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東京五輪のホストタウンは今 「事前合宿」中止相次ぐ...準備進めてきた現場は

コダワリ

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東京オリンピック・パラリンピックの『事前合宿』の中止が相次いでいます。国際大会では通常、代表選手らは事前に現地入りし、本番に向けてコンディションを整える事前合宿を行いますが、今回の東京大会では新型コロナウイルスの影響で自治体が受け入れを断念したり、相手国から事前合宿自体の見送りが通知されたりしています。大阪府では、ロシアのバレーボールチームを受け入れる池田市、アルゼンチンのブラインドサッカーチームを受け入れる堺市など、ホストタウン8か所が事前合宿の実施を予定しています。それぞれ受け入れ状況に変化は出ているのでしょうか、取材班が調べました。

悩む自治体関係者

3月25日に始まった東京オリンピックの聖火リレー。順調に聖なる火がつながれていく一方、先行き不透明なのが代表選手らが大会前に現地入りする事前合宿です。大阪府泉佐野市は友好都市がある関係でモンゴルのマラソン選手とウガンダの陸上選手を「ホストタウン」として受け入れることになっていますが…。

(泉佐野市ホストタウン担当 高垣秀夫参事)
「(モンゴル代表は)本来2月~3月に合宿に来る予定だったのですが、新型コロナウイルスの関係で入国できない状況ですので。ウガンダに関しては最終的には選手・関係者で35人ほど来ると聞いているのですが、今時点で予選通過が決まってこちらに来られるのが2人ということなので。出場種目や人数が確定していない中で準備するのも難しいところがある。」
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両国ともに大会直前に1か月ほどの合宿を予定していますが、新型コロナウイルスが収束しない中、本当に事前合宿を行えるのか見通しが立っていない状況です。特にモンゴルの選手は、去年の延期決定前に来日合宿を行っていて、地元の子どもたちとの交流も始まっていただけに、担当者も困惑しています。

(泉佐野市ホストタウン担当 高垣秀夫参事)
「モンゴルの選手であれば一緒に走っていただくなどイベントも考えていたんですけれども、なかなか今そういう状況ではないので。」
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受け入れ先のホテルも頭を抱えています。選手のコンディションを整えるため、工夫を凝らしたメニューを考えるなど準備を進めてきましたが。

(ホテルニューユタカ 辻野依理子副支配人)
「6月の初めごろにモンゴル選手団の方とウガンダ選手団の方が仮予約という形です。まだ未定なので、初め頃とお伺いしていますけれども、もしかするともっと後になるかもしれないですし、もしかするとなくなってしまうかもしれない感じですね。」

受け入れ断念した自治体も

こうした中、事前合宿の受け入れを断念せざるを得ない自治体もあります。大阪府貝塚市は、台湾の卓球選手を受け入れる予定でしたが、感染対策の徹底が困難と判断しました。

(貝塚市政策推進課 河野雅子参事)
「無理してホストタウンにお越しいただいて何かリスクを与えるようなことになってはいけないというところが懸念材料ではありますので、スケジュール的な問題も含めて今回は事前合宿は断念せざるを得ないのかなと。」
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取材班が事前合宿をする予定だった大阪府内のホストタウン8か所に取材したところ、以下のように判断が分かれました。

  「予定通り実施する」=池田市・茨木市・堺市
「一部変更または検討中」=大阪市・大東市・泉佐野市
「受入れを中止する方針」=守口市・貝塚市

受け入れ準備進める自治体も

ところ変わって兵庫県姫路市。ここではフランスの柔道チームを受け入れることになっています。実は姫路市は、フランスに柔道を広めた川石酒造之助という柔道家の出身地である上、国内最大級の規模を誇る県立武道館も有しているのです。

