MBS 毎日放送

2019年02月16日 12時00分 公開

<センバツ名試合:2014年 履正社―駒大苫小牧>窮地脱した選手たちの底力 履正社が進化した試合

今年で91回目を迎える春の選抜高校野球。本連載では、「高校野球生き字引」MBS森本栄浩アナウンサーにセンバツの過去の名試合を振り返ってもらう。今回は、2014年2回戦・履正社-駒大苫小牧の試合をピックアップ。大阪2強の一角・履正社が序盤の劣勢を底力でひっくり返した。それまでの手堅い野球から脱皮し、履正社にとって転機となった試合だ。

まさかの履正社エース不調
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 長らく続く大阪の「大阪桐蔭-履正社」2強時代。しかし甲子園では「履正社2番手」の序列をなかなか覆すことができない。履正社はいつも質の高い野球をするが、それまで、追いつめられると本来の力を出せずに敗れることが多かった。この試合は、序盤からエースが崩れ、試合の行方が見通せない中で進んだ。これまでの履正社なら、ずるずるいきかねない展開だ。
 両校とも初戦を完封で飾っての2回戦。特に履正社の溝田悠人(2年)は小山台(東京)相手にあわや無安打無得点の快投を演じていた。その溝田が立ち上がりから駒大苫小牧打線につかまる。逆転直後の2回は満塁のピンチを切り抜けたが、3回には死球からまたもピンチを招き、下位打者にスライダーを狙い打たれて一挙5失点。たまらず岡田龍生監督は溝田をマウンドから降ろし、同じ右腕ながら剛腕タイプの永谷暢章(2年)を登板させた。秋は、打たせて取る溝田を堅守で支えて勝ち上がったが、この日の溝田は本来の制球力が影を潜め、1回戦とは別人のような内容。ベテラン監督も、辛抱の限界に達したようだった。
 結果的にこの交代が履正社には吉と出る。永谷は球威こそ履正社の歴代投手でもトップクラスだが、完成度では溝田に遠く及ばず、岡田監督が交代を躊躇したのも納得できる。永谷は速球を武器に駒苫打線を圧倒し、反撃を待った。この試合で永谷は10三振を奪う。3回以降、毎回得点圏に走者を進めながらも、ややちぐはぐな攻めが目立っていた履正社はようやく6回、打線がつながる。4番・中山翔太(3年)の犠飛で1点を返すと、西村拓浩(2年)、八田夏(3年)も続き、5-6と1点差に詰め寄った。ちなみに中山は法大でも4番打者として活躍し、今年、ドラフト2位でヤクルトに進んだ。

この試合から履正社は変わった!
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 そして9回、履正社は八田が失策で出塁すると、絹田翔太(3年)の送りバントが安打となり、逆転の走者が出る。8番・立石哲士(3年)は送りバントを失敗するが、ここで開き直ったか、起死回生の同点打。最後は、初戦で満塁弾を放っている2番・辻心薫(もとまさ=3年)の犠飛で履正社が逆転サヨナラ勝ちした。試合後、岡田監督は、「選手に助けられた」と振り返ったが、この試合は履正社にとって甲子園での戦い方の分岐点になったのではと察する。
 「大阪2強」を取材していて感じることだが、大阪桐蔭は奔放で伸び伸びした選手が多いのに対し、履正社の選手は皆、穏やかだ。それは、普段の生活環境にあると思っている。桐蔭は全員が寮生活で、24時間、ライバルたちを意識しなければならない。履正社には寮がなく、1時間以上かけて通学する選手も少なくない。遠方の選手は、学校の近くに下宿することになる。ロッテに進んだ安田尚憲は、兄が全寮制のPL学園だったが、本人は自宅から通える履正社を選んだ。「家族の支えが一番、ありがたかった」と話す。練習と日常生活にはっきりとしたメリハリをつけるのが履正社の指導方針の長所でもある。野球にもそれが表れていて、履正社の野球はゲームプランに沿って、実に手堅い。しかしこの試合では、本来の野球ができなかった。これまでなら、そのまま押し切られていただろう。
 エースの不調をカバーした永谷、バント失敗を取り返した立石。窮地を選手たち自身の力で脱した履正社は、準決勝の豊川(愛知)戦でも、控えの主将・金岡洋平(3年)が9回に同点アーチを放って、延長で振り切った。決勝では惜敗して準優勝に終わるが、この大会以降、履正社の野球が大きく進化したことは間違いない。本来の野球ができなくても、最後は選手たちに底力があるかどうかだ。
 「大阪2強」と言っても、甲子園の実績では大阪桐蔭に大差をつけられている。特に2018年には2度目の春夏連覇を達成された。夏の大阪大会で、9回2死まで追い詰めながら逆転された試合は記憶に新しい。それでも新チームは秋の大阪大会で完勝し、ライバルを一歩リードした。悲願の「甲子園初優勝」はそう遠くない将来、必ず訪れるはずだ。

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第86回選抜高等学校野球大会(2014年)履正社(大阪) × 駒大苫小牧(北海道)の試合の動画はこちらから!
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