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【解説】旧統一教会から"指名手配"された鈴木エイト氏語る「大学生勧誘の実態」ターゲットは『学生食堂で1人...友達少ない学生」

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 旧統一教会による献金問題が連日クローズアップされる中、8月5日のMBSテレビ「よんチャンTV」では、宗教団体の勧誘などについて取材を続けているジャーナリスト・鈴木エイトさんに話を聞きました。鈴木さんは熱心な現場主義の取材姿勢から、旧統一教会から要注意人物として顔写真付きで“全国指名手配”されたという曰く付きのジャーナリストです。アンケート調査や就活イベントなどを通じて学生に接近して勧誘していく旧統一教会について鈴木さんは「手口が洗練されてきた。巧妙にマインドコントロールしていく」と緩やかに人間関係を築いていく近年の傾向を指摘。ターゲットとして狙われやすいのは「学生食堂で1人でいる」「学内に友達が少ない」といった学生だということです。一方、旧統一教会と政治家の関わりについて、鈴木さんは「個々の議員の責任にして幕引きを図るなら、また同じ事件が起きるのでは」と自民党の対応を批判します。

過去に「宗教団体から勧誘を受け」教団の取材始める

―――鈴木エイトさんがこの取材の始めたきっかけは20年前に宗教団体が『街頭偽装勧誘』(手相・意識調査)をしているところを目撃したことがきっかけでカルト問題に興味を持たれたということです。これに関して、どういうところに興味を持たれたのですか?
「勧誘員たちは悪意を持って人をだましているわけではなくて、『素晴らしい教えがある』と、そこに導くために善意で人をだましているという、そういう構造に興味を持ちまして。信者たちもどんなメンタリティでやっているのか。自分の意思で一緒に動いているようなのですが、実はその教団に操られているとか、マインドコントロールを受けてやっているという、そういう“カルト問題特有の構造”に興味を惹かれました」

―――どういうところに行って、どんな取材をされているのですか?
「基本的には政治家が教団のイベントに出たりとか、そういう会場に行ってどんな政治家が参加しているのかを探ったりだとか。あとは実際にそういった政治家に直接取材をするとかですね。そういうことはここ近年、ここ10年くらいやっていますね」

大学生・高校生にも“勧誘の手”SNSで近づき人間関係を構築

―――そんな中、政治家だけじゃなく『大学生を狙う勧誘の手口』ということで、こういう宗教はお金が目的で、お金を持っている高齢者や社会人がターゲットなのかなと思っていたのですが、大学生もターゲットになっているのですね。元信者の女性は、映画の誘いをきっかけに旧統一教会の学生組織「原理研究会」に入ったということです。アンケート調査で反応がいい人はビデオセンター(信者養成施設)に誘って信者にしていく。こういうことが行われているということなのですね?
「そうですね、非常に巧妙にマインドコントロールを施していく手口がありまして。旧統一教会が日本に入ってからもう60年ほどになるのですが、非常に手口が洗練されています。『こういうレールに乗っかれば信者が生産できる』というものも経験則的にあるんですね」

「毎日学校が終わった後に通いやすい、『また行こう』という気持ちにさせるんですよ、食事を用意してくれたり、毎日お菓子をもらったり、手紙をくれたりとか。先に人間関係を作って『また行こう』と思わせる。『なんかやめようかな。ちょっと危ないな』と思っても、『この人間関係を切りたくない』とか、そういうことで繋ぎとめていくと。そのうちにだんだんと旧統一教会の原理教育みたいなものを施していくんですよ。何かちょっと社会不安をあおったりとか、『こんなに犯罪が蔓延っていて、この世界はちょっと不安ですよね』みたいなことを言いながら。『でも、実はもう既に救世主のような救ってくれる人ががいるんですよ』みたいなことに期待を持たせていくんですね。いろんな合宿を経て、最終的に『これが宗教であり、文鮮明(ムン・ソンミョン)という人がこの世につかわされている』みたいな感動の場面があると」

―――少しずつ少しずつその教団に近いところに自分が行ってしまっているという感じですね?
「最初から明かされたら、かなり荒唐無稽なものなので、信じ込めるようなものじゃないんですよ。そういうプロセスを踏んだ上じゃないと、ちょっと変わったものを受け入れられない。ターゲットは、いま就活とかで悩んで頑張っている人には就活セミナーと言って誘ったりとか、いまでは高校生とかにもターゲットが移っていて、『大学生活をこうやって楽しむために、こうやってためになるよ』みたいな感じで。ターゲットごとに、年代ごとにちゃんと分かれていますね」

