MBS 毎日放送

2020年10月29日 11時46分 公開

Vol.46 変えないものと、変えるもの

ヴィッセル神戸は、2018年に元日本代表の三浦淳寛氏がスポーツダイレクターに就任すると、クラブの強化方針を一元化。元スペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手やダビド・ビジャ選手を獲得。今年1月には、クラブにとって念願の初タイトル・天皇杯を手にした。しかし、ビジャ選手の引退や、イニエスタ選手の故障等、主力選手が次々と戦線を離脱。8戦勝利なしの結果に、チームに初の栄冠をもたらしたフィンク監督が辞任。その後を継いだ三浦淳寛監督は、クラブが目指すサッカーのアイデンティティーを守りながら、チームにとって必要不可欠な部分、守備やボールへの執着といった局面での厳しさの改革に着手した。ここ数試合は、結果には結びついていないが、それでも若き指揮官は、前をむく。

 7月に再開したサッカーのJ1リーグ。超過密日程の中、関西のチームが健闘している。ロティーナ監督体制2年目を迎えたセレッソ大阪は、持ち味の堅い守備をベースに、すきのないサッカーを展開。再開後に2位に浮上すると、その後も、攻守に安定した戦いぶりで上位をキープしている。
 一方、ライバルのガンバ大阪も、負けてはいない。再開直後こそ苦しんだものの、降格がない今年の特別ルールを有効に活用。宮本恒靖監督が、若手メンバーを大胆に起用し、インテンシティー(プレー強度)の高いサッカーで6連勝。ガンバらしい勝負強さをみせて、一気に上位に食い込んできた。
 そんな中、思い切ったシフトチェンジを図ったのが、ヴィッセル神戸だ。ヴィッセルは、2018年に元日本代表の三浦淳寛氏がスポーツダイレクターに就任すると、クラブの強化方針を一元化。能力の高い選手を軸に、ボールを支配する攻撃サッカーを掲げて、元スペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手やダビド・ビジャ選手を獲得。今年1月には、クラブにとって念願の初タイトル・天皇杯を手にした。
 しかし、ビジャ選手の引退や、イニエスタ選手の故障等、主力選手が次々と戦線を離脱。8戦勝利なしの結果に、チームに初の栄冠をもたらしたフィンク監督が辞任。コロナの影響で、各チームが変革を手控える中、J1唯一の監督交代劇となった。
 監督が代われば、目指すサッカーも変わるのがサッカー界の通例。だが、ヴィッセルは、目指すサッカーの継続性を何よりも重視し、その上でチームの改革に取りくむ。そこで、三浦淳寛氏に監督就任を要請。クラブが目指すサッカーのアイデンティティーを守りながら、チームにとって必要不可欠な部分、守備やボールへの執着といった局面での厳しさの改革に着手した。新監督就任直後こそ、高いモチベーションでミッションを実行した選手たちだったが、連戦の疲れもあってか、ここ数試合は、結果には結びついていない。それでも若き指揮官は、前をむく。
「チームに染み付いた局面での甘さの部分は、なかなか変わらない。ただ目指すサッカーを実現するためにも、チャレンジし続けるしかない。」
 スター軍団をスター軍団たらしめている、根本の部分の改革に取り組んだヴィッセル神戸の挑戦。いつの日か、クラブが掲げる「ボールを支配しながら、攻守においてアグレッシブかつ魅力的なサッカー」が日常となる日を、この目で見てみたい。

MBSスポーツ局解説委員  宮前 徳弘

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