まるで昨年のワールドカップのような興奮の中、鋼の肉体をもつ若者たちが、ついにグラウンドに姿を現した。記念すべき第100回を迎える今年度の全国高校ラグビー大会。憧れの花園への戦いが、佳境にさしかかっている。兵庫県大会決勝は、関西学院 対 報徳学園。奈良県大会決勝は、天理 対 御所実業。激戦を制して花園出場を勝ち取った関西学院(兵庫)と御所実業(奈良)のキャプテンは、くしくも同じ言葉を口にした・・・。
入場を告げる音楽とともに会場の雰囲気が一変する。まるで昨年のワールドカップのような興奮の中、鋼の肉体をもつ若者たちが、ついにグラウンドに姿を現した。記念すべき第100回を迎える今年度の全国高校ラグビー大会。憧れの花園への戦いが、佳境にさしかかっている。神戸ユニバー記念競技場で行われた関西学院 対 報徳学園の兵庫県大会決勝戦。久しぶりに生での観戦が可能になった観衆の熱気が、戦いの高揚感を高めていた。
下馬評は、3年連続で花園切符を手にしている報徳学園が有利。しかし、初めてスクールカラーであるブルーのジャージに身を包んだ関学フィフティーンが、大勢のファンの拍手を後押しに、試合の主導権を握っていく。卓越した個人スキルを持つ報徳に対して、意思統一された戦術、きたえあげられた走力で対抗。後半、メンバーを入れ替えて反撃を試みる報徳に対しても、アメリカンフットボール部ばりの分析力で見事に対応。4年ぶりの全国大会出場を手にした。
翌日の奈良県大会決勝は、26年連続で同じ顔合わせの白と黒のジャージ対決。関係者のみの無観客開催の中、覚悟を決めた選手たちの静かな入場から始まった。しかし、キックオフと同時に、燃え上がる炎のような闘志が、会場のボルテージを一気に引き上げていく。まさに火の出るようなタックル、コンタクトの応酬。息もつけないような攻防が続いていく。
後半、半ばすぎて、黒のジャージ御所実業が、19対14とわずか5点のリード。そこから純白のジャージ天理が10分以上にわたって攻め続けた。攻める天理に、しのぐ御所。両チームミスをしない超ハイレベルの激闘が続く。しかし残り5分、御所のゴールラインまであと僅かに迫った天理が痛恨のミスで、御所にボールが渡る。それでも攻守が入れ替われば、ワンチャンスでひっくり返る展開。必死にボールをキープする黒の集団に、奪い返そうとする白の軍団、とてつもない緊張感の中、ついに終了をつげるホイッスルが鳴り響いた。その瞬間、勝った御所実業は歓喜の涙を、負けた天理は悔し涙とともに膝から崩れ落ちた。激戦を制して花園出場を勝ち取った両チームのキャプテンは、奇しくも同じ言葉を口にした。
「我々は、ライバルがいたからこそ、ここまで成長することができました。」
いつもの年なら、敗れたチームはシーズン最後になる試合。しかし今年は、第100回の記念大会。それぞれの2位チームにも、近畿ブロック代表での出場をかけた戦いが控えている。ライバルと再び相まみえる機会、悔し涙をうれし涙に替えるチャンスは、まだ残っている。
MBSスポーツ局解説委員 宮前徳弘