「プレバト!!」水野雅之×「チコちゃん」小松純也、注目タッグのバラエティ特番は「人間の面白さがより立体的に浮かび上がる予感」

エンタメMBS

2020/09/25 19:30

MBS/TBS系「プレバト!!」の総合演出・水野雅之氏と、NHK総合「チコちゃんに叱られる!」を手掛けるプロデューサーの小松純也氏がタッグを組んだバラエティ特番「平気なの!?って聞くTV」が、9月27日(日)午後2時から放送される。小松さんは「笑う犬の生活」の演出、「トリビアの泉」「ホンマでっか!?TV」の立ち上げなども手掛けたテレビ業界のレジェンドであり、水野さんは「林先生の初耳学」「教えてもらう前と後」も立ち上げた敏腕プロデューサーとして知られる。タッグを組むきっかけ、そして2人が作り上げたバラエティとは一体どんなものなのか?

――「平気なの!?って聞くTV」は日常に潜む「平気なの!?」を徹底調査&密着取材し、意外な真相を明らかにするものです。まず番組が生まれたきっかけを教えてください。

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水野
僕は番組を作る時は、身の回りの自分の心に引っ掛かった出来事からアイデアを広げていくのですが、今回の発端は僕が不注意でスマホを落下させて画面を割ってしまったことです。携帯ショップで待ってる時に「そういえば何年も割れたまま放置している人っているよな」「スマホがバキバキに割れている人たちって、なんで平気?」と思ったのがきっかけでした。それで、企画が通ったあと、小松さんに内容を説明してブレーンとして参加してもらいました。

小松
かつて僕は「笑っていいとも!」で「幸薄い顔コンテスト」という企画をやったのですが、すごく晴れたお天気だったのに、なぜか参加者全員が折り畳み傘を持っていたんですよ(笑)。今までいろいろ辛い目に遭われて、それが顔ににじみ出ているだけでなく、用心深い性格にも繋がっているんだなと気づきました。同じように今回の特番は、人間の面白さがより立体的に浮かび上がってくる予感がプンプンしましたね。確かに世の中にはスマホがバキバキの人はいるけど、それが見過ごされていることに手を突っ込んでテレビにするのかって(笑)。バキバキという表面的なことだけでなく、違うところでも共通点があるかもしれないという内容が面白いと思いました。

――現在のMBSのゴールデン帯の全国ネットレギュラーバラエティ3つを企画している水野さんが、どうして企画が通った後に小松さんを誘ったんですか?

水野
小松さんには〝高い壁〟になって欲しいとお願いしました。新番組を作る時って、自分が責任を背負っていると収録までにネタが揃わないかも...とか、新しいアイデアには自信があるんだけどロケが失敗するかも...っていう不安がやっぱりあって「正解はこれ」って分かっていても、98点くらいまで積み上げたら残り2点を妥協してブレそうになることがあるんです。でも、小松さんみたいな人がいてくれると、妥協させてくれない指摘が必ず飛んでくる(笑)。的確なアドバイスをいくつももらえました。「ここまでやり切るから小松さんはレジェンドなのか!」って驚かされましたし、本当にありがたかったですね。

小松
褒めすぎで怖い(笑)。中には言いづらいこともありましたけどね(笑)。でも、水野さんが意見を求めているのがひしひし伝わったので、やっぱり言うべきことは言わなければと思いました。収録の直前に言い出したこともありますし、こんなタイミングかよって嫌がられたとは思いますけど(笑)。でも、水野さんが思っているほどブレていませんでしたよ。おっしゃる通りだなと思うことがほとんどでした。

水野
あと、僕自身、番組の演出を担当するようになって10年くらいになるんですけど、最近、会議で迂闊にアイデアを言いにくくなってきているんです。自分の中では見え切っていないアイデアでも口にすると、みんなに賛成されてしまうというか...。

小松
その悩み、とてもわかります。

水野
先輩方の指摘や意見って、とっても貴重ですよね。僕は「プレバト!!」の総合演出ですけど、スタッフの中には僕よりも演出の実績のある先輩方がいます。自分のアイデアを実現するには、その人たちを納得させないといけないんですけど、この壁を乗り越えると企画の精度が格段に上がる。それを日頃から実感してるから、今回の特番では〝高い壁〟の役割を小松さんにお願いしました。

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――実際に小松さんからどんなアドバイスをもらいましたか?

水野
例えば、キャスティングですね。今のテレビって世帯視聴率よりも個人視聴率、もっと言えば若い世代に見てもらうことを意識していますよね。ネタやキャスティングも、若者目線で選びがちなんですが、一方で、「若い人ってこうでしょ」って決めつけから失敗している番組も多いんですけど、今回、小松さんに「ゲストの1枠は誰がいいと思います?」って質問したら若村麻由美さんを提案してくれました。

小松
若村さんには「チコちゃん」にも何度か出演していただきましたが、あの人の明るさは僕にとって発見だったんです。若村さんが入れば面白くなるし、番組がもっと弾むはずだと思ったんです。ジェネレーションギャップとか世代をまたいでトークが盛り上がっているのは、若い人が見てもすごく面白いし、シニアの方にも楽しんでもらえますからね。

