小さな司令塔が花園へ導く!常翔学園・前田翔哉

MBSラグビーダイアリー

2018/11/15 12:00

身長165cm/体重62kg。ラグビー選手としては小柄なスクラムハーフ・前田翔哉は、年末年始に東大阪市花園ラグビー場で行われる全国大会に1年時からレギュラーとして出場し、今年は高校日本代表候補にも選出。小学校時代はアメフトに打ち込み、真住中学でラグビーを始めると大阪府選抜にも選ばれた逸材だ。順調に歩みを進めていた前田だが、18年2月に大怪我を負い8か月間のリハビリ生活を余儀なくされた。それでも10月末に復帰すると怪我前と変わらぬ軽快な動きを見せる。11月18日には、花園出場をかけた東海大大阪仰星との大一番。6度目の日本一へ、小さな司令塔が常翔学園を花園の舞台へと導くと誓った。

「野上監督を胴上げしたい」その想いで乗り越えた苦しいリハビリ

ブチっという音が聞こえた瞬間、頭が真っ白になった。「ヤバい」

2018年2月17日。近畿大学のグラウンド。前田翔哉はALL大阪の選考会に参加していた。その試合形式での練習中、ラックで膝をひねられて嫌な音がした。高2の春に右膝内側側副靭帯の断裂。秋には左膝内側側副靭帯の部分断裂をしたが、その時はかろうじて歩くことができた。しかし、「今回は全く立ち上がることが出来ませんでした。最終学年なのに自分はラグビーが出来るのだろうか?と不安になりました。」グラウンドに倒れこんだ時、冬の花園が遠のいていく感じがした。その後病院に直行し、診断は右膝前十字靭帯断裂。3月23日に手術をすると医師から「復帰まで約8か月間は必要。」と言われ、先の見えないリハビリ生活を送ることになった。

前田は1年生ながら花園にレギュラーとして出場。常翔学園の野上監督も「まるで忍者みたい。勘が良い選手だと思う。」と話すほど機動力に溢れ、ラック周辺で相手ディフェンスをかき乱すのが得意プレーだ。しかし、1年時は全国大会で準々決勝敗退。2年時は2回戦敗退と花園では全く理想のプレーが出来ていない。並々ならぬ思いで3年生となったが、その矢先の不幸だった。「リハビリ中は皆が徐々に上手くなっているのを感じたので、自分の中では焦りがありました。」と気持ちが折れそうになることもあった。しかし、心の支えとなったのは高校ラグビー界の名将・野上監督の存在。

「自分みたいな体の小さな選手に1年生から花園出場のチャンスを与えてくれました。その恩返しは絶対にしたいと思いました。」

1日でも早く復帰することを目標に、毎朝9時から筋力トレーニングに取り組んだ。また、グラウンドでは「練習が出来ない分、客観的にチームを見る時間が増えました」と積極的に自分が気づいたことはチームメイトに指摘することを心がけた。
そして、8か月の長いリハビリ生活を乗り越えて迎えた10月28日。報徳学園との練習試合に前半30分限定で試合復帰。思う存分グラウンドを駆け回った。「やっとラグビーができると思いました。ラグビーボールに触れて、皆とラグビーを出来ることがすごく嬉しかったです。」チームメイトと同じユニフォームを着てプレーした30分はとにかく楽しかった。

負けたら終わり。全国大会をかけた運命の決勝戦へ挑む!

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そして、11月18日に運命の決勝戦を迎える。相手は昨年度の全国大会で優勝した強豪・東海大大阪仰星だ。常翔学園と東海大大阪仰星は今シーズン2度対戦。3月の近畿大会は29対35で東海大大阪仰星に敗れた。5月の大阪総体では49対24で勝利。そして決勝戦が3度目の対戦となるが、3月も5月もただ見ることしかできなかった前田にとっては最初で最後の大一番となる。

「1年生から全国大会に出場させてもらって、花園は自分を成長させてくれる場所だと思っています。その舞台で自分が成長した姿を見てもらいたい。そしてやっぱり野上監督を胴上げしたいですね。前田がチームに加わると一味違うなと思わせることをモチベーションにリハビリも頑張りましたので、大阪地区決勝で負けるわけにはいきません」

復活した小さな司令塔は、常翔学園の4年連続37回目の全国大会出場。そして、6度目の日本一へ燃えている。

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