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囲碁アマ六段のアナウンサーが直撃!「世界最年少」でプロ棋士になった藤田怜央くん(9) 天才少年の強さの秘訣は"こだわりの子育て"にアリ?

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 9月1日に世界最年少の9歳4か月で囲碁のプロ棋士になった藤田怜央くん。そんな怜央くんは普段どのような生活を送っているのか。今回、アマチュア六段の資格を持ち、“アナウンサー界1の囲碁通”でもある毎日放送の辻沙穂里アナウンサーが、デビュー戦前の怜央くんを丸1日取材しました。

休日は朝から囲碁の勉強 プロ棋士・藤田怜央くん

 小学校が夏休み中の8月24日、毎日放送の辻沙穂里アナウンサーは大阪市内を訪れました。

 (辻沙穂里アナウンサー)
 「いま朝の9時30分です。怜央くんがいると呼ばれてやってきたのが、こちら『ふじた鍼灸接骨院』です」

    (辻アナ)「おはようございます。怜央くんのお父さんですね?」
 (怜央くんの父)「そうです。よろしくお願いします」

 ふじた鍼灸接骨院は、藤田怜央くんのお父さんである藤田陽彦さんが営んでいて、陽彦さんは鍼灸師として鍼治療などのお仕事をしています。
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  (辻アナ)「怜央くんはいらっしゃいますか?」
 (陽彦さん)「いますよ」
  (辻アナ)「失礼します。あっ、いた!囲碁の勉強中ですね。何時からここにいるの?」
 (怜央くん)「(朝の)8時」
  (辻アナ)「もう1時間半もしているんだ。いまは何してるところ?」
 (怜央くん)「棋譜並べ」
  (辻アナ)「いつもこうやって勉強しているの?」
 (怜央くん)「……」

 緊張のせいか、言葉少なめな怜央くん。学校がお休みの日は毎日朝早くからお父さんの職場で囲碁の勉強です。

  (辻アナ)「ここでいつも怜央くんは稽古をしているのですね?」
 (陽彦さん)「囲碁は家には持ち込まない。やっぱり家は家で(囲碁のことは)忘れてほしいから。試みたことはあるんですけど、やっぱり集中できないしね、家は」
  (辻アナ)「囲碁の話は一切しないんですか?」
 (陽彦さん)「囲碁の話はするんですけど、勝敗のこととか練習のこととかはしないです。家に帰ってきてまた親に言われるの嫌でしょ」
  (辻アナ)「切り替えたいですね」

師匠が語る怜央くんの強みは「正確さ」と「鋭さ」

 黙々と勉強していると、午前10時ごろ、1人の“お客さん”が…。

 「おはようございます。きょうは怜央くんの囲碁の勉強を教えに…」

 いらしたのは、怜央くんをプロ棋士に育てた師匠の星川拓海五段です。週1回、指導にやってきます。
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 囲碁は白と黒で交互に石を置き、自分の石で囲んだ領域の広さを競い合います。お互いに先を読み合って石を置いていくのですが、辻アナウンサーは怜央くんの打つスピードに注目。星川五段が石を置くと、怜央くんはすぐさま打ち返します。

 (怜央くんの師匠 星川拓海五段)
 「手が速いので多分、研究済みなのかなっていう感じはしますね。読みがすごく速いです。正確さとか鋭さっていうのが彼の1番の強みかもしれないですね。はじめのうち(約1年前)は自分の方がだいぶ余裕があったので、手合割(ハンデ)としては定先(怜央くんが先手)くらいかなっていう感じで。ただ、2年生で(ハンデが)定先だけというのはちょっと聞いたことがなかったので。その2か月後くらいにはもう互先(ハンデなし)で、私が負けだしましたから、すごいなと…」
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 そこで、小学生でアマチュア六段、高校生で日本一になった実績を持つ辻アナウンサーが怜央くんに挑戦!辻アナウンサーが打っていきますが…。

 (辻アナ)「(打つのが)速いな…。隙を一瞬も見逃してくれないですね」

 この後も怜央くんの素早い攻撃は止まることなく、打ち始めて10分程で…。

 (星川五段)「ちょっと厳しいですか…」
  (辻アナ)「もう太刀打ちできませんでした。ありがとうございました」

 怜央くんが勝利しました。

 (辻沙穂里アナウンサー)
 「私が考えていることはたぶん全てお見通しで、慎重でありながら攻めも強くて、性格も一緒なのかなと」

囲碁を始めたきっかけは『オセロ』

 そんな怜央くんが囲碁を始めたのは5年前の4歳のとき。きっかけは意外なことでした。

 (怜央くんの父 藤田陽彦さん)
 「オセロです。オセロを朝起きたら『やろ』って持ってきますし、(仕事から)帰ってきたら『やってくれ』ってずっと言い続けますので」

 とにかくオセロをやりたい怜央くんの熱意に対応しきれなくなり、オセロ教室を探したものの見つからず。そこで、見た目だけが似ているという理由で囲碁教室に通わせることに。
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 教室の代表の林達也さんによりますと、通い始めた初日から普通の子どもとは違ったといいます。

