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「産後ケアがなかったらうつになっていたかも」ママが悩み相談できる『産後ケア事業』利用者同士の交流なども...しかし「知らない人が本当に多い」

2022年11月24日(木)放送

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 出産後の母親を支える公的な取り組み『産後ケア事業』。母親の健康管理・産後生活のアドバイス・母親のこころのケア・育児相談などを受けることができます。しかし産後ケアという制度自体を知らない人が多い状況です。厚生労働省の「産後ケア事業の利用者の実態に関する調査研究事業報告書(2020年)」によりますと、年間出生数のうち宿泊型の産後ケアを利用した人は0.88%、日帰り型(個別型)の産後ケアを利用した人は1.42%で、まだまだ利用者が少ないことがわかります。産後ケアとはどういうものなのか取材しました。

出産後のママをサポート…少ない自己負担で受けられる場合も

  神戸市垂水区にある「りんご助産院」。ここは赤ちゃんを産む場所ではなく、ママのための産後ケア施設です。
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 この助産院を経営する助産師・林美佐子さん(49)。2年前から神戸市などの委託を受けて産後ケア事業を始めました。丁寧なケアが受けられる助産院と口コミで広がり、今では2~3か月待ちの人気施設です。

 (りんご助産院 林美佐子さん)
 「赤ちゃんの成長がしっかりできているのかとか、お体の相談とか。助産院って指導があるというイメージだと思うんですけど、やっぱり話を聞かないとその人に合ったケアは見つかってこないので」
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 産後ケア事業とは、出産後のママをサポートするもので、助産師などの専門家に心身の不調や育児について相談することができます。国の補助を受けて市町村が実施しているものには、宿泊型・日帰り型・訪問型があります。育児不安があるなど自治体が必要だと認めれば、母親は原則7日まで少ない自己負担でケアを受けられます。

 【神戸市の場合】
 宿泊型:1日3000円
 日帰り型:1日2000円
 訪問型:1回1000円
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 りんご助産院は日帰り型で実施していて1日3組をサポート。取材した日に来ていたのは生後5か月までの赤ちゃんがいるママたちです。林さんはそれぞれの悩みに寄り添います。

  (ママ)「うつぶせ寝が始まったら添い寝ってちょっと危ないんですかね」
 (林さん)「よくある質問なんですけど、苦しいって思った時にガッて頭をあげられない子はいないんですね。かけ布団とか何か周りにおいているものが顔とかに絡まったり上にのったりしたときに、それをのける知恵や力がないんですよ。その窒息には気を付けないといけない」

「なんでお母さんになった時に教えてくれるところがないんやろう」

 利用者から信頼をおかれている林さんですが、意外にも助産師になったのは2人の子どもを産んでから。自分が子育てに悩んだことがきっかけでした。

 (りんご助産院 林美佐子さん)
 「子どもが産まれたらすごく幸せと思っていたけど、実際は子どもはよう泣くし、なんで泣いているかもわからないし、それで結構病んだんですよ。英会話を上達したいと思ったら英会話教室があるし、テニスを上達したいと思ったらテニススクールがあるみたいに、なんでお母さんになった時に教えてくれるところがないんやろうと」
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 2歳と1歳の子どもを抱えながら勉強し、29歳で看護学校に入学。母乳をあげながら2~3時間睡眠で学校の課題をこなし、34歳で助産師になりました。
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 子育てに悩んだ林さんだからこそのママに寄り添ったケアが人気の理由でもあります。

 (林さん)「最初は補完食(離乳食)はあげてもそんなに多くないから、あんまり量にカウントせんでも大丈夫だから。そのうち減ってくるわ、おっぱい」
  (ママ)「機嫌がよかったら(授乳間隔を)あけても?」
 (林さん)「それをもしして体重があんまり増えてなかったらちょっと注意せなあかんから」

栄養たっぷりのご飯・利用者同士の交流なども

 またりんご助産院では、疲れたママがリラックスできるように、赤ちゃんを預けてアロママッサージが受けられたり(オプション・別料金)、栄養たっぷりのご飯を食べたりすることもできます。

 (利用者)
 「おいしいんですよ。幸せ。(昼ご飯は)自分やったらなんでもいいかなとなるんで、晩ご飯の残り物とか。ゆっくり預かってもらって食べられるのが本当にありがたい」
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 中でも大切にしているのが利用者同士の交流です。

