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大阪市ワクチン配送の『多重下請け疑惑』を追う 下請け会社のマニュアル入手...ドライバーも直撃取材 市の担当者は「運送業界の慣例であり...」

2022年02月02日(水)放送

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大阪市のワクチン配送、その根幹を担う配送ドライバーたちが“多重下請け”である可能性があることがMBSの取材でわかった。大阪市は、ワクチン配送を大手運送会社に業務委託しているが、多重下請けは認めていない。元ドライバーは取材に対して「一般の求人広告に応募したらワクチンの配送だった」などと証言している。命に関わるワクチンの配送は一体どうなっているのか。

求人には“医薬品を運ぶ仕事”元配送ドライバーの証言

1月24日、大阪市内の病院では、高齢者への3回目のワクチン接種が始まっていた。第6波を受けて1か月前倒しでの実施。再びワクチンの需要が高まっている。
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そんな中、ワクチンの配送を担っていた元ドライバーがある実態を証言した。

(ワクチンの元配送ドライバー 鈴木さん(仮名))
「名目は医療品を各病院に配送する簡単な仕事だと。点滴パックとかそういうものを病院とかに運ぶのかなと思って、そういう感覚でいました」
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鈴木さんは去年夏ごろ、大手求人サイトに掲載されていたこの仕事に応募した。
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求人には仕事内容として次のようなことが書かれていた。

(鈴木さんが応募した求人に書かれていた内容)
「医薬品配送のお仕事です」
「重たい荷物はなく1日最大8件の配送です」

募集していた会社はE運送で、日当は1万1000円。医薬品を運ぶ仕事で『ワクチン』とは書かれていなかった。鈴木さんが面接に行くと…。

(ワクチンの元配送ドライバー 鈴木さん(仮名))
「一応ワクチンですよと。そうなんですかと言って。『ワクチンとは書けないんですよ』と言っていた」

業務の内容は大阪市の新型コロナウイルスワクチンの配送だった。なぜ求人にワクチンと書けないのか?
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大阪市はワクチンの保管・配送業務をA社に業務委託している。市によると、契約時に、A社のグループ会社であるB社に再委託することは認めているという。ただ、そこから下の再々委託、いわゆる孫請けなどは認めていない。しかし…。
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(ワクチンの元配送ドライバー 鈴木さん(仮名))
「大阪市ワクチンセンターに関しては、末端で配送業務を担っている人間にB社の人はいませんでした。会社名○○運送だとか、そういうものを車につけている人がいたんですけれど、それはワクチン配送の時はすべて隠してくれと言われた」

マニュアルに記載された配送の実態

取材班が入手した「大阪市ワクチン配送マニュアル」と書かれた資料がある。再委託先のB社とは別のC社が作成したとみられる。

(マニュアルに書かれた内容)
「ドライバー様が配達する物は新型コロナウイルスのワクチンです」
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マニュアルには保管場所のワクチンセンターから病院に配送するまでの流れが詳細に記されている。しかし、こんな記載があった。

(マニュアルに書かれた内容)
「B社のベストを車内にしまう」
「B社のロゴが見えないように」
「事故が起きたとき、警察の事情聴取では『ワクチン配送中』とは言わずに『貨物配送中』にて回答する」

(ワクチンの元配送ドライバー 鈴木さん(仮名))
「病院に到着して病院にワクチンを届ける時以外は(B社のベストを)着てはダメという規定なので。(Q配送中は?)絶対着てはダメ。マスコミ対策だと思うんですけれど、それにはすごく目を光らせていたので」

鈴木さんによると、ワクチン配送の実態はこうだ。大阪市との契約では、大手運送会社B社が業務を再委託されている。その下に再々委託することは原則認められていない。しかし、マニュアルを作っていたC社などが請け負い、実際にワクチンを運んでいたのは3次請け4次請けの運送会社とみられている。
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鈴木さんの業務契約書には、C社からD急配に委託したことになっている。D急配は3次請けとみられる。しかし、まだ続く。鈴木さんはE運送の募集に応募していたため、D急配からさらにE運送へ4次請けになっていたとみられている。

