㊹「使命感」と「ぶれない心」

マニアックでメカニカルそしてMBS的なMなスポーツ

2020/09/23 12:19

 テニスのグランドスラム大会全米オープン。大坂なおみ選手は快進撃を続け、準決勝をフルセットの激闘でものにすると、元世界No.1アザレンカ選手との決勝では、先に1セットを奪われるものの逆転で栄冠を手にした。アスリートとして、一人の黒人女性として戦った大坂選手の「ぶれない心」と「使命感」にスポットをあてた宮前徳弘解説委員のスポーツコラム。

 「この大会用に、7枚の名前入りマスクを用意しました。決勝まで勝ち進めば、すべてを、見せることができます。」テニスのグランドスラム大会全米オープン。1回戦を突破した大坂なおみ選手は、インタビューでこう答えた。
 有言実行、大坂選手は快進撃を続ける。準決勝をフルセットの激闘でものにすると、元世界No.1アザレンカ選手との決勝では、先に1セットを奪われる状況から2セットを連取し逆転、栄冠を手にした。
 何が、彼女をそこまで、強くしたのか?勿論、2度のグランドスラム制覇の経験、コロナ中断期間の徹底したフィジカル強化がもたらしたショットの安定感も大きい。ただ、それ以上に際立っていたのが、メンタル面での充実だ。どんなに追い込まれた状況でも、常に冷静。目の前の1ポイントに集中して、逆境をはねかえしていった。「ぶれない心」が、彼女を支えていたのだ。
 テニスは、スポーツの中でも最も"心を削りあう"競技だ。長時間の試合の中、よほどの実力差がない限り、試合の流れは、両選手を行き来する。だからこそ、自分に自信を持ち続けるのが、何よりも重要なのだ。
 ならば、何が、大坂選手の「ぶれない心」を支えていたのか?今大会に限れば、アスリートとして、一人の黒人女性としての「使命感」が、彼女を支えていたに他ならない。名前の入ったマスクをつけて入場することで、「多くの人に、アメリカで起こった不幸を知ってほしい。もう一度、人種差別や暴力の問題考えてほしい」という想いが、彼女の大きなモチベーションになっていた。
 「使命感」は、アスリートを輝かせる。そう強く感じた、大坂なおみ選手3度目の戴冠だった。
(スポーツ局解説委員 宮前徳弘)

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook