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『巨大地震注意』発表の今"私たちがすべきこと"とは 「慌てて何かをするのではなく...」南海トラフ地震の評価検討会・平田会長の見解

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 8月8日午後、2019年の運用開始以来初の発表となったのが「南海トラフ地震臨時情報」です。「臨時情報」とは何か。南海トラフ地震の発生確率が普段より高まったかどうか調査を始める時に発表されるのが「臨時情報(調査中)」です。そして、気象庁での「評価検討会」で南海トラフ地震につながる可能性があると判断されれば、「臨時情報(巨大地震注意)」、「臨時情報(巨大地震警戒)」を発表する仕組みです。 そして今回、8日午後4時42分に発生した日向灘を震源とする地震により、南海トラフ地震臨時情報(調査中)が発表。その後、地震のモーメントマグニチュードが7.0と推定されたことから、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。 「巨大地震注意」が発表された今、私たちがすべきこととは―。南海トラフ地震の評価検討会の会長を務める平田直・東京大学名誉教授に今年5月、臨時情報についてインタビュー取材していました。

「臨時情報」が出たら南海トラフ地震が起きるのか?それとも・・・

 臨時情報の仕組みがあるということは、臨時情報が発表されていない時は南海トラフ地震の発生確率は低いのか?

 平田氏は「臨時情報が出るまでは南海トラフ巨大地震は起きないんじゃないか、という期待を込めているかもしれませんが、それは誤解です。現在の地震学の実力では、地震が起きる前にいつ地震が起きるかを予測することはできません」と明言しました。

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 南海トラフ地震の発生確率が普段より高まった時に発表されるのが臨時情報ですが、臨時情報が発表されたからといって巨大地震の発生が確実視されるわけではないのです。

『巨大地震注意』では「日頃からの地震の備えの再確認を」

 臨時情報(巨大地震注意)の発表を受けて、私たちはどうすればいいのでしょうか。国は「1週間程度、日頃からの地震への備えを再確認」を求めています。

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 平田氏は「『巨大地震注意』が発表されたからといって慌てて何かをするのではなく、普段後回しにしてできていないことなどをするのが大事」だといいます。具体的には、▼最低限度の水の確保▼常備薬が必要な人は可能であれば少し多めにもらっておくこと▼日常生活に医療機器が必要な人は予備の電池を用意しておくことなどを挙げました。

ハザードマップを見て“どういう経路で”逃げるのかシミュレーションを

 また、市町村が発行している地震や津波のハザードマップを見て、いざという時の避難場所を確認しておくことが大切です。平田氏は、“どういう経路で”逃げるのかをシミュレーションしておくことも大切だといいます。

 つまり、「最短経路がもし通れない場合はどうするのか」「家にいない時はどう行動するのか」などを家族と相談し、実際に『防災まち歩き』してみてみるということです。

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 このように、巨大地震注意が発表された時の「日頃からの地震への備えを再確認」とは、普段からやっておいた方がよいことで、できていなかったことを「念のため」しておくことだといえます。

取材の最後、一番聞きたかった質問を・・・

 今後30年以内の発生確率が70~80%とされている南海トラフ地震。最後に、南海トラフ地震の「評価検討会」の会長を務める平田氏にこそ尋ねたかった質問をしました。

―――いつか南海トラフ地震が起こるとき、臨時情報の発表を踏まえて起こるのか、それとも臨時情報なく起きるのでしょうか?

平田氏「何の情報もなく地震が起きます。ほぼ確実ですね。そう皆さんに思っていただかないといけないです。臨時情報が出るまでは安全だと思ったら絶対にいけないと思います」

―――つまり、臨時情報なく南海トラフ地震が起こると思っていた方がよい?

平田氏「はい、そう思います」

「南海トラフ地震臨時情報」。初めて発表された今、必要なのは、この情報の真意を理解すること、そして冷静な判断と行動です。

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◆取材・文 福本晋悟
MBS報道情報局 災害・気象担当記者。人と防災未来センター特別研究調査員。今年5月、運用開始から5年たっても認知度が高まらない「臨時情報」についての特集を放送。

2024年08月10日(土)現在の情報です

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