 (他の利用者たちと話す利用者)
 「旦那さんが仕事で出張とか行ったりするので、結構実家に甘えたりしていて」
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 コロナ禍でママ同士が交流できる場が少なくなっている今、悩みを共有できる貴重な時間になっているといいます。

 (利用者)
 「家で2人で過ごしていたら、しゃべりかけても反応してくれないので。泣いていて泣きやまないときとか、私の何かが悪いんやろうかとすごく悩んで、夜に涙が出てきてとかもあったんですけど。(産後ケアがなかったら)しゃべらなさすぎてうつになっていたかもしれない」

コロナ禍で産後うつ状態の女性が増加傾向

 出産した女性の1割がなると言われる産後うつですが、今年4月に発表された神奈川県立保健福祉大学の調査によりますと、コロナ禍で出産・育児を経験した産後1年以内の女性の約3割が産後うつ状態にあり、コロナ前と比べて増加傾向にあることがわかりました。

 また今年3月に実施されたカラダノートの調査では、妊産婦の不安要因として「ママ友と交流ができない(45.5%)」「公共機関の出産育児サポートが受けられない(41.0%)」という結果も出ていて、コロナ禍での孤立化が懸念されています。

 林さんのもとにも深刻な悩みを抱えたママが訪れることは少なくありません。

 (りんご助産院 林美佐子さん)
 「コロナ禍じゃなかったらこうはなっていなかっただろうなというケースとかもやっぱりあります。涙流してしんどかったとかわからなくて不安だったとか、そういうことを言われるママも多いです」

契約した企業の従業員が専属助産師に相談できるサービスも

 こうした中、妊娠から産後までのママをサポートする新しい動きも出てきています。大阪市都島区にある会社「With Midwife」が立ち上げた顧問助産師サービス「The CARE」。契約を結んだ企業の従業員は、専属の助産師に健康や人間関係などを匿名で何度でもメールなどで相談できるというもので、中には「死にたい」などの切実なメッセージも。
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 (With Midwife 岸畑聖月CEO)
 「『自殺したくなります』などのSOSが届く。そこで救える命があるということを実感すると、やっぱりこの事業ってもっと大きくしていろんな人に届けていかないといけないし、助産師に『助けてください』と言える存在が身近にある社会を作らないといけないなと思いました」
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 さらにこのサービスでは、妊娠から復職までの間、オンラインや対面で顧問助産師に育児相談をすることも可能です。
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 【対面で顧問助産師に相談する様子】
 (サービスを利用する鎌田麻希さん)「安全対策は?」
 (顧問助産師)「植物とかくらいですかね。ここも意外とぶつけたりごんっていったりするので、ここにホームセンターとかでクッション材が売っています。ここに貼り付けられる」
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 (「The CARE」を導入している日本新薬グループ 鎌田麻希さん)
 「妊娠中・出産時・産後とずっと継続して同じ方に相談できるので安心して何でも聞けるなと」

「赤ちゃんも大きくなるけどお母さんもしっかりしていく」

 取材した日、りんご助産院での産後ケアを卒業するママがいました。

 【卒業するママを見送る林さんたち】
 (スタッフ)「本当にありがとうございました」
  (林さん)「またこれからもよろしくお願いします。困ったことがあったらほんまいつでも連絡ちょうだいね」

 これまでのべ1400人以上のママを見てきた林さん。笑顔で卒業していくママたちを見ると、昔の自分と重ね合わせ「やっていてよかった」と実感するのだといいます。
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  (林さん)「なんかいっぱい思い出すよね。上の子のときからやから。家族みたいになってくるから立派になって見送るうれしさ」
 (スタッフ)「赤ちゃんも大きくなるけどお母さんもすごくしっかりしていくというか」
 (スタッフ)「お母さんも成長する」

「大変になった人が行く所と思っている人が多いけど…」

 一方で、産後ケア事業を知らない人があまりに多く、制度への理解が不十分だと話します。

 (りんご助産院 林美佐子さん)
 「知らなかったという方は本当に多いです。すごく大変になってしまった人、心を病んでしまった人が行く所だと思ってらっしゃる人がすごく多いんですけど、そうならないために来る所なので。体がついていかない時期でもあるので、(産後)0か月とか1か月とかは特に来ていただきたいなと思っています」

 産後ケア事業は、自治体全体の約2割が「委託先がない」などの理由でまだ実施していないなど、課題が残っています。1人でも多くのママが産後ケアで救われることを願い、今日も林さんはママたちと向き合っています。

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