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水野
小松さんに提案された時に、確かにピッタリだと思いました。僕も「プレバト!!」や「初耳学」などで若村さんに出てもらっていますが、いつも台本以上に面白くしてくださるイメージがあります。例えば今回も「キッチンに便器がある家」を紹介したんですけど、若村さんは「私はユニットバスが出てきた当時ですら抵抗があったから、この光景は...」って驚いてくれました。あと、「スマホがバキバキなのに平気なの?」っていうネタでは「バキバキだったら私は老眼だから見えないと思う」ってぶっちゃけてくれたり(笑)。

――番組タイトルはどうやって決めたんですか?キャッチーに行くか、分かりやすくするか難しいところですよね。

小松
番組タイトルは、僕がこうしたらいいのになと考えていたこと、そのままでした。

水野
特番は一発勝負だから、レギュラー番組よりも内容が分かるタイトルにしたいんです。今回はまず「平気なの!?」は絶対に必要なので、その前後に何をつけるべきか悩みました。「それって平気なの!?」とか「平気なの!?って聞いてみた」っていう案が当初決まりかけましたが、似たようなタイトルのレギュラー番組があります。だから今回は「TV」をつけるくらいのシンプルな感じに決めました。

小松
僕もなんとかTVって番組は散々やりましたよ(笑)。「わかるTV」なんかもそうですしね。内容を直接的に言って、TVとつけるのはストレートなやり方だと思います。「それって平気なの?」だとこっちがまともな人みたいな感覚だけど、「平気なのって聞く」だと勝手に心配しているお節介なニュアンスが入ってきますからね。

水野
そうなんですよ。「平気なの!?」があれば「聞く」って書かなくてもよさそうなものですけど、この「聞く」が大切なんです。今回は〝小市民のお節介〟っていうニュアンスを入れたかったし、聞くこちら側は小市民、聞いた先には僕らの知らない世界があるみたいな番組にしたかった。でも、タイトルは難しい。「チコちゃんに叱られる」なんて、「叱られる」という番組構成上のひとくだりをそのままタイトルにしてますし、勇気あるなぁと思います。

小松
「漫然と生きていたら気づかないことに気づくTV」じゃ、つまらないですから(笑)。「ボーっと生きてんじゃねーよ!」でもいいけど、タイトルを番組の中で何度も叫んでいたら寒い。いろんな方向性がありますが、やろうとしていることではなく、抽象的なワードがハマる時もありますよね。「笑う犬の生活」の時は全くタイトルが決まらなくて、チーフプロデューサーに「このまま決まらなかったら『ジャパン大爆笑』にするぞ」って言われて、ひねり出したんです(笑)。タイトルは本当に難しいですよ。

――今回は水野さんの身近な出来事がきっかけで番組が生まれましたが、2人は普段からどんなことに興味を持ち、意識していますか?

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水野
僕のアタマは常にパソコンでいうスリープモードみたいな感じです。常時オンではないけど、何かに引っ掛かった瞬間に起動して「これは企画になる!」って。今回のスマホも携帯ショップで急に思いつきましたし、普段からネタ探しをしているのではなく、目の前のことはとりあえず浴びておくみたいな感じですね。全然興味ないくせに、原宿のパンケーキ屋さんの行列が目に入ったら並んで食べてみるとか(笑)。

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小松
僕も妻と子供とパンケーキ屋に並びましたよ。水野さんと違ってパンケーキ好きになりましたけどね(笑)。昔はクリエーター気取りで、いろいろな刺激を求めて街をさまよったこともありましたが、最近は変化を追いかけ続けるよりも、変わらないものは何かを考えるようになりました。今はいろんな情報があふれていますが、流行り物よりもそれを世の中の人がどんな気分で感じているかが重要だと思います。だから、自分自身がどう感じるかが一番大事なセンサーなんですよ。そのためには、実はものすごく普通に暮らしていないとダメだと思うんです。

――「プレバト!!」が今年の放送人グランプリの「企画賞」を受賞し、昨年は「チコちゃん」が受賞しています。そんな2人がタッグを組んだ番組が楽しみです。また一緒に番組を作ってみたい気持ちはありますか?

水野
ぜひ、ご一緒したいですね。今回は僕の企画でしたが、次は2人でイチから企画を作ってみたいです。放送人グランプリに関しては、「プレバト!!」は番組が始まってもう8年ですし、受賞するとは全く思ってなかったんです。受賞した後も、「『チコちゃん』と並んだね」みたいな言われ方をしたこともあります。「なんだよ、その言い方」って思いましたけど、社会現象にもなった「チコちゃん」は、やっぱり偉大なんです。

小松
滅相もないですよ。「プレバト!!」はすごい番組ですよ。いつも見てしまうし、僕ですら自分もちょっと俳句や水彩画をやってみようかなって思えてしまう(笑)。今回の特番もすごく新鮮だったんですよ。僕はほぼ自分の企画しかやったことがなくて、こういうスタンスで仕事をするのは珍しいんです。この歳になると、やったことがないことをやらせていただくのが、すごく貴重な経験になります。まだ自分にも伸びしろがあるんだと思えました(笑)。今回の特番が育ったらうれしいですし、一緒に新たな番組が作れたらワクワクしますね。ぜひお願いします。

     ◇

お二人が手掛ける単発バラエティ「平気なの!?って聞くTV」は
9月27日(日)午後2時からMBS/TBS系で放送!公式HPはこちら
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