―――大阪大学が実際の手口を動画で再現しているということで、YouTubeで動画がアップされています。例えば、手口の一つでもある就活イベントへの誘いだったり、「参加費1万円がもらえるよ」と言ってスピーチ大会に誘ったり、こういった形で誘われるということです。
「実際にコロナ禍において、オンラインプラットフォームとしてカレッジサミットのようなものを作って、そこに大学教授なんかも誘い込んでいるんですよね。実際はそういった内容とはわからずに。そこの大元をたどっていくと宗教関係の人間が始めた団体だったということがわかるんですね」
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―――コロナ禍の最近の手口でSNSを使った勧誘や、Twitterなどのプロフィールで「〇〇大学生」なんてことをプロフィールに書いて公開している大学生を狙って「いいね」というボタンを押し、次第にメッセージのやりとりをする流れになっているということなのですね?
「これは旧統一教会に限らず、他のカルト集団などもよくやっています。まず、『春から○○大生』とか、ハッシュタグからたどっていって『いいね』をして、だんだんリプライを入れてやりとりをするようになって、直接メッセージでやりとりをするようになったら次のステップにいくという」

―――こういう手口でも近づいてくるということです。狙われやすいのは、学食に1人でいる学生や、学校内に友人が少ない学生は狙われる可能性が高いということですね?
「こういう勧誘は必ず1人を狙うんですね。複数人がいるところには声をかけない」

“カルト教団“と知った場合‥「どう断ったらいい?」

―――入学したての時やコロナ禍だったらなかなか友達もできないし、1人でいることもありますよね。勧誘されて仲良くなってからカルト教団と知った場合はどう断ったらいいのでしょうか?
「まずは親や学校に相談してください。特にいろんな年代の人、同世代だけじゃなくていろんな人に相談するといいと思います。あとは大学側でちゃんとこういうことを把握しているところも多いので、ちゃんとまず周りの人に相談してください」

―――「辞める」とは言わずに連絡を絶つということですが?
「そうなんです。うっかり『辞める』とか言うと、またそこで連絡を取りますよね。それと『最後にもう1回だけ来てくれ』みたいなケースがあって、そこで行ってしまってまた入ってしまうようなこともあるんですよね。実際にこういうビデオセンターに通って辞めたいと言っていた子の相談を受けて、一緒に行ったことがあるんですけれど、もうそのビデオセンターでも教団自体にも不信感を持っているんですが、自分に一番ケアしてくれた担当者の人とは別れることがつらくて、お互い泣きあったりしているようなこともあったんですよね」

旧統一教会と政治家の関係…過去に80人参加する議連も

―――そして政治との繋がりです。自民党の下村博文元文部科学大臣が、8月4日に「今となったら責任を感じます」と話しました。これは旧統一教会の名称変更を巡り、この変更が行われたときの文部科学大臣が下村氏でした。1997年から文化庁は名称変更を門前払いしてきました。ところが2015年、下村氏が文部科学大臣のときに名称変更を認証、「世界平和統一家庭連合」と名称が改まりました。文化庁が開示した資料には、名称変更の理由は黒塗りになっていて、実際にどうしてこれが認証されたのかがわからないということです。

「もし仮に下村さんが関わっていたとしたら、大したことではないなと思っていた節はありますね。実際にこの数年前から文教族、いろいろな国会議員や文科省に関わる人にアプローチをしていた形跡があるんです。なので、多角的にいろんな国会議員を通して働きかけをしてきたと思います」
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―――そして、自民党の茂木幹事長は『個々人の活動についてはそれぞれの議員が適切に説明を行っていくべき』だと。『自民党としては関与してません、それぞれ個人ですよ』と。エイトさんは『個々の責任にして幕引きを図るなら、また同じ事件が起きる可能性がある』と指摘していますが?
「はい。実際にですね、茂木さんがこうおっしゃっているんですけれども、今年6月の段階で80人の国会議員が集う議連が行われました。旧統一教会、世界平和統一家庭連合の関連だったのですが、80人も参加する議連・議員会議が行われていて、それで組織性がないんですかという。その認識はどうなのかなという疑問は思いますね」

2022年08月08日(月)現在の情報です

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