(ワクチンの元配送ドライバー 鈴木さん(仮名))
「明日から来なくていいと言われたらもう来なくていい。その恐怖は常にあったんじゃないですかね」
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大阪市は委託先のA社に通常配送1台当たり1日3万4000円を支払っているが、4次請けの元ドライバーである鈴木さんの日当は1万1000円だったという。

(ワクチンの元配送ドライバー 鈴木さん(仮名))
「ガソリン代・高速代、すべて給料(1万1000円)に入っているし。残業とかがあっても普通の雇用では考えられないような残業料金。結局みんな生活がかかっているので、もうそういうことは言わないっていうのが普通ですね」

ドライバーや運送会社ら「答えられない」

大阪市におけるワクチン配送は一体どうなっているのか。1月25日、取材班は、ワクチン配送のドライバーたちが集まるという大阪市内の駐車場にいた。次々と軽乗用車が集まってきた。ほどなくして車列は出発。

(記者リポート)
「車がどんどんセンターに入っていきます」

大阪市内のワクチンセンターでワクチンを受け取った後、それぞれが病院へと運んでいく。
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よく見ると、社名を隠しているのか、車の背面にはビニールテープのようなものが貼られている。ドライバーたちを確認すると、やはりB社のベストは着ていない。そして病院に到着すると…。
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(記者リポート)
「車から黒い服を着たドライバーが出てきました。手にはB社のジャケットでしょうか。持っています」
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おそらくこの男性もB社のドライバーではないが、病院に到着するとB社のベストを着て、中へと入っていった。まさにマニュアル通りだ。

一体、どういう契約になっているのか。ドライバーに直接話を聞いた。

   (記者)「今何をされているんですか?」
(ドライバー)「(取材を)受けたらダメだと言われていますので」
   (記者)「答えられないですか?B社と大阪市の契約ではB社からさらなる委託は契約違反になっているが、そういった認識はありますか?」
(ドライバー)「お答えできません」

何も答えてはもらえなかった。
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一方、別のドライバーにも同じように直接話を聞くと…。

   (記者)「B社ではないところから指示を受けたり指導を受けたりしている?」
(ドライバー)「B社の方に聞いてもらえたら。私としては何もお答えすることはできないので」
   (記者)「B社の社員であればすぐに確認すればわかるのでは?」
(ドライバー)「B社の方にご確認いただいたらわかるかと」
   (記者)「それはB社の社員ではないから?」
(ドライバー)「僕自身にそういう権限はまったくない」
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ワクチン配送業務を“多重下請け”されている疑い。取材班は、大手運送会社のB社や、C社・D急配・E運送など、全社に見解を求めたが「守秘義務のため答えられない」などと回答された。

大阪市“運送業界の慣例で再々委託には当たらないと思っていた”

大阪市はこうした実態を把握しているのか。取材を申し込むと書面で回答があった。

(大阪市保健所の回答)
「B社や配送協力会社の存在は認識しておりましたが、再々委託にはあたらないと受注者から報告を受けていたところです」

大阪市保健所の担当者は取材に対して「4次請けまでは把握しているが、運送業界の慣例であり、それは再々委託にはあたらないと思っていた。現在、契約上問題がないか調査している」などと話した。
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グループ会社でもないのに、B社からC社などへの委託は「業務委託には当たらない」とする大阪市の見解に問題はないのか。元厚生労働省職員で神戸学院大学の中野雅至教授は次のように指摘する。

(神戸学院大学 中野雅至教授)
「取材の過程で言えば、実態は明らかに委託が行われているんだろうと思います。大阪市の苦しい言い訳の中でもそういう下請け構造があるという前提で契約していると。(Q再々委託ではなく、この業界なら仕方がない?)明らかに詭弁で、法律用語の委託とか再委託というものを『業界によって解釈が異なります』なんて聞いたことがありません」

ワクチン配送で行われている多重下請け。末端を担うドライバーの中には、突然首を切られたり、不安定な状況下で仕事をしている人もいる。ワクチンは本当に適正に管理されているのだろうか。

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