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大学教授に研究資金提供したのは"小学5年生の研究者"!?日本初「再生医療」を活用した『サンゴ増殖計画』に取り組む2人

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 関西大学で『サンゴを増やす研究』がこれまでとは少し違った手法で進められています。人間の『再生医療』の専門家と小学5年生の研究者の挑戦を取材しました。

日本初!「人間の再生医療技術」を活用して“サンゴ増殖”目指す

 関西大学・化学生命工学部の研究室。ここでは『サンゴを増やす研究』が進められています。プロジェクトの指揮を執るのは上田正人教授です。6年前、研究室に水槽を運び入れてサンゴの研究を始めました。ただ専門分野はサンゴではなく「人間の再生医療」です。
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 (関西大学・化学生命工学部 上田正人教授)
 「この水槽の中にいるのは魚以外は実は全てサンゴになります。周りからは遊んでいると思われるのですが。(Q専門ではないサンゴに関心は?)最初は全く、正直言いますとゼロです。サンゴと(人間などの)脊椎動物における骨格形成というものが非常に似ていることに気づきまして。そこからは急に180度変わってのめり込んでいったという感じになります」
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 再生医療では、骨とくっつきやすい性質を持つ金属のチタンでできた人工骨と人間の骨をつなげる研究をしてきました。上田教授はこのチタンを“サンゴの増殖に活かせるのではないか”と考えます。
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 水槽の中でチタンの上にサンゴの断片を移植。するとサンゴはチタンを自らの骨格の一部と錯覚して成長していくことが確認できたのです。再生医療の技術を用いて効率よくサンゴの増殖を目指すのは日本初の試みだといいます。

 (関西大学・化学生命工学部 上田正人教授)
 「本当のサンゴ専門家の先生たちがやられている研究とは違うアプローチで」

クラファンに小学5年生の少年が参加『実際に体験した方が理解できる』

 上田教授は実際の海での実験のためクラウドファンディングで資金を募りました。目標額の200万円はすぐにクリアして300万円以上が集まりました。のべ167人の参加者の中で気になる人がいました。

 (関西大学・化学生命工学部 上田正人教授)
 「結構おとなしめの子なんですが、内に秘めているものが半端ない感じです。『研究室に行って実際の(海での)フィールドを見ることができますか?』というメッセージをいただきました。もうめちゃくちゃうれしかったです」
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 上田教授が一目置く若き研究者は小学5年生の下川祐くん(11)です。

 (祐くん)
 「実際に体験した方がちゃんと理解できるかなって。(Q将来の夢は?)なりたいのは生物学者です。生き物が好きだから、研究とか生き物のことをもっと知りたいなと思って」
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 祐くんは内に秘めているだけではありません。サンゴを間近で見るため、去年10歳の誕生日を機にダイビングの資格を取りました。そんな時に上田教授のプロジェクトに出会ったのです。

 (祐くん)
 「人間に使われている再生医療がサンゴにも使えるという点で面白いな関わってみたいなと思った」
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 祐くんに迷いはなく、コツコツ貯めたお小遣いを寄付して参加することを決めました。

 (祐くん)
 「(Qお金を貯めるのは大変じゃなかった?)昔からもらっていたお小遣いを全然使っていなかったので、(クラウドファンディング最高額の)20万円は無理だったんですけど、上田教授が『子どもらしいお金でいいです』って言ってくれて3万円を寄付した。(Qゲームとか買いたくないの?)ニンテンドースイッチをサンタさんに、それ以外は買いたいとはあまり思いません」

 上田教授は特別に海での実験の同行も認めてくれました。

裕くんは“記録用の動画の撮影”を任されることに

 海で実験を始める10日前。上田教授と祐くんはダイビングの練習にきました。資格を持つ祐くんですが潜るのは1年ぶり。記憶をたどりながらの確認です。

 (祐くん) 
 「(Q泳いでみてどうだった?)久しぶりで結構難しかったんですけど、ちょっと怖かったけど楽しかったです」
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 この日、祐くんは当日の大切な仕事を言い渡されました。記録用の動画の撮影です。

 (上田教授)「僕らの研究チームの一員として写真や動画で記録をきちんと撮ってもらいたいと思います」
  (祐くん)「そう言われるとうれしいです」
 (上田教授)「頼りにしているよ」

実験場所は鹿児島・与論島

 今回のプロジェクトの実験場所は鹿児島県の与論島です。与論島は年中海に潜ることができるダイバーに人気のスポットです。島周辺の海は通称『ヨロンブルー』と呼ばれ、いたる所にサンゴ礁がみられます。上田教授はサンゴが豊富にいて地元の理解も深い与論島に可能性を見出しています。
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 サンゴを取り付けるチタンには名前を刻みます。

 (祐くん)
 「(チタンに)自分が描いた模様が沈むとうれしいです」

 今回の鍵は、水槽ではなく自然の海でサンゴがチタンとくっつくかにかかっています。サンゴとチタンをしっかりと密着させて固定します。
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 漁港から船で約5分。サンプルを海底に沈めるために沖まで移動します。

 (関西大学・化学生命工学部 上田正人教授)
 「いよいよです。本当に長い時間がかかりましたけど、やっと設置できます」
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 上田教授が海に潜ると、祐くんも上田教授の後を追い、水深約5mを潜ります。サンプルは生きたサンゴと同じ環境になるようになるべく近い設置場所を探します。祐くんは撮影しやすいポイントを探ります。そして、45個のサンプルは30分かけて無事、海底に置くことができました。
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 (祐くん)
 「(Qどうだった?)サンゴを取り付けているところが面白くて、サンゴもめっちゃきれいで、(参加できて)よかったと思います」
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 (関西大学・化学生命工学部 上田正人教授)
 「(Q祐くんの活躍ぶりは?)ばっちりでした。自分のサンプルも撮影できたよね。本当にこれからだなと。今から観察していって、また改良していくところがないのかを見つけていきたいと思います」

 形成されるのに通常は数十年かかると言われているサンゴ礁。サンゴを増やす取り組みの答え合わせは、この先の世代にも引き継がれていきます。

2022年09月07日(水)現在の情報です

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