みなさん、おうどんって食べはりますか? 京都のおうどんはちょっとやわらこうて、お出汁がきいてて、ものすごおいしいんどすえ。でも、ほかのとこから来はった人は、注文するときに迷わはることがあるみたい。京都では当たり前や思うてたおうどんの名前が、よそではそうやないみたいなんどす。「つぶ乃」言うて、全然違う子が出てくるようなもんですわ。ちゅーわけで、今回は祇園の老舗に行かせてもろて、何個かおうどん注文させてもらいました。あなたも思うてるのと違うおうどんが出てくるかも、知れまへんえ。
■ つぶ乃
洛中の外れに生まれ育ち、京都を担う二次元タレントを目指して活動を開始。ホンネが見え隠れする毒っけの強い物言いで、京都の真実に斬り込んでいく予定。
祇園で知らん人はおらんお店へ来ましたえ!
普段、うちらがお世話になってる祇園にあるお店へ来てみました。それが「祇園おかる」さんどす。四条通から大和大路通をちょっと上がって、東へ入って、ちょっといったとこらへんにあるんどす。地元の人から観光客、舞妓さん、芸妓さん、芸人さん、歌舞伎の方と、ホンマにたくさんの人に愛されてるお店なんどすえ。
赤うて大っきい提灯が目印どす。日曜以外は夜中までやってはるから、飲んだあとにはココ! って人も多いんどすえ
お店の中はこんな感じで落ち着けるんどす。壁にはようけいろんな人の色紙が貼ってますんえ。
舞妓さんのうちわもこんな風にようけ飾られてます。うちのもあるかも知れまへんえ〜。
というわけで、おかるさんの四代目ご主人にいろいろお話を聞かせてもらいまひょ。うちらが知ってるうどんと、ほかのとこと名前が違うなんて、ホンマにそんなことあるんやろか?
こちらが今回いろいろと教えてくれはった、祇園おかる四代目ご主人の干場浩二さんどす。おいしそうなもん、作ってくれはりそうなお顔したはるわぁ。
刻み揚げ+ネギのあんかけ、それがたぬきどす!
そしたら、最初は「たぬき」からお聞きしまひょ。たぬき言うたら、うちらは刻んだお揚げさんとおネギのあんかけなんどすけど、間違ってますやろか?
「そうですね、そこにショウガも加えます」と四代目。
やっぱりそうどすな。でも、よそは違うんやろか?どうも調べてみたら、関東の方では揚げ玉をのせてるのがたぬきらしいんどす。
これこれ! 京都はこの刻んだお揚げさんとおねぎのあんかけがたぬきなんどす。
このとろんとしたあんが、寒い冬なんかにはたまらんのどす。ショウガと合わさって、よう温まりますんえ。
ほんで、大阪はお揚げさんがのったそばのことをたぬき言うんやて。なんで京都ではあんかけのこの形なんやろかて、四代目に聞いてみたら「きつね(揚げ)がドロンと化けるのと、あんかけのトロンがかかってるとか(笑)」って教えてくれはりましたわ。
甘きつねときつねの違いてわからはりますか?
次はこれどす。京都には「きつね」と「甘きつね」があるんどす。知ってはりました? 「京都以外のきつねは、大きなお揚げがのってますが、京都のきつねは揚げを刻んでることが多いですね。大きい揚げがのってるのは甘きつね。それも三角に切ってます」って四代目が教えてくれはりました。
これが京都の甘きつね。ほかのとこでいうきつねどすな。でもお揚げさんを切って、食べやすくしてくれてますんえ。
なんとおいしそうなお揚げさん! おかるさんは昔っから同じお豆腐屋さんから仕入れてはるんやって。四代目が「特別に厚めに揚げてもらってます」って言うてはったけど、このお揚げさんがお出汁を吸うて、ホンマにめちゃめちゃおいしいんどす!
しっぽくうどんも京都のはこんなんどすえ
次は「しっぽく」いきましょ。しっぽくいう名前自体、聞いたことない言わはる人もいはるかもしれまへんな。京都でしっぽく注文したら、こんなおうどんが出てきますんえ。
おかるさんのしっぽくはこんな感じどす。なんややっぱり上品な感じがするわ〜。
香川県でもしっぽくうどんいうの食べたことあるんどすけど、大根やらニンジン、椎茸やらを煮たのがおうどんの上にのってたように思いますわ。それと比べたら、京都のはまた全然違いますやろ。四代目に聞いてみたら、滋賀県にもしっぽくがあって、どちらか言うたら香川のに近いんやて。それが京都では違った形になってんのは、おもしろいし、不思議どすな。
京都のしっぽくには、かまぼこ、椎茸、厚焼き玉子がのってることが多いんやて。そんで、東京でいうところのおかめうどんと似てるって教えてもらいましてん。
ちなみに京都には、のっぺいっていうのもあるんどす。これは、しっぽくのあんかけバージョン。野菜を入れて炊いたお汁をのっぺい汁いうとこもありますけど、また全然違うもんなんどすな。名前の由来を聞いてみたら「あんかけがのっぺりとしてるからのっぺい......みたいなことを聞いたことがあるような」やって。
衣笠は丼もおうどんもあるんどすえ
ラストは「衣笠」。京都ではみんな知ってるメニューで、刻んだお揚げさんと青ネギを卵でとじてるんどす。はよ言うたら、たぬきの具材をあんかけやなく、卵とじにしたもんどすな。衣笠はおうどんも丼もあるんどすえ。
これが衣笠どす。今回は丼で作ってもらいましたんえ。しかし、これまた見るからにおいしそうどすな!
この衣笠の名前は、北区にある衣笠山にまつわるエピソードから来てるいうお話もありますんえ。「大阪では卵でとじたこの形をきつね丼って言うんですけど、京都では衣笠。京都できつね丼言うたら、卵でとじないんです」って四代目。でも、この衣笠のお揚げさんもそうやし、最初のたぬきもお揚げさんを刻んでますな。甘きつねも大きなお揚げさんを半分に切ってたし。なんか意味がありますんやろか?
いろんなお話を聞かせてくれはった四代目。お忙しいときに、ホンマにおおきに!
四代目に聞いてみたら、舞妓さんがおちょぼ口で食べやすいようにこんな形になったんとちゃいますか?って教えてくれはりました。
確かに京都のおうどんは、やわらこうて、長さもちょうどいい感じで、おちょぼ口でもツルツルって食べられますな。それがそのままお揚げさんも、大きな口開けんと食べられるようになったんやわ。なるほど、気がつかんかったけど、そういうわけやったんどすな。
もうひとつ、京都のおうどんて、ショウガを使こたあんかけが多いんどす。これも京都の冬が寒いこと、そんで出前しても伸びにくいからなんやて。ちゃーんと理由があるんどすなぁ。
というわけで、今回は京都のおうどんのお名前についてお勉強しました。関東と違ういうんはなんとなくわかるんやけど、大阪とも全然違ったりするんわ、ホンマにおもしろいわ〜。
今回、いただいたおかるさんのおうどんは、カツオやらウルメやら香深産昆布やら使こたお出汁に、やさしいおうどんが合わさった、たまらんおいしさどした。みなさんも京都に来はったら、いろんなおうどん注文してみておくれやす!
■京都祇園おかる
京都市東山区祇園富永町132
075-541-1001
営業時間 11:00〜15:00、17:00〜翌2:30(金曜、土曜〜翌3:00、日曜は昼営業のみ)
休み なし
きょうとの人しか知らんこと その10
うどんには京都ならではの呼び方があるんどす、それは長く親しまれ、愛されていることの証明なんどすえ