BLOG京ノ旅手帖2020.08.24

歴史ある美術館が待望のリニューアルオープン。その開館記念を飾る展覧会が開催中

京都市京セラ美術館 撮影:来田猛

80余年の歴史を誇り、現存する公立美術館建築としては国内最古の京都市美術館。改修工事のために2017年から閉館し、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開館が遅れたものの、今年5月26日、「京都市京セラ美術館」としてリニューアルオープンしました。

現代美術展のために建設された新館「東山キューブ」では、現在、開館記念展として「杉本博司 瑠璃の浄土」を開催中です。

特別動画:「杉本博司 瑠璃の浄土」

「杉本博司」とは何者か?

sugimoto.jpgSelf portrait 2018 © Sugimoto Studio

 杉本博司さんは1948年東京生まれの現代美術作家です。大学卒業後に渡米し、ロサンゼルスで写真を学んだ後、74年からはニューヨークを拠点に活動を始めます。

 代表作は連作の写真作品です。70年代後半からアメリカ自然史博物館のジオラマを大型カメラで精密に描写した「ジオラマ」、映画館のスクリーンに1本の映画を投影し、その始まりから終わりまでを撮影した「劇場」、80年代には世界中の海を同一手法で撮影する「海景」など、数々のシリーズ作品を発表し、世界的に高い評価を得てきました。

 また、近年は建築や舞台演出、古今東西の古美術や歴史資料等の蒐集など、幅広い活動でも知られています。

五輪塔.png《光学硝子五輪塔 カリブ海、ジャマイカ》2011/1980 小田原文化財団蔵 ©Hiroshi Sugimoto

会場を入ってすぐに展示されている五輪塔の中には、杉本が30年以上かけて世界中の海を撮り続けた作品「海景」がおさめられている。

㈪004_杉本博司_OPTICKS 008_2018年.jpg《OPTICKS 008》2018 ©Hiroshi Sugimoto

本展が初公開の「OPTICKS」シリーズは、杉本がニュートンの著作「光学」に着想を得て製作した「プリズム」という装置で光を分光させ、そのそれぞれをポラロイドカメラで捉えたもの。

1つの被写体にじっくりと向き合い、長い時間をかけて撮影や制作を行う姿勢に、杉本さんの飽くなき探求心を感じます。

杉本がつくり出す「瑠璃の浄土」とは

 これまで幾度となく京都を訪れ、その長い歴史からさまざまなインスピレーションを得てきた杉本さん。今回、かつて6つの大寺院が存在していた京都・岡崎の地に立つ京都市京セラ美術館での展覧会開催にあたり、当時の人々が希求していた「浄土」を再生、再考すべく、展示室内を1つの寺院に見立て、展示を行いました。

会場内は「参道」から「本堂」、そして「宝物殿」へと続き、「京都」、「浄土」、「瑠璃-硝子」にまつわる考古遺物や美術品が展示されています。

4.仏の海001.jpg《仏の海 001》1995 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi​

瑠璃の浄土.jpg《瑠璃の浄土》2005 小田原文化財団蔵 ©Hiroshi Sugimoto / Odawara Art Foundation Photo: Yuji Ono

 あなたにとって「浄土」とは、どのようなイメージでしょうか。
 捉え方は人それぞれ。ぜひ会場で、体感してください。

<「杉本博司 瑠璃の浄土」開催概要 >

会期:2020年10月4日(日)まで
会場:京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」(京都市左京区岡崎円勝寺町124)
https://kyotocity-kyocera.museum/
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
開館時間:10時~18時
観覧料(当日券):一般1,500円、大学・高校生1,100円、中学生以下無料
※現在、来館には事前予約が必要です。料金等含め、詳細は美術館ホームページをご確認ください。