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「学校生活や人生を返して」いじめで不登校4年...被害女児の実情『学校の不十分な対応』『調停成立でも終わりではない』

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 大阪府八尾市の女子中学生Aさんが受けたいじめの問題。2017年ごろに同級生から暴言を吐かれるようになり、2018年には暴行を受け指を骨折。その後、不登校になり、PTSDと診断されました。両親らは暴行した児童や市に対して慰謝料などを求めて提訴し、今年7月21日に調停が成立しました。そんな中で今回、Aさんは勇気を出して取材に応じてくれ、今も学校に通えていないなどつらい現状を打ち明けました。

「学校生活や人生を返して」暴言吐かれ小5の秋から不登校に

 八尾市に住む中学3年生のAさん。小学5年生の秋から一切学校に行けていません。小学4年生のころに同じクラスの男子児童から体型をからかわれるなどの暴言を吐かれるようになりました。

 2018年2月には放課後の公園で男子児童から左手を踏まれて小指を骨折する重傷を負いました。しかし学校側は「学校の外のことに関われない」などと対応を先延ばしに。問題の解決が遅れる中、Aさんは小学5年生の秋から学校に行けなくなり、PTSDと診断されました。

 (Aさん)
 「学校生活の時間や人生を返してほしいとすごく思います。私は修学旅行にも行けなくて、体育祭とか行事にも参加できなくて、人権が奪われているように思いました」

第三者委員会は「いじめ」が原因と認める

 Aさんの姉たちは元々明るい性格だったAさんが変わっていった様子を間近で見てきました。

 (Aさんの姉(次女))
 「自殺しようとしているのを私が止めて、見ていてとてもつらかったです」
 (Aさんの姉(長女))
 「加害者の男の子たちは笑っているのに、家で毎日苦しんでいる妹を見たら、妹は悪いことはしていないのになぜ妹だけが苦しんでいるんだろうと思いました」

 八尾市では2度、第三者委員会が立ち上がり、Aさんの不登校の原因は「いじめである」と認め、学校側の初期対応を厳しく批判する調査報告がまとまっています。

 (第三者(再調査)委員会 松浦善満委員長(当時) 2020年1月)
 「いじめに対する認識の浅さと言いますか、安全・安心に対する意識が非常に低下している」

中学には一度も登校できず“進路”の問題も

 2020年4月、当時の加害者側と同じ中学に進学したAさん。しかし中学校は「小学校で起きたいじめだから対処できない」として加害者側に厳しい対応をとることはなかったといい、Aさんは入学以来1度も登校していません。
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 今、中学3年になって進路の話が現実味を帯びてきました。学校側は内申点が足りないAさんのため、急きょ自宅に期末テストを持ってきましたが、Aさんにとっては見るのも初めてのこと。

 (Aさん)
  「(中学のテストは)問題用紙と答案用紙が分かれていてびっくりして。3年生で初めてテストが出るわけじゃないですし、なんで今さらというのはありました」
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 実は自治体や学校がいじめにどう対処すべきかをまとめた新たな法律「いじめ防止対策推進法」が2013年にできています。そこには加害者側に対して学校が別室登校などの措置を講じることができると定められていますが、Aさんは市や学校側の対応は不十分だと感じています。

 (Aさん)
 「私は相手の加害者の人たちが全員怖いわけで、一緒の空間にもいたくないくらいで、学校に来てほしくないというのをずっと言っているんですけど、(市や学校は)『加害者の子たちにも義務教育を受ける権利があるし、今いじめているわけではないから出席停止にはできない』というのを言われて。私からしたら、(学校に)我慢して来るか、(学校に)来るなと言われているように感じました」

調停成立…しかし「娘にとっては終わりではない」

 Aさんの両親らは2年前に暴行した男子児童や市に対して約2800万円の損害賠償を求めて訴えを起こし、今年7月21日に大阪地裁で調停が成立しました。

 (Aさんの母)
 「調停は終わりましたけれども、娘にとっては終わりではなく、後遺症を背負ってずっと苦しみながら生きていかなければならないので、娘にとってはまだまだ終わりではありません」

 市はMBSの取材に「市としても重く受け止めている。今後は子どもや保護者の思いに寄り添える支援をしていきたい」とコメントしています。

2022年07月21日(木)現在の情報です

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