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救済制度の審査に『1年半待ち』ワクチン後遺症訴える患者「症状の苦しみ」と「医療費」の負担「推奨した責任として患者に寄り添うのは最低限取るべき姿なのでは」

2024年02月07日(水)放送

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 新型コロナウイルスのワクチンは、これまでのべ4億3500万回の接種が行われてきた(首相官邸HPより)。そんな中、ワクチン後遺症を訴える女性を取材した。症状の苦しみだけでなく医療費の負担が大きく、国の救済制度を申請するも、国の処理が追いついておらず、救済措置を受けるまでに長い期間を要する現状に直面している。

5回目のワクチン接種後に異変「杖を使っても40mしか歩けない」

 去年12月、奈良市の近鉄大和西大寺駅で車いすの女性がマイクを握っていた。

 (街頭で話す倉田麻比子さん)「すがる思いで病院に行っても『ワクチンとは関係ない』と言われて取り合ってもらえない。国は今なお安心安全をうたいコロナワクチンの接種を推し進めようとしていますが、接種後に健康被害に遭っても国は速やかな救済や補償はしません」

 倉田麻比子さん(42)。新型コロナワクチンを接種して以降、下半身に力が入らなくなり、自由に歩くことができなくなった。

 奈良県内で夫と娘2人と暮らす倉田さん。去年1月、5回目のワクチン接種直後に激しい頭痛や高熱に襲われ、その後に異変が起きたという。

 (倉田麻比子さん)「2023年1月13日に接種してから1月20日に自分で立てなくなって、自分では40mくらいしか杖を使っても歩けないという状態ですね。あとはけん怠感がすごく強いのと、頭痛もありますし、めまいもあります」

 今は家の中を壁伝いに歩くのがやっとだ。手にも力が入らないためペットボトルのキャップを開けることもできない。
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 出産を経て34歳で看護師になった倉田さん。病院での勤務のためワクチン接種をしていたという。
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 5回目の接種の2か月前に夫の剛史さんが撮影した動画では、手足を大きく使ってボルダリングを楽しむ様子が確認できる。
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 症状は改善することなく仕事を休まざるを得なくなった。その姿を一番近くで見てきた夫はこう話す。

 (夫 剛史さん)「(接種直後は)2~3歩ほど歩いて手すりにもたれかかって息をつきながら、そしてまた2~3歩歩いて、この繰り返しをずっとやっているんですよ。悪くなる一方だから、これはもう最悪な状態やわ、と思っていました」

精密検査を受けるも“ワクチンとの因果関係”を認められず

 これはワクチン接種による後遺症ではないか。原因を調べるため県内の病院に入院して精密検査を受けた。しかし結果は。

 『四肢筋力低下や感覚障害を呈する客観的な異常所見は認めませんでした。関連性の証明は困難』

 その後、県内の別の複数の病院でも体調不良とワクチンの因果関係が認められなかったうえ、治療法もないとされた。

国の救済制度を申請 審査までにかかる期間は1年半以上

 新型コロナに限らずワクチンの後遺症については「予防接種健康被害救済制度」というものがある。自治体を通して申請する制度で、国に救済の対象と認められれば医療費や障害年金などが給付される。倉田さんは勤務していた病院でこの制度を知り、すぐに申請しようとしたという。
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 しかし申請にはカルテや受診証明書などさまざまな書類の提出が必要で、接種後の体調不良が続く中、受診した10か所以上の医療機関すべてを回らねばならなかった。

 (倉田麻比子さん)「700枚はあると思います。費用も時間も体力も要りますので本当にしんどいときはできないと思います」

 これだけの書類を集めるのに約3万円の費用も負担した。そして去年3月、ようやく自治体に申請したのだが…。

 (倉田麻比子さん 去年12月)「私の審査が回ってくるのが、今年じゃないです、2024年の年末か2025年の年始と言われました」

 申請件数の多さなどを理由に審査まで1年半以上かかるという。倉田さんが後遺症患者として被害者救済を受けられる見通しは未だ立っていない。
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 (倉田麻比子さん)「生活が不安定になることへの不安もありますし、働けないだけでなく誰かの手を借りないと生きられない状況なので、それを子どもに押し付けてしまう部分もありますので、そこに対しての申し訳なさはすごく感じます」

