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コロナ感染急増で再び「看護師足りない!」宿泊療養施設で家族同室や妊婦も...『看護師1人で約50人』大阪府看護協会の会長が実情を解説

2022年07月25日(月)放送

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 大阪府では7月23日に1日の新規感染者数が過去最多を記録するなど感染者が急増しています。そんな中、宿泊療養施設に看護師を派遣する「大阪府看護協会」では、7月に入り新たに約150人を採用しましたが、それを上回る数の人が入所していて、看護師が足りていないということです。また1年前と比べて施設に在室する患者数も倍以上に増えていて、子どもとの家族同室や妊婦などの療養も増えています。その看護師を派遣する大阪府看護協会の弘川摩子会長に『看護師不足の状況』や『宿泊療養施設の傾向』について話を聞きました。

急速に増える感染者…『看護師不足』が深刻化

 ーーー弘川さんは大阪府看護協会の会長でいらっしゃいますがそもそも大阪府看護協会はどういう組織なのですか?
 「大阪府に看護職としての資格を持っている保健師・助産師・看護師・准看護師、そういう資格を持っている人たちが会員として介入している団体で、職能団体になっています」

 ーーー大阪府看護協会からさまざまなところに看護師や医療従事者を派遣されているということですが、例えば、宿泊療養施設に478人、大阪コロナ重症センターに102人、中等症病院やクラスター施設などに7人、ワクチン接種の4会場に2456人の看護師を派遣しています。ワクチン接種会場に派遣する人数が多いのはなぜですか?
 「やはりですね、1人の看護師さんがフルで仕事をしているわけではなくて、週に1回だけとか週に2回・何曜日だけのような、そういう方たちにお願いをしていますので、人数的には非常に多いかたちにはなります。看護協会の会員というのは皆さん医療施設とかで働いていらっしゃるんですけど、今回この人たちというのはどちらかというといったん現場を離れている、いわゆる『潜在看護師』と言われる方が登録されてますので、その人たちに勤務していただいているということなので、現場で働いている方ということではほとんどないです」
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 ーーー7月に入って既に新規で150人近く採用したということですが、それを上回る感染者で人手が足りていない状態ということですよね?
 「はい、そうですね。本当に今までと違ってスピードがすごくて。普通だったら2か月ぐらいで増加する数が1か月で増えているという状況です。なので、なかなか追いつかないというところが現状で厳しいです」

 ーーー面接をして採用されると翌日から現場に向かうということですが、そういったことは可能なのですか?
 「今それが一番の課題でして、8月からや8月中旬からという方は面接でも結構いらっしゃるんですけれども、今すぐという方がなかなか確保できなくて。シフトがもうできているところの看護師さんたちが結構多いですので、本当に今困っているのは、この1週間を何とか看護師さんに協力をお願いしたいというところが一番の課題です」

 ーーー今の新規感染者数のグラフを日々追いかけているとこれからまだまだ厳しくなってきそうですよね?
 「そうですね、まだまだどこまでいくのかがちょっと読めないような状況です」
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 (元厚労省官僚・元衆議院議員 豊田真由子さん)
 「ここまで感染者が増えた状況だと、私たち側に発想の転換や行動変容が必要で。というのは弘川会長がおっしゃったように、例えば潜在看護師の方って現在70万人くらいいると言われていて。ただ連絡がつかない方とかも多いので、そういった方が自発的にこの協会の方たちと連絡を取っていただくとか、そういう人を増やすということももちろんすごく大事ですし、病床を増やすというのも大事なのですが、多分どんなに増やしても追いつかないので。そうすると、例えば軽症でちょっと喉が痛いなとか熱があるなという時に、いま発熱外来に行ってもできることってほとんどないんですね。というのは、重症化リスクのある高齢者や基礎疾患の方でないとモルヌピラビルとかのコロナの薬というのは処方ができないので、結局普通の解熱剤をいただくだけなので。そうすると、発熱外来に行ってすごく並んで医療のひっ迫にさらに拍車をかけるよりも、よく最近言われるんですけれども、基礎疾患や重症化リスクのない方はご自身で検査キットで検査する。今回は無料で国も検査キットを配布すると言ってるので。かつ市販のお薬で自宅でゆっくり普通の熱が出たときの対症療法として休んでいただくというほうが、おそらくご自身としても医療機関のひっ迫という点からも一番最適な答えだと思うんですよ。ただ、そこで急変したりして亡くなる方がいたりすればすごく問題なので、そこは見極めが大事なのですが。今まで通り、例えば先ほど宿泊療養の話が出ましたけれども、コロナの最初の頃は陽性が出た方は『無症状でも皆さん宿泊施設に入ってください』って方針だったんですけど、それを国も今ちょっと変えていて、そういった無症状の方や軽症の方は『ご自宅で検査をして、ご自宅で陽性が出たら自治体に連絡をしてください』というふうに変えてきているんですね。そういうふうにしないと医療がひっ迫する一方なので、みんなができる形でベストな形を模索しながら行動を変えないと、本当に重症とかで亡くなる方が増えちゃうということにもなるんだと思います」

 ーーー大阪の宿泊療養施設38施設のうち36施設に看護師を派遣されてるとのことですが、7月24日時点での宿泊療養施設使用率は35.4%ということでやはり上がってきています。なので、発熱したら不安にはなるが冷静に判断するという考え方も必要ということだと思います。弘川さんはそのあたりの患者の考え方・捉え方はどういうふうに考えていますか?
 (大阪府看護協会 弘川摩子会長)
 「やはり、今まで第1波からずっと繰り返されていますので、その中で自分たちで取得した感染対応というのはある程度確立されているのかなと思いますので、そこをしっかりと継続していただくということが、一番今の状況を乗り越えられる1つの方法だと思います。本当に一丸となってこの波を越えていかないと、医療職だけとか行政が対応というような問題ではもう乗り越えられないのではないかと思います」

