄るんではないかと考えています。ウクライナ側は「復興力」を期待してるんですね。日本のテクノロジー、震災等でうちひしがれた街を蘇らせる力というのはありますので、この復興力を期待して、ウクライナと岸田さんとの会談はあるんじゃないかなというふうに考えております。

2023年01月27日(金)現在の情報です

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