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異変!育てたはずの『養殖海苔』が消えてなくなる...原因は「黒い群れ」と「大型船」か

コダワリ

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兵庫県ではさまざまな海の幸がとれます。その中で今回取り上げるのは「海苔」です。日本人の食卓には欠かせない「海苔」ですが、養殖の現場で収穫間際なのに「海苔」が消えてなくなるという異変が起きているといいます。一体何が起きているのでしょうか。

育てた『海苔』が“消えてなくなる”

12月13日、神戸市須磨区の水産工場「すまうら水産」で作られていたのは海苔。シーズンの最初に収穫される海苔は“一番摘み”と呼ばれていて、風味が豊かなため、価格も通常の倍以上になります。かじればパリっとした良い音がします。
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ところが今、この海苔に異変が起きているといいます。須磨の海で海苔の養殖業を営む森本明さん(58)。父親と同じ仕事を選び、今ではこの道36年のベテランです。

(海苔養殖業 森本明さん)
「黒くておいしい海苔を作れたときのうれしさ、『おいしい』と言っていただける喜び、そのためにやっている感じですね。ずっと人生を一緒に歩んできていますからね、海苔とともに」
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森本さんによりますと、数年前から網で育っていたはずの海苔が消えてなくなることが増えたといいます。

(海苔養殖業 森本明さん)
「少し伸びてきて『摘み取ろうかな、明日、明後日くらいどうかな』という時に。ショックですよね」
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兵庫県は「海苔の産地」として知られていて、全国シェアは約2割に上ります。
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海面近くに網を張ると、わずか10日ほどで網を覆うように海苔が育ちます。
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明石海峡という潮の流れが速い環境で育つため、形が崩れにくい色の黒い海苔になるといいます。こうして冬から春にかけて海苔が育っては収穫、育っては収穫を繰り返していくのです。
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ところが同じ網でも大きな差が出ていました。

(海苔養殖業 森本明さん)
「明らかに違うでしょ、海苔があるところないところ。これがやっぱり食害かなと。全然ない」

手塩にかけて育て、やっと「一番摘み」が収穫できると思った矢先の出来事でした。

海苔をガブリ…原因は『クロダイ』による食害

一体なぜ海苔はなくなってしまったのか。

調査に乗り出した兵庫県水産技術センターが水中にカメラを設置したところ、海苔の下に黒い群れの姿が撮影されていました。
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そして、魚が海苔にガブリ。さらに別の魚の口からは海苔がはみ出ています。どうやら群れで海苔を貪っているようです。
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この魚の正体は「クロダイ」。西日本では「チヌ」とも呼ばれます。
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(海苔養殖業 森本明さん)
「5cmから10cmくらい伸びた芽をチヌ(クロダイ)とかに食べられちゃって。本当に新海苔しか食べないように思います」
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近年、瀬戸内海では窒素やリンといった栄養素が不足していて、かつての4分の3ほどの収穫量になっているといいます。その上、クロダイに食べられてしまっては、弱り目にたたり目です。

(海苔養殖業 森本明さん)
「チヌ(クロダイ)も生きていかないといけないから海苔を食べるけど、やっぱり僕らも大事な海苔なのでね」

研究員が“魚の腹部に発信機埋め込み”追跡調査

ただ、本来クロダイは海苔ではなく、貝やカニを食べる魚です。なぜ、海苔を食べるようになったのかなど生態には謎が多く、水産技術センターは少しでも被害を減らすためにクロダイの追跡調査を始めています。
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しぶきを撒き散らすほど元気いっぱいのクロダイですが、研究員が麻酔をかけるとおとなしくなりました。

(研究員)
「おなかの真ん中から少しそれた横のあたりに入れていきます」

メスで腹部を割いて長さ3cmほどの小型の発信機を埋め込み、その後はしっかりと針と糸で縫い合わせていきます。まるで手術をしているかのようです。
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こうして発信機を埋め込んだクロダイが放流されました。海苔の食害を防ぐ糸口は見つかるのか今後に期待です。

淡路島では“大型船”により養殖網が破損か

一方、対岸の淡路島でも“ある問題”が発生していました。
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室津浦漁協の漣忍さん(56)。同じく海苔の養殖を営んでいますが、12月2日、網をくくりつけるロープが引きちぎられているのが見つかりました。

(海苔養殖業 漣忍さん)
「これがロープで、こんなちぎれて。切ったのではなくてぐっと引っ張られて。見たときは今年の養殖は諦めたけどな、一回」

漣さんは『原因はこの海域を航行していた船ではないか』といいます。
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神戸海上保安部も動き出しました。室津浦漁協提供の映像を見てみると、本来なら映像の中央部にはブイが並んでいるはずですが、ロープが引きちぎられたことでブイがなくなってしまっています。この時、淡路島沿岸の5か所の養殖場が同じような被害を受けました。
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神戸海上保安部は、かなり大きな船が通った可能性があるとして捜査をしていますが、詳しい原因はまだ分かっていません。
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網を設置する直前での出来事で海苔自体はまだありませんでしたが、養殖の開始が遅れることで今シーズンの収穫量が減ることは確実です。

(海苔養殖業 漣忍さん)
「(Q海苔は年間の収入のどれくらい?)もう8割9割と言っていいほどちゃいますかね。今までは泣き寝入り。漁師やったらやられ損みたいな感じやったけど。ほんまにもう漁師の人も辛抱しきれないようになってきているからね。『やられ損では済まさんぞ』という感じで、みんな毎日仕事に従事していますわ」

海上保安部がパトロール

兵庫県の沿岸部などでは、昨シーズンにも13隻の船が海苔の養殖場に突っ込む事故が起きていて、神戸海上保安部は対策に乗り出しました。少しでも被害を減らそうと船に直接呼びかけるなどしてパトロールを行っています。
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(船に注意を呼び掛ける神戸海上保安部員)
「海上保安庁です、聞こえますか。今、海苔の養殖施設の乗り上げ防止の安全指導を行っております」

当たり前に食卓に並んできた海苔。冬の海の恵みが今、困難に直面しています。

2021年12月20日(月)現在の情報です

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