いよいよあす(1月7日)に迫った全国高校ラグビー大会決勝戦。チーム全員で「夢」に向かって切磋琢磨するからこそ、今大会も様々なドラマがラグビーの聖地・花園で生まれました。
「挑み続ける」からこそ「夢」は叶う
暮れも押し迫った12月28日、夕やみ迫るグラウンドで、人目もはばからず号泣する男がいた。
「私は、日本一幸せな監督です。息子と一緒に夢を追うことができた。花園はやっぱり素晴らしかった。」
高松北高校、高木智監督、52歳。
今大会は、主将で息子さんでもある高木涼矢選手と臨んだ最後のHANAZONOだった。
1回戦の相手は、名門、岐阜の関商工。高松北高校は、序盤から苦戦を強いられる。前半だけで8つのトライを許し
56対0。それでも、選手たちは、決してあきらめなかった。ひたむきに、がむしゃらに体をぶつけていく。高木選手も、切れ味鋭いステップで何度も何度も突破を試みる。そして、後半10分過ぎには、相手ゴール前、あと僅かなところまで迫った。5分近く続いた攻防。しかし、関商工の分厚い壁の前に、あと一歩、あと数センチが届かなかった。
結果は、89対0。高松北高校の挑戦は、今大会も1回戦で幕をとじた。
香川県勢は、長い全国高校大会の歴史の中で、まだ1勝。高松北高校も5年連続出場を果たす中、一度も勝利の雄叫びをあげていない。それでも、監督は前を向いた
「この大会で選手たちに大事なことを教えてもらった。あきらめない気持ち、挑戦し続けることの大切さを。まだ見ぬ景色をみるためにも、もう一度一から出直します。」
選手がみせた想像を超えた成長
ラグビーは、試合が始まると監督がフィールドに入ることができない。だからこそ、試合中は、選手自身が自分たちで考え、自分たちで行動することが、何よりも重要になる。そこでは、指導者の想像を超えて、選手自身が思いもよらない成長をみせることがある。高校ラグビーが、プレイヤーとしての成長だけでなく、人間的な成長にも寄与しているといわれる所以だ。
今大会、準々決勝でも、そんな高校ラグビーの力を感じさせる場面があった。千葉の流通経済大柏が大阪の常翔学園を大逆転の末に破った一戦。試合終盤、同点のペナルティーゴールを狙うことを指示した相監督に対し、選手たちは、全員で意思を確認したうえで、そのまま攻撃を継続することを選択。見事、逆転トライに結びつけた。敗れること6回、幾度もベスト8の壁に跳ね返されてきた流経大柏が、監督の想像を超える大きな成長を見せて、悲願の準決勝進出、「未だ見ぬ景色」に到達した瞬間だった。
大会も残すは、決勝戦のみ。昨年の準優勝から1年、この舞台に立つために努力を積み重ねてきた大阪桐蔭。その大阪桐蔭に、あと数センチのところで決勝進出を阻まれてから365日、同じ準決勝で、花園で一度も勝てなかった東福岡の壁をついに打ち破った神奈川の桐蔭学園。
何度も何度も大きな壁に跳ね返されながらも、あきらめずに挑戦し続けてきた2チームが、いよいよ最後の戦いに挑む。
どちらのチームが、「未だ見ぬ景色」を目にするのか。「夢」舞台が、ついに幕を開ける。