「救済されず生活がおびやかされ、安心して治療できる日々も過ごせない」

 救済措置を受けられていないのは倉田さんだけではない。去年7月、新型コロナのワクチン接種後の健康被害を訴える患者らが迅速な救済の実現を求めて会見を開いた。

 (新型コロナワクチン後遺症患者の会 木村代表)「(救済の申請を)市に提出してから国に上がるまでに5か月もかかっておりました。申請準備にも申請してから国に到達するまでにも時間を要するうえ、厚労省が発表している受理件数はあくまでも国に到達した件数です。今も健康被害に苦しむ患者は救済されず生活がおびやかされていて、安心して治療できる日々も過ごせないということをぜひ知ってください」

 厚生労働省によると、今年1月末までに予防接種健康被害救済制度に申請した人の数は、国が把握しているだけでも約1万人。そのうち3000人ほどがいまだ審査されていないという。

救済に時間を要するのはなぜ? 関係者が明かす内情

 救済をより迅速化することはできないのだろうか。厚労省に取材を申し込むと文書でこう回答があった。

 【厚生労働省・予防接種課】「予防接種健康被害救済制度は、市町村に申請され、都道府県経由で国に進達されます。国に進達されるに当たっては、まず、申請を受け付ける市町村が設置している予防接種健康被害調査委員会において、審査に係る資料収集等の調査を行うこととされており、当該調査に要する期間は各市町村によって異なること等から、『申請から進達までの期間』のお答えは困難です。その上で、国への進達以後の期間をお答えすると、国へ進達されてから審査を経て認定されるまでの期間は、通常、半年から1年程度の期間を要しています。進達があったものについては、個々の事例ごとに専門家による審査が行われますが、その審査に当たっては、医学的・科学的知見を踏まえた上で、予防接種と健康被害との因果関係について審査を行う必要があり、申請者や医療機関等から提出された診療録等の資料・情報を詳細に確認する必要があることから、一定の時間を要しております。新型コロナワクチン接種後の健康被害については、予防接種法に基づく健康被害救済を迅速かつ適切に実施することが重要であることから、・審査会の開催頻度の増加・審査会の増設・事務局機能の増強、などの取組を行っており、引き続き、迅速な救済に取り組んでまいります」
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 厚労省のワクチン分科会で後遺症の認定などに携わる東京医科歯科大学の森尾友宏教授は内情をこう明かす。

 (森尾友宏教授)「2022年10月~12月の3か月と直近の3か月を比べると、約4倍の量の申請に対応できるような体制になっています。審査会・分科会の数を増やし、事務方の数を増やし、会議の頻度を増やして、必ず審査をお待たせしない状況で対応できるようになる」

「推奨した責任として患者に寄り添うのは最低限取るべき姿なのでは」

 倉田さんは今、奈良県内の自宅から1時間以上かけて大阪市内のクリニックに通っている。保険適用の治療では効果が上がらず、100%自費での診療を余儀なくされている。救済制度による手当がないため、経済的な負担が大きい。

 (夫 剛史さん)「9660円になりますね」
 (倉田麻比子さん)「たぶん安いほうです。正直、うちは中学生高校生の子どもが2人いるので、私にお金をかけるべきなのか娘にかけるべきなのか、すごく迷っているところで」
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 リハビリにも通っているが、1年間の車いす生活で筋力が落ち続けているため、状況は思わしくないという。救済の対象となる保証がない中、それでも患者としての人生は続く。

 (倉田麻比子さん)「ワクチンはきっと効力があるものだから国が推奨していると思うので、その是非についてどうこう言う立場でもありません。でも一定数こういう(症状の)方が出るものだったら、やはり推奨した(国の)責任として患者に寄り添う、見て見ぬフリをしないというのは、最低限取るべき姿なのではないかなとは思います」

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