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【解説】「タイフーンショット計画」台風の人工弱体化 発案から60年経ってなぜ始動?『ジャンボ7~8機分のドライアイスで』

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『人類はついに台風をコントロールできるのか…』台風を制御するという国家プロジェクト「タイフーンショット計画」が動き始めています。高い海水温と水蒸気を巻き込みながら巨大化する台風のエネルギー構造を逆手にとって、3つの方法で弱体化させるというものです。①ドライアイスをまく②海面をかき混ぜる③氷を散布するといった方法で台風の熱源を冷ますというものです。キーマンである京都大学防災研究所の森信人副所長によると「2040年ごろには大きな積乱雲をターゲットに実験し、2050年ごろには技術を確立したい」と話しました。(2022年9月6日MBSテレビ「よんチャンTV」より)

――超巨大台風を人為的に弱める3つの方法、「タイフーンショット計画」という国家プロジェクトが動き始めているそうですね?

中国でも、早いタイミングで雨を降らせ、降雨をコントロールすることは以前からされています。さらに人工降雪もあります。

――実は、台風の制御は法に規定されているそうです。伊勢湾台風の後、1961年に災害対策基本法が制定され、「台風に対する人為的調節に努めなければならない」と書かれています。60年経って、どうして今、計画が動いているのですか?

一つは、関空が水没した2018年の台風21号、もう一つは関東に大きな被害を与えた2019年の台風19号。大都市に対して台風の影響が強くなっているのではないか、ということ。もう一つは天気予報ですね、数値モデルがかなり良くなってきたので、もし何かちょっと手を加えたら、どういう影響を及ぼすか、予測できるようになった。

1960年ごろは、アメリカでハリケーンをコントロールするっていう実験が行われました。その時代、シミュレーションはありませんので、単にいろいろ撒いてみるんですが、手を加えたことによって生じた変化なのか、台風が勝手に変わったのか、当時はわからなかったんです。現在は比較と効果がわかりやすく判定できるようになり、台風を人為的にコントロールすることが可能かどうかを調べることができるようになってきた、という背景です。

台風を弱める手段 ①②台風をガス欠に!

―――森先生のたとえでは、「熱=暖気核」がエンジンで、「水蒸気」がガソリン。このどちらかを止めてしまおうという発想。まず1つ目は、「ヨウ化銀(雲の種)を散布して、壁雲の外側に別の雲をつくりガス欠にする」これは、どういうことですか?

ヨウ化銀やドライアイスを撒くと、水蒸気が早く雨粒や氷になります。そうすると台風の壁雲の外側に新しい雲ができる。中心まわりの台風の目の雲が、すこし外に移動して、目がどんどん甘くなり、台風が弱くなるんじゃないかという方法です。


――2つ目の「海面をかき混ぜてガス欠にする」とは?


はい。暖かい海がエネルギーの供給源なので、それを冷ませばいい。海は表面から50~100mぐらいが暖かくて、その下はだいぶ冷たいので、海底の水を何らかの方法で上に運べば「ガス欠」、つまりエネルギーを落とすことができるんじゃないか。

台風を弱める手段 ③エンジンを冷やす!

―――3つ目は、台風の目に氷を散布、エンジンそのものを冷やす。

1つ目の手法に近いんですが、目の中心に大きな熱源がありますので、そこに集中的にドライアイスを入れることによって冷まして、目の発達を抑えると、台風の発達も弱まるのではないかという方法。

ただ、一番重要なのは、良かれと思ってやったことがマイナスの影響にならないか。そこで、それについても予測技術を使って、マイナスにならないよう検討しています。たとえば、進路が変わりそうです。大阪にとってプラスだと思ってやったことが、違うところに影響を及ぼすのは非常にまずいので、そういうことが起きないようコントロールするにはどうしたらいいのか。

――2つ目の例だと、海をかき混ぜたことで生態系に影響出ないか?

無人の船を入れてスクリューで回すとか、巨大な風車のようなものを大量に入れて、かき混ぜるとか。かき混ぜることがポイントで、それをどう実現するかというのはいろんな知識が要ります。我々は「台風を消す」という大胆なことは考えていなくて、人間に強い影響を与えることを許容できるレベルまで下げると。そのとき問題になるのはサイドエフェクトですね。

例えば、夏の大阪湾は、温かくて海が混ざらないないので、台風が来ることによって、混ざって良い影響もあります。そういうことをなくさないよう、でも人に大きな影響を与えないためにどうするか。温暖化が進みますと、どんどん台風が強くなることはわかっているので、2050年ぐらいまでにそういう技術が開発できていて、万が一、そういう台風が来たときに、この技術を使うか使わないかはまた別の話で、その手法だけは準備しておこうと、そういう計画です。

――ここ数年の損害保険の支払保険金は、平成30年、令和元年と1兆円の金額が支払われています。令和元年、房総半島での台風15号は、全体的な経済被害額は1兆2000億円もある。森先生らのチームのシミュレーションによりますと、最大風速を、例えば毎秒3m減少させると1800億円の建物被害が減額するというデータが出ているんですか?

ジャンボ7~8機分のドライアイス

風の被害ってのは風速の大体5~6乗で関係しますので、少し変えるだけで経済被害は抑えられる。我々がまず目指すのは、風速を数m弱めるぐらいなら、どうやったらいいのか、っていうこと。費用はちょっとわからないんですが、試算すると「ジャンボジェット7~8機分のドライアイスを撒く」と、多少減らすことができることがわかっています。

―――実用化は目標でいうと、いつ頃?

シミュレーションを5年ぐらい開発して、2030年ぐらいまでに室内実験、2040年ぐらいに一つ大きな積乱雲をターゲットにコントロールできるか実験して、2050年に技術を確立したい。非常に息の長いプロジェクトです。

2022年09月06日(火)現在の情報です

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