新型コロナウイルスの感染拡大前には何度も足を運んできたフランスの関係者らと、現在はオンラインでやりとりをして、受け入れマニュアルの作成など着々と準備を進めています。
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(姫路市スポーツ振興室 宮崎奈津子課長補佐)
「(五輪が)延期になってすぐに連絡がありましてね。『延期になったとしても受け入れてくれるよね』と。お互いの信頼関係が徐々にできていると思いました。」
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本来なら地元の柔道チームと一緒に練習するなど交流の場を設ける予定でしたが、感染防止のためそれも難しく、せめて市民に練習風景だけでも公開できないか模索中だといいます。

さらに今年7月には、フランスを身近に感じてもらおうと、ジュニアオーケストラが市民にフランス音楽を届けるコンサートの開催も決まっていて、代表選手らも招待する予定です。

(姫路市ジュニアオーケストラ 山本真優さん(10))
「びっくりして、すごかったなと思ってもらえたらいいなと思います。(Qコロナもぶっ飛ぶかな?)ちょっとはぶっ飛ぶと思います。」

事前合宿のため設備を整えてきた民間団体

一方、滋賀県大津市では、自治体ではなく民間団体が中心となって事前合宿を準備していました。琵琶湖近くのボートクラブ「瀬田漕艇倶楽部」。大会直前の約1週間、ニュージーランドのボート選手団が事前合宿で利用する予定です。
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選手団を誘致したのはボートの元日本代表選手・杉藤洋志さん(52)です。杉藤さんは選手時代に知り合ったニュージーランドの大学ボート連盟の代表から「東京オリンピックに向けて合宿の候補地を探してほしい」と頼まれました。

(NPO法人・瀬田漕艇倶楽部 杉藤洋志コーチ)
「(ニュージーランドは)世界一のチームだと思っているので、世界一のチームから『ここでやりたい』『なんとかしてくれ』と言われたらやるしかないと。いろんな方が協力してくださって、どうにかここまできた。」
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杉藤さんは自治体や漁業関係者と交渉し、これまでは1000mコースしかなかった琵琶湖に国際基準である2000mコースを設置。2019年、ニュージーランドのジュニアチームを招き事前合宿をするなど、代表選手団の受け入れに向けて準備を進めてきました。

この日はニュージーランドチームの遠征責任者とオンラインで打ち合わせです。

(NPO法人・瀬田漕艇倶楽部 杉藤洋志コーチ)
「政府がまだ五輪に関する正確な方針を発表していない。(感染対策に関する規制が)とても厳しい大会になるだろうとは話している。」
(ニュージーランドボートチーム連帯責任者 リサ・ホルトンさん)
「私たちのチームが出国前にワクチンを接種すべきであることは確認していて、渡航する前に接種することにしているわ。」
(NPO法人・瀬田漕艇倶楽部 杉藤洋志コーチ)
「じゃあ、最後の資格(条件)の準備をしているところなんだね。」
(ニュージーランドボートチーム連帯責任者 リサ・ホルトンさん)
「はい。」

感染対策で選手団はホテルからほとんど出られないため、杉藤さんは近隣大学のボート部の学生らに買い出しなどの合宿運営を手伝ってもらうことにしました。

(京都大学ボート部 栽松映里さん)
「せっかく五輪に出られるニュージーランド代表の選手がいらっしゃって間近で見られる機会なので、ぜひこの機会に見て刺激を受けたい。」

事前合宿は行えるのか、そもそも大会自体が本当に開催されるのか。不安は尽きませんが、杉藤さんは、次の世代に世界の一流選手との交流を通してレベルアップしてもらいたいと考えています。
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(NPO法人・瀬田漕艇倶楽部 杉藤洋志コーチ)
「私自身がいろんな海外のトップの選手たちと戦うだけではなく陸で交流するところからたくさん学ばせてもらって、それが自分の財産になっていると思っているので、その片鱗だけでも若い選手たちが経験してくれたらなと。」

(3月30日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『コダワリ』より)

2021年03月31日(水)現在の情報です

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