 (囲碁サロン雅 林達也さん)
 「衝撃だったのが、初日。通常はすぐ休憩したがるんですけど、『休憩する?』って聞いたら、『ううん』って言われて。『トイレ行ってもいい?』って言ったら、『なんで?』って言われて。ずっと囲碁にハマってくれていたっていうのがすごく印象に残っています」
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 その2年後、囲碁のイベントに来ていた怜央くんに毎日放送が偶然インタビューをしていて、こんなことを答えていました。

 (藤田怜央くん※当時6歳 2019年)
 「(Q将来は何になりたい?)プロ棋士になりたい」

 6歳のときにはすでにプロを目指していたという怜央くん。囲碁以外でも異彩を放っていて、1歳半の時には大阪の地下鉄路線図の全駅名を暗記。4歳のころには、都道府県の名前を全て暗記し、さらにその面積を大きい順から言うような天才児でした。

囲碁の勉強部屋に「卓球台」 “体を動かすこと”が強さの秘訣?

 ですが、普段は普通の小学3年生。もちろん遊ぶのも大好き。囲碁を勉強する部屋にはフラフープや卓球台がありますが、怜央くんが運動できるようにお父さんが準備したものです。

 (怜央くんの父 藤田陽彦さん)
 「運動を大事にしているので。座っていることが多いから(運動を)させないと。(Q運動が囲碁に繋がっていると感じる?)それはめちゃくちゃあると思います。脳科学とか見ていると、運動することによって脳細胞が増えたりとか、運動の効能というのはよく言われていますので」
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 実はお父さんの職場に来る前、毎朝のルーティンで30分のウォーキングを行っています。さらに週1回、地域が開催する体操にも参加していて、運動も欠かしていません。

 (怜央くんの父 藤田陽彦さん)
 「(Q学校の勉強はどんな感じ?)学校の勉強はみんなと同じペースでやらせています。一応、両立は目指しています。学業は普通ですね。時間を割いていないから、ついていっているくらいですけど。(Q学校も楽しんでいる?)給食ね、給食大好きだよね」

道場で平均7時間の練習…「詰碁試験」では断トツの1位

 そして午後は、囲碁道場でさらに囲碁の勉強。プロ棋士を目指す子どもばかりが20人集まり、数々のプロ棋士も輩出している本格的な道場です。怜央くんは小学6年生のお兄さん・夏輝くんと一緒に訪れました。ここに通い始めて4年目。夏休み中はほとんど毎日休むことなく通い、平均7時間、中には11時間以上練習した日も。
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 (辻沙穂里アナウンサー)
 「これ見てください。『詰碁試験』で怜央くん断トツ1位です。詰碁というのは、相手の石を取るには次にどこを打ったらいいでしょうという『読み』を鍛える練習なんですけど、それで怜央くんは断トツ1位を取っています」
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 (師範代表 吉川一さん)
 「道場に来た当初は僕の方が(詰碁を)できていたんですけど、もうあっという間に抜かれて。中盤の戦いでも詰碁の力が生きて、こっちが楽勝かなと思っていた碁を一瞬で逆転されたりとか。詰碁はもう彼にはかなわないです」
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 (道場に通う小学4年生・岩本母都子ちゃん)
 「(怜央くんは強い?)うん。(囲碁以外のときも話はする?)うん。普段はヤンチャ」

 (怜央くんの兄 藤田夏輝くん)
 「(Qお兄ちゃんから見てどんな弟?)元気な弟」

 (藤田怜央くん)
 「(Q普段は友達とどんな話をする?)…」

恥ずかしそうな怜央くん。
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 やっぱりカメラの前ではまだまだシャイですが、午後6時、みんなとの夕食の時間になると…。

 (道場に通う子ども)「松屋のほうがおいしいで!」
     (怜央くん)「吉野家の方がおいしい」
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 30分休憩してみんなとリラックスした後は、再び真剣な顔に。この日はトータル11時間も囲碁の勉強をしましたが、集中力は全く切れる様子はありません。
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 こう育ったのには、お父さんが大切にしてきた1つのことがありました。

 (怜央くんの父 藤田陽彦さん)
 「好きなことにとことん付き合ってあげるということはしてきました。ハマったのはできる限り付き合ってあげますよね。ボードゲームとか好きでしたし、カードゲームとか。例えば朝起きて、昼まで大富豪をするんですよ、一緒に。ハマるとずーっと進んでいくというか。(Q囲碁もそうやってハマっていった?)そうですね」
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 そして気が付けば夜の9時。囲碁教室の掃除を手伝って、1日を終えます。

 (怜央くんの父 藤田陽彦さん)
 「(Qこの後の予定は?)もう家に帰って風呂に入って寝る。あしたはこの道場がお休みなので、もう1か所の先生のところに行きます」

2022年09月05日(月)現在の情報です

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