第100回を迎えた全国高校ラグビー大会。2連覇を果たした神奈川・桐蔭学園の藤原秀之監督は、優勝直後のインタビューで、コロナ禍の中、いくつものハードルを乗り越えて、栄冠にたどり着いた選手たちの飛躍的な成長ぶりをたたえた。全国レベルの大会が一度も開催されることがなかった今年度。どのチームも、チーム作りの過程で停滞を余儀なくされた。とくに首都圏の神奈川のチームである桐蔭学園は、より大きな試練に立たされる。早めに練習を再開できた地方のチームに比べて、実戦は勿論、屋外での練習さえもままならない状況に追い込まれたのだ。しかし、選手たちは、そのハンデをプラスに変えていく。危機を“乗り越える”ために、本当に必要なチカラが何だったのか。
100回目を迎えた全国高校ラグビー大会。2連覇を果たした神奈川・桐蔭学園の藤原秀之監督は、優勝直後のインタビューでこう答えた。
「まずは、このような状況の中、大会を開催していただいた関係者の方々に感謝したい。なかなか目標が持てない中、努力し続けてきた子供たちに、力を発揮する場をつくっていただいた。試合は、選手たちが本当によく頑張ってくれた。1か月前、このような舞台に立てるとは、私自身想像さえもしていなかった。選手たちが、本当に努力した、強かったということだと思う。」
コロナ禍の中、いくつものハードルを乗り越えて、栄冠にたどり着いた選手たちの飛躍的な成長ぶりをたたえたのだ。
全国レベルの大会が一度も開催されることがなかった今年度。どのチームも、チーム作りの過程で停滞を余儀なくされた。とくに首都圏の神奈川のチームである桐蔭学園は、より大きな試練に立たされる。早めに練習を再開できた地方のチームに比べて、実戦は勿論、屋外での練習さえもままならない状況に追い込まれたのだ。
しかし、選手たちは、そのハンデをプラスに変えていく。合同でのトレーニングができないならば、と一人一人が徹底的にフィジカルを強化し、例年以上に力強い肉体を作り上げた。その上で、ラグビーを理解する、自分たちの強みを、チームとしての戦い方を共有していく時間に費やしていく。神奈川大会決勝こそ、東海大相模相手に19対17とわずか2点差の勝利だったが、花園の本大会に入ると盤石の戦いぶり。3回戦までを順調に突破すると、準々決勝では、昨年の決勝戦で顔を合わせた奈良の御所実業を圧倒。準決勝、決勝は、大阪朝鮮高、京都成章相手に前半は同点で折り返すも、後半に入ると戦い方を修正。相手の出方を見たうえで、ギアチェンジする抜群の対応力を見せつけて、勝利を手繰り寄せた。
「今大会は、"成長し続ける"をテーマに掲げて戦いましが、それが実現できた。」と語った佐藤健次主将。技術、体力、判断力に加えて、一人一人が自らの役割を明確に理解したうえで、局面、局面でそれぞれの強みを結集していく姿は、まさに王者の戦いぶりだった。「うちは、上手いだけでは、試合に出ることはできない。何よりもチームメイトに信頼される選手になることが大切。」藤原監督のこの言葉が、示した勝利の秘訣。
高校ラグビー史上に残る「ロスタイム18分」、東海大大阪仰星と東福岡の死闘をはじめ、数々の名勝負を残して幕を閉じた100回目の全国高校ラグビー大会。関係者全員が、お互いの信頼の下、力を合わせて、一人の感染者も出さずに無事に全日程を終了した姿こそが、危機を"乗り越える"ために、本当に必要なチカラが何かを、教えてくれたのは間違いない。
MBSスポーツ局解説委員 宮前徳弘