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緊急事態宣言を『前倒し解除』した大阪の吉村知事 当時の経緯を振り返る

コダワリ

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今年1月、大阪に出された2回目となる緊急事態宣言。これに対して大阪府の吉村洋文知事は、当初の予定より前倒しとなる“2月末での解除”を要請。そして緊急事態宣言は解除されましたが、そのわずか1か月後には“まん延防止等重点措置”が取られる事態となりました。前倒しでの解除要請という大きな判断を下したとき、吉村知事の頭には何がよぎっていたのでしょうか。

緊急事態宣言の解除基準を作った吉村知事 「前のめり」との指摘も

今年1月13日、大阪など7府県に出された緊急事態宣言。すると、吉村知事は2月1日の対策会議で急遽、緊急事態宣言の“独自の解除基準”を作ると表明。専門家会議の医療関係者らも対策会議のわずか数時間前に意見を求められたばかりでした。

(大阪府 吉村洋文知事)
「府民の皆さんへのわかりやすい解除基準としては、端数をとって300人とみるか、300人以下をある一定の期間継続するような状況になれば安定的にステージ4の数字を脱却していることになると思う」

解除基準として吉村知事は以下のように提案しました。
▼新規感染者数の1週間平均が300人以下
“または”
▼重症病床使用率60%未満
→このどちらかが7日間続くこと

これに対して大阪府の現場や専門家は、“または”でなく“かつ”として、基準を2つとも満たすことを求めます。吉村知事は「責任を負うのは専門家でなく府」と政治判断で基準を決めました。現場からは専門家の意見を聞くようにと条件を付けるのが精いっぱいでした。

(大阪府の担当者)
「少なくとも専門家の意見を聞いて、許可してもらうとか、そういう手順が必要ではないか」

記者に対しても…。

(大阪府 吉村洋文知事)
「(重症病床使用率が)60%未満になっていないとしても、新規陽性者数が一定程度減少しているのであれば、解除要請はします。緊急事態宣言はより限定的であるべきではないかという考え方からです」

解除基準について『前のめり』とも指摘された吉村知事の判断。その背景には何があったのでしょうか。大阪府の関係者は「経営危機となる事業者からの悲痛な声も多く、知事は経済活動を早く再開させたいという思いが強い」と話しています。

「意思は伝えるが判断するのは国」慎重になった知事の発言

今年2月23日、吉村知事は緊急事態宣言の“1週間前倒しの解除”を要請しました。しかし、このときの知事は解除に非常に慎重で1か月前の歯切れの良さはありませんでした。

(大阪府 吉村洋文知事)
「3月中旬・下旬・4月上旬、ここは卒業式・入学式・入社式それに伴う飲食、それに対しての問題意識について我々も提案しました。国も受け止められたと思います。(宣言の解除について)あとはどうされるかはちょっとまだわかりません」

知事は「意思は伝えるが判断するのは国」と決定を委ね、国は3月7日が期限のところを1週間早めて2月末で解除しました。そして4月1日、解除からわずか1か月で「まん延防止等重点措置」に戻ることになったのです。

大阪府の現場トップは4月1日に単独取材に応じて、当時の知事判断について次のように話しました。

(大阪府健康医療部 藤井睦子部長)
「東京より早く解除したからリバウンドが起こったのではないかというご意見に対しては、その時点での大阪の感染状況を踏まえた判断であったと思います」

「全国で最初にやりたかっただけ」民間企業から見る吉村知事

一方、民間から見える知事の姿は?新型コロナウイルスの影響を受けているバスやタクシーの業者は吉村知事が前倒しで要請した判断について。

(日本城タクシー 坂本篤紀社長)
「全国で最初にやりたかっただけちゃうかな。今回のまん延防止等重点措置もそうちゃう。全国で最初にやりたいだけで、根拠が何にもない。最初の頃は国が数字を示さないから大阪モデルなんだと言っていたが、いつの間にか言わなくなった」

観光業の先行きが見えない中、雇用を守るために社長が新たに目をつけたのは、お祭りでおなじみのベビーカステラでした。

(日本城タクシー 坂本篤紀社長)
「もう8時以降営業やったらあかんねやから、8時までで勝負できる商売をせんと。今はガレージで練習して、焼けるようになったら、店も何個か候補があるので絞り込んで本格的に売ろうかなと」

感染症対策と社会経済活動の両立、大阪の願いを叶えるためにはどうしたらいいのでしょうか。

(4月2日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『コダワリ』より)

2021年04月05日(月)現在の情報です

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