看護師1人あたり40人~50人分の情報を担当

 ーーー弘川さんによりますと、宿泊療養されている方の症状ですが、これまでは喉の痛みを訴える人が多かったのですが、消化器系(下痢)や皮膚炎(発疹)なども見られています。施設の利用者は小児も多く、家族同室での療養や妊婦の入所も増えています。症状というのはいろんなものが出てきているような印象ですが、この辺りはどういうふうに考えていますか?
 「そうですね、今まではどちらかというと熱・喉の痛み・倦怠感というふうによく言われていたんですが、今回からやっぱり消化器症状というところが宿泊療養施設に入所されている方からよく聞きます。それがちょっと特徴かなと。発疹はちょっと実際には見たことないんですけれども、それもあるということで、ちょっと症状がいろいろ出てきているんだなというふうに思っております」

 ーーー宿泊療養施設ですが、在室患者数は1年前と比べて倍以上だということで、保健所を通さずに入所できるようになったことも要因ではないかということです。そういう意味では簡単にというか、いろんな作業を飛ばして入所することができやすくなったっていうことですね。今後の看護師たちの課題ですが、現在、看護師1人あたり40人~50人分の情報を担当しているということで、入所と退所の入れ替わりが激しく情報の管理や把握が大変だということです。1人で40人~50人分というのはすごい量ですよね。通常ですとどれぐらいの人数分の情報を担当するのが適切なのですか?
 「病院の方では大体1人あたり10人前後の受け持ちという形になっているんですけど。やっぱり入院をされる対象の方ではないので、ただコロナの陽性で自宅で対応できないという方たちが入っておられていますので、まあ落ち着いてはいらっしゃるので」

 ーーー7月24日現在、大阪府内で保健所から連絡が来ていない人、または連絡が来ているが対応が決まっていない人が4万5225人いるということで、連絡待ちや対応待ちという方がたくさんいます。また、子どもの入所が増えているということですが、コロナ以外の感染症や病気の拡大というのはどういうふうに見ていますか?
 「そういった情報というのは看護協会の今の活動の中ではあまり得られていないんですが、地域の病院の看護師さんたちからの情報ではそういう熱中症はもちろんなんですけれども、そういうところで受診に来られてどれかということで検査をして結果が出るまでに時間がかかるというようなことをおっしゃってました」

政府が決定した“濃厚接触者への待機期間短縮”…医療従事者に影響は?

 ーーー新型コロナウイルス感染の波のたびに繰り返される「看護師不足」。今回、大阪府看護協会では潜在看護師などに事前に声をかけて一定数を確保していたということで、ダブルワークの人が多いため8月からという人が多数、7月からすぐにという人はやはりなかなか確保できていないという状況です。ダブルワークということは他の仕事と並行してやるということですか?
 「そうですね。週に1回はここで、週に2回はここで、という時間でやられている方たちが多いですね」

 ーーー濃厚接触者となって休んでいる看護師職員も非常に多いということです。自分が陽性じゃなくても家族が陽性の場合は濃厚接触になるわけですからね。そんな中、政府は期間短縮を先週に決定しました。これまでは濃厚接触者に7日間休んでくださいということだったのが、現在は5日間。2日目と3日目に連続して検査をして陰性なら3日目に解除も、ということです。このあたりの政府の決定に関してはどういうふうに思っていますか?
 「我々看護師を考えると、本当に短縮して安全であれば助かるなというところが素直な気持ちなのですが、期間短縮が決定したばかりなので、結果がどうなるのかというのはちょっと見ていかないといけないかなと思います」
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 (元厚労省官僚・元衆議院議員 豊田真由子さん)
 「厳密に言うと、医療従事者の方と一般の方の扱いが今の政府では異なっていて、看護師を含めて医療従事者の方は以前から毎日検査をすれば濃厚接触者であっても陰性であれば業務に出ていいと言っているので。休んでいる看護職員も増加しているというのは、病院側が慎重を期して『政府はそうやっていいと言っているけどクラスターが発生したら大変じゃん』と言って5日間とか病院の規定で休ませているところが多いんですね。だからそれが今回、国が一般の方向けに短縮したことで、病院側も『うちも規定通り毎日出していくようにするか』というのは、またちょっと個別の医療機関の判断だと思うんですよ。一般の方が5日で2、3日陰性ならいいというのは、何か新しいエビデンスが出たというよりも、これだけ市中で感染が広まっちゃうと濃厚接触の方というのは基本的には陰性だと、コロナにかかっていないという前提で、でも検査をしてもそれをくぐることがあるので念のためウイルスを排出しなくなるまでということをやったんですけど、これだけ市中にいっぱい広まっちゃうとリスクは大体同じくらいに広がってくるので。閉じ込めることによっていろんな社会経済活動が止まっちゃうことのバランスを勘案して短くしているんですね。なので、これをもって感染者が増えるとはちょっと思えないということでこうしているんだけれども、医療従事者の方がひっ迫してしまうのとはまた別の問題なんですよね」

 ーーー毎日検査を受けて陰性であれば仕事ができるということですが、病院の方がちょっとそれは困るということが多いということですね。そのあたりは弘川さんはどう考えていますか?
 「それはもう病院の考え方ではあるかなと思います」

 ーーー今後、濃厚接触で看護師が不足するということがあれば、やっぱり対応を変えてくるというようなことも考えられるんですかね?
 「国がそういうふうに一般の方は知っていますのでそれを見ながらということになるんじゃないかなと思います」

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