㊸特別な「夏」 MBS 宮前 徳弘 解説委員

マニアックでメカニカルそしてMBS的なMなスポーツ

2020/09/10 15:35

「甲子園での初勝利を!」をスローガンに、チーム全員が日々、努力を積み重ねてきた北海道・帯広農業の前田康晴監督。「生徒たちが本当によく頑張ってくれた。彼らのあきらめない気持ちが、素晴らしい結果を呼び起こしてくれた。」十勝の公立高校の球児たちが、笑顔とともに残した快勝劇と高校野球の持つ魅力を解説。 

 8月16日、阪神甲子園球場。30度を超える猛暑の中、21世枠の代表校として4年ぶりの勝利を挙げた北海道・帯広農業の前田康晴監督は、こう切り出した。「生徒たちが本当によく頑張ってくれた。彼らのあきらめない気持ちが、素晴らしい結果を呼び起こしてくれた。」 
 相手は、昨秋の関東大会を制した群馬の健大高崎高校。圧倒的不利が予想される中、攻守に溌剌とした動きで、下馬評を覆したのだ。
 選抜大会がなくなったあと、コロナ禍の影響でチーム活動は自粛。5月20日に夏の甲子園大会の中止が発表されると、3年生の中には、引退を決意する選手も現れた。そんななか、「高校野球生活のピリオドをしっかり打とう」と部員たちを説得。生徒たちも、「今まで支えてくれた多くの人の思いにこたえるためにも、悔いのない毎日を」と、再び動き出したのだ。
 彼らに、交流試合開催の吉報が訪れたのは、6月10日。そこからは、「甲子園での初勝利を!」をスローガンに、チーム全員が日々、努力を積み重ねてきた。真夏の聖地で開かれた、たった1試合の夢舞台。「今日の一番の勝因は?」と聞かれた指揮官は、最後にこう答えた。
「選手たちの素直な心です。」
 十勝の公立高校の球児たちが、笑顔とともに残した快勝劇。高校野球の持つ力と、本当の意味を、あらためて感じた"夏の日"だった。

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