MBS(毎日放送)

『福男選び』の裏方はかつて2年連続「二番福」 交通事故で障がい残るも「えべっさんが助けてくれた」と恩返しを決意 3年ぶりの開催に「涙」

編集部セレクト

SHARE
X
Facebook
LINE
  

 コロナ禍以降行われていなかった西宮神社の「福男選び」が、今年1月10日に3年ぶりに開催されました。その裏側に密着しました。

「いつも以上に大切なものになる」福男選びを強く待ち望んでいた人物

 1月10日午前6時に行われた西宮神社の福男選び。スタートから先頭に立ち、そのまま独走状態で駆け抜けた大学4年生の植本亮太さん(22)が、見事『一番福』を手にしました。

 新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催となったこの時を、選ばれた3人の福男以上に待ち望んでいた人がいます。それは…。
d.jpg
 開門時に威勢よく「かいもーん」と叫んでいた平尾亮さん(46)です。

 初詣をする人で賑わった元日の西宮神社。そこに平尾さんの姿がありました。開門神事の運営は、西宮神社と、地元の有志らで作る団体「開門神事講社」とで行っています。平尾さんはその団体の代表です。

 (運営会議で話す平尾亮さん)
 「今回って特別やねん、ほんま。3年ぶりの神事。ほんまに大切な1回になる。いつも大切よ、いつも大切やけど、いつも以上に大切なものになる」

2年連続で二番福「次こそ一番福」と意気込んでいた矢先に事故

 実は平尾さん、かつては走る側として神事に参加していました。今から26年前、1997年の開門神事で二番福だったのが、陸上部の友人に誘われて参加した当時大学生の平尾さんです。

 翌1998年も平尾さんは二番福。

 その次の年の1999年、平尾さんはスタートダッシュに成功し独走態勢となりますが、あと一歩のところで大転倒し、悲願の一番福を逃しました。

 (開門神事講社・講長 平尾亮さん)
 「『やった!一番福』って思った瞬間に世界が一回転したんでね。わけわからんかった。まあ、僕っぽいといえば僕っぽいですけど」

 次こそは一番福にと意気込んでいた平尾さんを、突然の事故が襲います。1999年12月、開門神事を2週間後に控えたクリスマスの日に交通事故にあい、長期入院。右足に障がいが残りました。

 ふさぎこむ平尾さんを立ち直らせてくれたのは、友人である市村拓也さんの言葉でした。

 (開門神事講社 講長・平尾亮さん)
 「『えべっさんが助けてくれたんや』と。ほんまやったら死んでいてもおかしくない事故やったのに、助けてくれはったんやって言ってくれたんですよね。それやったら恩返しというか、えべっさんへの恩返しをしないといけないなと思ったのは、裏方で本格的にやり始めるきっかけになりましたね」
i.jpg
 以来、運営団体の代表として2009年から14年間、神事を支え続けてきました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大でおととし・去年と2年続けて、福男選びは中止を余儀なくされました。

 去年11月、感染状況が落ち着いていたことなどから、3年ぶりに福男選びを行うことが決まりましたが、平尾さんは手放しでは喜べません。

 (運営会議で話す平尾亮さん)
 「(門の前が)割とぎゅうぎゅう詰めになるから…」

 密にならずに安全に運営するにはどうすればいいか。新しい開門神事の在り方を探る日々が続きました。

3年ぶりに復活した光景に涙「最高ですよ」

 そして迎えた福男選び当日。密を避けるため門の前で待つ人の数を減らし、受付時間も前倒すなどの対策が取られました。開門の1時間半前の10日午前4時半。門の前でその時を待つ参加者に平尾さんが声をかけます。

 (参加者に話す平尾亮さん)
 「(新型コロナで)いろんなことが抑制されて、いろんな人に会えない、やりたいこともやれない、そんなことが続きました。そして今回、3年ぶりに行われるこの開門神事というものを全国に知らしめたい。みんなで開門神事をつくりあげよう!」

 この日のために復活を祝う垂れ幕も用意。今年も平尾さんが開門の号令をかけます。

 (開門の号令をかける平尾亮さん)
 「3、2、1、かいもーん!」

 3年ぶりに復活した光景に平尾さんは涙を流しました。

 (開門神事講社 講長・平尾亮さん)
 「3年ぶりの福男選びをなんとか成功させようと思っていたので…無事に開門できてよかったです。たまらんすね。最高ですよ、本当に」

2023年01月10日(火)現在の情報です

今、あなたにオススメ

最近の記事

強度行動障害のある28歳息子と初めて離れて暮らす決断 「自分たちが世話が出来なくなる前に」両親はパニックに対応できる施設を6年間探す...届いた「受け入れ可能」のメール

2025/11/02

【独自】旧統一教会の"財産移転先"天地正教とは 「弥勒菩薩は文鮮明氏」宣言から濃くなった教会の色...過度な献金要求を元信者が証言 二代目教主「乗っ取られた」旧統一教会の見解は

2025/10/31

【カツめし】夫婦で50年!路地裏の昭和釜めし 京都・下京区「月村」

2025/10/30

「被告人は『当たったか?』と言葉を発した」山上被告を取り押さえた警察官が明かす緊迫の状況 提示された安倍氏の傷痕の写真を食い入るように見つめた山上被告 自作のパイプ銃は「発射罪」適用されるか?

2025/10/30

「早く供養してあげないとと。思いついたのが、土に埋めてかえしてあげること」死産した赤ちゃんの遺体を大阪市内の公園に遺棄 24歳女の孤独「産まれるとなっても、誰の顔も思い浮かばなかった」【裁判ルポ】

2025/10/30

Xでの投稿めぐり... 大阪地裁が泉南市議に賠償命じる 在日コリアン女性の親族関係を"暴露"「名誉毀損やプライバシーの侵害で、政治的思想持つ者による個人攻撃を誘発する危険」大阪地裁 ヘイトスピーチとは認めず

2025/10/30

『20年以上前の実習台』買い換えたいがお金が...阪大歯学部が直面する"設備の老朽化" 国公立大なのに「国に頼れない」OBなどに寄付募り「身を削る」

2025/10/29

【安倍元総理銃撃】「倒れる安倍氏に『総理!総理!』と声をかけた」応援受けた佐藤啓参院議員 事件直後の安倍氏の状況証言「私の応援演説で銃撃された。昭恵さん、安倍家に大変申し訳ない」

2025/10/29

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook