旅知新ブログ
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BLOG京ノ旅手帖
2019.05.08
あの人にあげたい、京のおみやげパン
京都みやげに新たな選択肢を!「せっかく京都に来たから、京都らしいものをおみやげにしたい!」。でも、2度3度と回数を重ねるうちになんだかワンパターンに...!? そんな時はパンをおみやげにしてみるのはいかがでしょう。パンの消費量日本一に輝いたこともある京都は、おいしいベーカリーの宝庫なんです。そんな数あるベーカリーの中から、京都人が愛する3店をご紹介。並んででも、少し足を伸ばしてでも食べたくなるパンの旅にいざ出発!おいしい香りに誘われて...昔ながらのベーカリー「まるき製パン所」へ レトロな雰囲気の松原京極商店街を歩いていると、パンの良い香りが...。ここは並ぶのが嫌いな京都人でも並ぶ、昭和22年(1947)創業の「まるき製パン所」。お邪魔したのは小雨の降る平日でしたが、そんな日でも客足が途絶えません。もちろん休日は行列必至!自慢は「ロール」こちらの商品の7割を占める主力商品が「ロール」。いわゆるコッペパンのことです。以前はこのあたりに女子高があり、学生たちに評判だったロールの種類を増やしていった結果、今では60種類のメニューがあるそうです。たっぷりの具材に心も踊る!店の奥に調理場があり、スタッフのみなさんが次々にロールに具材をサンド! 笑顔の絶えない、和やかな空間です。作り置きしないロールは、開店中も随時焼き上げられていきます。「ケチケチしてたらおいしいもんできひん!」という2代目ご主人・木元廣司さんの言葉通り、具材が溢れそうなほど挟まれます。ここでしか作れないパン「特別なことは何もない。なるべく自然に、おいしいものを作ろうとしてます」と、木元さん。1週間のほとんどをお店で過ごすという木元さんは「他の場所では、ここで作るようなパンは完成しない」とも。この地ならではのローカルな空気感、スタッフのみなさんの明るい声と笑顔、そしてお客さんとの距離の近さ。ここでしか味わえない雰囲気も、まるき製パン所ロールのおいしさの秘密なのかもしれません。「まるき製パン所」の一押しおみやげパンは...様々なパンが並びますが、やはりロールは外せません。挟む具材は定番のハムやあんこをはじめ、ポテトサラダ、ハムカツ、クリームなどなど...。人気は「ハムロール」170円(税込)。たっぷりキャベツとハムのシンプルな一品だからこそ、ロールのおいしさが際立つ! まるき製パン所のロールは、一つ一つがリーズナブルで種類豊富なので、友人や家族での大人数での集まりや、会社へのおみやげにして、みんなでワイワイ食べるのにぴったりですね。■まるき製パン所京都市下京区松原通堀川西入ル 市バス停大宮松原から徒歩3分075-821-9683平日6時30分~20時、日・祝7~14時キラキラ輝くフルーツがまぶしい 「フルーツパーラー クリケット」 桜の名所としても知られる古社・平野神社。その向かいに、清潔感のある明るいカフェのようなおしゃれなお店を発見しました。ここは「フルーツパーラー クリケット」。店の中に入ると、フルーツたちのあまーい香りが...!フルーツやコンフィチュール、ゼリーなどが並ぶ姿に、思わず「おいしそう~! 」と声が漏れます。フルーツパーラー、だからこそのサンドこちらでぜひおみやげにしたいのが、フルーツサンド1,200円(税込)。季節や入荷状況によって内容は変わりますが、いちごやマンゴーなど、フルーツ界の人気者たち7種がふんだんに入っています。生クリームは2種類を混ぜて使っており、甘さやコクのバランスも絶妙。果物の甘さや程よい酸味がうまく引き立ちます。「フルーツに興味や思いを向けてほしい」との思いで毎朝作られるフルーツサンドは新鮮でボリューミー。たっぷりのフルーツが入っている点は、フルーツパーラーならではの魅力です。女子会やママ友会にもおすすめ!40年前から試行錯誤を重ね、今が黄金のバランスだというこちらのフルーツサンド。見た目もキラキラしていてかわいいので、女子会やママ友との集まりでの受けは抜群です。どこを食べてもはずれが無いように作るのがこだわりだそうで、本当にどこを食べてもたっぷりのフルーツとクリーム...!感想をシェアし合うのも楽しいです。■ フルーツパーラー クリケット京都市北区平野八丁柳町68-1 サニーハイム金閣寺1F 市バス停衣笠校前から徒歩2分075-461-3000 10~18時http://www.cricket-jelly.com/祇園散歩中に発見! 京都らしいたたずまいの「グランマーブル祇園」へ祇園界隈の散策は京都旅に欠かせませんよね。京料理店やカフェが立ち並ぶ花見小路通を歩いていると、のれんのかかる上品なお店を発見。ここは「グランマーブル祇園」。お店の奥には坪庭もあり、京都らしさを感じる高級感のある店内が素敵です。「マーブルデニッシュ」が看板商品 こちらの自慢の商品は、見た目も美しいマーブルデニッシュ。デニッシュという洋の要素に、和の素材を織り込んだ、贅沢な逸品です。旅行者はもちろん、地元の人々にとっても、憧れのデニッシュなんです 。食感は驚くほどしっとりとしていて、一口食べただけでリッチな気持ちに。断面の綺麗なマーブル模様は、一つ一つを職人さんが手作業で作り上げているからこそできるものなのです。定番人気のフレーバーをぜひ、ご賞味あれ季節ごとにさまざまなフレーバーが登場するグランマーブル祇園ですが、定番人気は「京都三色」1080円(税込)。プレーン、苺、「祇園辻利」のお抹茶が使われた抹茶と、3種の生地を織り込んで作られたマーブルデニッシュです。酸味、甘み、ほろ苦さが絶妙に調和! 丁寧に作り込まれているな、と見た目でも、舌でも感じられる一本です。ここぞ! という時の手みやげにもぴったり。一週間以上、日持ちがするのも嬉しい! いつもお世話になっているあの人へ、感謝の気持ちとともに渡してみませんか?■ グランマーブル祇園京都市東山区祇園町南側市バス祇園から徒歩3分075-533-7600 11~20時(季節により変動あり) https://grandmarble.com/おみやげの新定番、パン魅力的なベーカリーが軒を連ねる京都。お菓子や雑貨も良いけれど、ふかふか・しっとり・もちもち...と個性豊かな表情を見せてくれるパンをおみやげに選んでみるのも素敵ですよ。種類が多いからこそ、渡す人の好みを考えながら選べるのも魅力!お気に入りのベーカリーを見つけて、あの子に、あの人に、おいしいパンを贈ってみてくださいね。※価格は取材当時のもの
西垣 愛佳
ライター
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BLOGつぶ乃ブログ
2019.04.24
虚空蔵法輪寺さんのマイクロSD御守、イマドキすぎやおまへんか?
■ つぶ乃洛中の外れに生まれ育ち、京都を担う二次元タレントを目指して活動を開始。ホンネが見え隠れする毒っけの強い物言いで、京都の真実に斬り込んでいく予定。はじめてお目にかかります。うち、つぶ乃と申します〜。ご縁があって、MBSさんのこの「京都知新」で連載持たせていただくことになりましてん。初回は十三詣りで有名な虚空蔵法輪寺さんをご紹介させとおくれやす。て言うたかて、主に取り上げるのは十三詣りやあらしまへんえ。今回は、マイクロSD御守のお話どす。マイクロSD御守て、ご利益ありますのん?虚空蔵法輪寺(こくうぞうほうりんじ)は、奈良時代に創建された葛井寺(かずのいでら)が由縁。偉いお坊さんたちが篭らはった霊験あらたかな地に創建された古刹どす。こちらの御本尊は、虚空蔵菩薩さん。人間をはじめ、生きとし生けるものに無限のご利益を与えてくれはる菩薩さんやさかい、ご存知の方もいはるんちゃいますやろか。そのご利益を頂戴できる御守が、もちろんこのお寺さんにもあるんどすけど、それがなんとマイクロSDなんどす。マイクロSD、おわかりどすか? スマホのデータを保存するために使うたりする、あのちっちゃいちっちゃいやつどす。そんなんでご利益あるんかって、いま思わはりましたやろ?うちも正直、怪しいなぁと思たさかい、お話聞きに行くことにしましてん。チャラいお坊さんが出てきはるかと思たら、高尚な風情のご住職が優しいお顔で丁寧に教えてくれはりましたわ〜。スマホの待ち受けにも内部にも虚空蔵菩薩!マイクロSD御守には、虚空菩薩さんの画像が入ってますねん。それを待ち受けやロック画面に設定したら、スマホを開くたびに虚空蔵菩薩さんを拝めるゆう訳どす。ご住職曰く、「いまの時代、スマホはずっと持ち歩きますよね。なのでスマホを御守にすれば、日々、虚空蔵菩薩さまを肌身離さず持ち歩けることになります」とのこと。しかも、待ち受け画像が入ってるだけやおまへんえ。「マイクロSDには虚空蔵菩薩さまを表す"タラーク"という梵字が刻まれているので、スマホの中に菩薩さまが入ってくださるんですよ」と、ご住職。御守って、神仏のお名前やお祈りの言葉が書かれたお札のはず。つまり、スマホが御守になるっちゅうことで、理屈的にも間違いないやおまへんか。新しいもん好きの京都人らしく斬新やけど、ちゃんと伝統は重んじたはりますわ〜。待ち受けがガッツリ虚空蔵菩薩さん。シブいわ〜!スマホを開くたびに、ありがたさハンパおへん正直言うてお寺さんに伺う前は、マイクロSDの御守ってイマドキすぎて、なにやら時代に乗っかってるような感じで思てましてん。そやけど、やっぱりちゃんとお話聞いてみなあきまへんなぁ。なるほどと納得して、うちもスマホに入れさせてもろたんどすけど、なんや知らん、ちょっとええ人になったような気がしてますねん。たとえば、鬱陶しい電話を切った後に現れる虚空蔵菩薩さんに心洗われたり、メッセンジャーアプリで友達とゴタゴタした後に虚空蔵菩薩さん見て反省したり。いやそれ自分の問題やん......とか思ったらあきまへん。あんまり欲かかんと、そういう気持ちになれるだけでもご利益ありまっしゃろ?16ギガで1200円。フツーにマイクロSDを買うよりお得感満載やおまへんか。他にも要チェック① 十三詣り時期も時期やし、やっぱり十三詣りにも触れときますわ。数え年13歳の時、4月13日〜5月13日までの間に法輪寺さんをお参りして、虚空蔵菩薩さんに智恵と福を授けていただく、関西圏では特に有名な行事どす。江戸時代まで法輪寺橋と呼ばれてた渡月橋。十三詣りの帰り道には、渡月橋から法輪寺側を振り向くと菩薩さまに智恵をお返しすることになりますんえ。うっかり後ろ向かんようにしとおくりゃす。他にも要チェック② 舞台境内右手の舞台からは渡月橋や嵯峨野はもちろん、京都を一望できまっせ。他にも要チェック③ 電電宮境内に向かう石段中ほどにある電電宮さんは、電波や電気、電力を司る電電明神さんのお社。最近はIT関連の仕事に携わる人の参拝も多いそうどす。山門を入ってすぐに、電波や電気の祖神を祀る電電宮の塔。最近はIT関連の仕事に携わる人の参拝も多いそうどす。粛然としたお寺さんにエジソンとヘルツという外人さんのレリーフがあるのも、味わい深いと思わしまへんか?京都の人しか知らんこと その1京都は伝統や歴史だけやなくベンチャーや最先端に寛容。■虚空蔵法輪寺京都市西京区嵐山虚空蔵山町68-3075-862-001319:00〜17:00無休拝観料/無料、マイクロSD御守(16ギガ)/1200円阪急嵐山線嵐山駅から徒歩約5分・京福嵐山本線嵐山駅から徒歩約10分
つぶ乃
自称・花街に生きる京女キャラクター
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BLOG京ノ旅手帖
2019.04.24
世界遺産「仁和寺」 幻の観音さまに出逢う旅
古より非公開であった「観音堂」が6年の時をかけて修理され、期間限定で特別公開世界遺産である仁和寺の「観音堂(重要文化財)」は、仁和寺創建の約40年後、928年頃につくられたと伝えられています。その後、幾度も火災で焼失し、現在の建物は江戸時代初期である1640年頃に再建されたもの。2012年からは観音堂の半解体修理(平成大修理)が行われ、6年もの歳月を経て美しいお堂が蘇りました。その様を多くの方とともに祝い、仏様とご縁を結んでいただきたい...。そんな想いにより、僧侶の修行の場として非公開であり続けた観音堂が期間限定で特別公開されるに至りました。観音堂にいらっしゃるのは、370年以上も前から人々の目に触れられることが稀であった幻の観音様。長年秘められてきたお堂や観音様との出逢いを求め、京の旅が始まります。ノスタルジックな路面電車「嵐電」に揺られながら到着世界遺産・仁和寺の玄関口は「御室仁和寺駅」仁和寺の山門が見渡せる風情ある駅舎 仁和寺の最寄り駅は京福電鉄、通称「嵐電(らんでん)」の「御室仁和寺(おむろにんなじ)駅」。寺社や住宅地の間をガタンゴトンと走る路面電車に揺られると、どこか懐かしいノスタルジックな気分に浸れるのも京都旅ならではです。駅の改札を出て振り返ると、「驛室御(旧駅名)」という旧字体・右横書きの駅看板が掲げられ、ちょっとしたフォトスポットにもなっているとか。そして、真正面には仁和寺の山門である「二王門(重要文化財)」が雄大にそびえ立ち、その佇まいを駅から、また門に向かいながら眺めるのがおすすめです。歩きながら邪念を払い、門をくぐります。境内をゆっくり散策しながら観音堂へ入母屋(いりもや)造りの美しい観音堂 二王門から観音堂までは「浄心の参道」を歩き、朱色の「中門(重要文化財)」を通ります。4月頃に咲き誇る、遅咲きで有名な御室桜の桜林を眺めながら左(西側)へ曲がると、背が高く、正面はすべて板扉で独特の印象を与えるお堂に到着します。これが今回の目的地である観音堂。二王門から金堂を軸線として、東側にある五重塔(重要文化財)との絶妙なバランスで配されているのも特徴です。普段は踏み入れられない神秘的な空間で、静かに祈りを捧げる私たちを出迎えてくださる33体の仏様 370年以上も前に建てられたと伝えられている観音堂は、幾度の焼失と再建により、現在の姿は江戸初期の建築とされています。当時期に建てられた他のお堂の多くは純和様ですが、この観音堂は和様を主にしながら各所に禅宗様(ぜんしゅうよう:鎌倉時代頃に禅宗とともに伝わった中国北宋系の建築様式)が加味され、新旧様式が混在しているのも見どころです。いよいよ観音堂の中に足を踏み入れると、正面に須弥壇(しゅみだん:本尊を安置する場所であり、一段高く設けられた場所)があり、その中心には「本尊千手観音菩薩立像」、両脇には「不動明王(ふどうみょうおう)立像」と「降三世明王(ごうざんぜみょうおう)立像」、前には「風神・雷神立像」が。そして、千手観音菩薩の従属として「二十八部衆立像」が祀られています。特に、真ん中でひと際輝く観音様の圧倒的な存在感...。きらびやかでありながら穏やかなお顔には、どんな人でも心を奪われるのではないでしょうか。穏やかな面持ちの千手観音菩薩立像 なお、観音堂は多くの人々が訪れる仁和寺の中心部にありながらもひっそりと佇み、かつて公にされることはほぼ無かった神秘的な空間です。それは、昔も今も若い修行僧が日々厳しい修行を重ね、仁和寺にしか伝わっていない法流(教えを伝える系譜)を門跡から授かるというような非常に大切な儀式を行う場所だから。よって、これに相応しい風格を備えており、一般の方が普段目にすることは非常に稀な"最も尊いお堂"でもあるのが、この観音堂なのです。仏様お一人おひとりの表情や衣装も観察したい(※特別な許可を得て撮影しています) 手を合わせ、心静かに祈りを捧げる堂内に安置されている仏様は全33体。仁和寺の僧侶である林就吾さんによると、「ご本尊であり、万能な神様と言われている千手観音様が、仏さんの教えによって良い神様になられたお仲間をたくさん連れていらっしゃる様子は、厳かでありながら迫力があります。これほど間近で一般の方にご覧いただくことは今までになく、とても貴重な機会となるでしょう」。そして、「千手観音様は観音様の中でもスペシャリストとも言えます。"千"のように多くの手で、余すことなく皆さんに手を差し伸べてくださるから。"観音"とは"世の中を見る"ということを意味します。ここにいらっしゃるご本尊は、前で合掌されているものを合わせて42本の手、そして11面のお顔で、ありとあらゆる方角を見て世の中を見守り、私たちの苦しみを聞いてくださります」。躍動感に満ちた風神・雷神立像阿修羅王の3つの表情にも注目 千手観音菩薩の前方には、今にも動きだしそうな「風神・雷神立像」が。昔の農耕社会において恵みの雨を降らすのは風であり、この風を呼び起こす神様が「風神」だったとか。そして、天が喜んでいることを知らせる雷が鳴ることで、稲が豊作になり、一年間食べ物に困らないという考えで「雷神」も崇められてきたのです。躍動感にあふれ、迫力に満ちたおふたりの姿も必見です。また、千手観音菩薩のお仲間である「二十八部衆立像」の表情やポーズ、衣装はそれぞれ異なり、武将のような恰好の仏様や仙人のような仏様も...。きっと、ずっと見続けたい気持ちにかられるはず。林さん曰く、「もともとは戦いの神様として有名で、3つのお顔と6本の手(三面六臂)を持つ『阿修羅(あしゅら)王』の色鮮やかなお姿も、ぜひお探しいただきたいですね」。史上初、観音堂を心ひそかに守り続けた幻の観音様との出逢い千手観音菩薩を囲むように描かれた障壁画僧侶である林さんにお話を伺った千手観音菩薩や数々の神様を背後から包み込むように極彩色の障壁画があります。それも、真後ろの壁一面だけではなく堂内をぐるりと巡って壁と柱が彩られており、これが370年以上も決して公開されずに観音堂を人知れず守り続けてきた幻の「観音障壁画」なのです。お堂が建立された1640年頃、京都を中心に活躍した木村徳応(とくおう)という絵仏師らが手がけたもので、370年以上の時を経ているにも関わらず、色鮮やかな姿を現在に伝えている貴重なもの。ここには、観音経に基づいて様々な観音様のお姿や人々を救う場面が描かれており、ほんのりとした灯りの中で数々の画を堪能することができます。三十三観音菩薩や三十三応現身の場面など人面をした牛馬などが描かれる六道の畜生道 須弥壇正面には観音菩薩のいる浄土である「補陀落山(ふだらくせん)」の様子。救うべき対象に合わせて観音菩薩がその姿を変える三十三応現身(おうげんしん)を表現しています。そして、須弥壇背面には人間が死後に向かうとされる「六道(六つの世界)」が描かれています。生前の行いによって地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天上道のいずれかに導かれ、その報いを受ける人々の生々しい様は、大人はもちろん、子どもたちにとっても、日々の行いや態度などについて考えるきっかけになるかもしれません。例えば、「あれも欲しい、これも欲しい」とむさぼる子ども=「餓鬼(がき)」の世界には、物を食べようとしても口に入れたとたん炎になってしまう様子などが描かれています。また、人の喜びを妬み、「あんちくしょう、こんちくしょう」となる「畜生(ちくしょう)」の世界には、本能のままに生活した人間が動物に生まれ変わるという苦難が表現されているのです。 天女が舞い、音楽を楽しむ天上道の世界観音障壁画の前で六道について語る林さん林さんは、「例えば天上の画。天女様が舞い、人々は微笑み、音楽を奏でながら優雅に暮らしています。このような天界の世界に生まれ変わることが人間の最終目標でもありますが、私たちは今も、その時々の感情で六道の世界にワープできる。生きている中でも六道の世界を輪廻しているのです。ですので、自ら怒りの気持ちを抑えるなど日々の心を一定に保つのが理想であり、それはお一人おひとりの心の持ちよう次第なのです」。六道の画の上には、6つの世界をそれぞれ救ってくださる「六観音菩薩」が厳かな面持ちで立っていらっしゃいます。まさに、仏教の世界観に基づいた人生そのものの縮図が描かれているのです。「御仏の世界を間近でご覧いただきたいですね」極彩色の世界を隅々まで堪能したいそして、北・東・西側の壁には「三十三観音菩薩」も描かれており、一つひとつのお顔や姿にも目を向け、心に留めてみるのもよいでしょう。心が疲れた時、優しい気持ちになりたい時...。あたたかな眼差しで包み込んでくださる幻の観音様のもとへ、この春や秋、仁和寺を訪れてみてはいかがでしょうか。仁和寺を訪れたら、これも一緒に楽しみましょう■貴重な「朝のお勤め」体験仁和寺の敷地内にある「御室会館」に泊まると特別に、非公開文化財「金堂(国宝)」で朝のお勤めを体験できます。ろうそくの灯りの中で読経に耳を傾け、静かに祈りを捧げると心新たな気持ちに。■全国的にも有名な「御室桜」江戸時代から庶民の桜として親しまれ、多くの和歌にも詠われている「御室桜」は遅咲きで有名。仁和寺の御室桜が咲き誇る4月中頃には多くの人が訪れます。大正13年、国の名勝に指定されました■可愛らしい「お守り」いろいろ「幸福(クローバー)守」には天然のクローバーが施され、多くの幸福が舞い込むように祈願されています。「御室桜開運守」は開運や健康が祈願され、お土産にも人気。授与料は各500円。■お部屋に飾れる「桜おみくじ」桜の中にはくるくると巻かれたおみくじが入っており、桜の入れ物は持ち帰って部屋のインテリアとして飾ることもできます。ピンクと白色の2種類。授与料300円。今回の観音堂公開情報平成大修理完遂 仁和寺観音堂 特別内拝春季 2019年5月15日(水)~7月15日(月・祝)秋季 2019年9月7日(土)~11月24日(日)拝観時間:9:30~16:30(16:00受付終了)※宗教行事により拝観時間が制限される場合がございます。詳細は仁和寺HPをご確認ください。拝観料:一般1,000円(記念品付き)・高校生以下無料※次世代に文化を継承するという目的により高校生以下は無料となります。世界遺産 真言宗御室派 総本山 仁和寺TEL: 075-461-1155住所: 京都市右京区御室大内33拝観時間[3月〜11月] 9:00~17:00(16:30受付終了)拝観時間[12月〜2月] 9:00~16:30(16:00受付終了)JR「花園駅」より徒歩約15分もしくはタクシーで約5分JR「円町駅」より市バスにて約10分JR「京都駅」より市バスにて約40分京阪電鉄「三条駅」より市バスで約40分阪急電鉄「大宮駅」より市バスで約30分・「西院駅」より市バスで約25分※拝観料が必要な場所・時期があります。http://www.ninnaji.jp/
石原かんな
ライター
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BLOG京ノ旅手帖
2019.04.24
「水無月」を知る、初夏の京都旅
初夏の京都に登場する、あの三角形のお菓子は...?6月になると京都でよく見る、どこか涼しげなあの三角の和菓子。「これって何だろう...?」。京都在住でなければ、初めて見る方も多いかもしれませんね。今回はそんな"あの三角の和菓子"について、知識を深める旅に出てみました。 京菓子の老舗・亀屋良長さんへまず向かったのは、四条烏丸の交差点を西へ10分ほど歩いたところにある、亀屋良長さん。名水の湧く地として古くから知られる「醒ヶ井(さめがい)」という地で200年以上、美しくておいしい和菓子を作り続けています。こちらで"あの三角の和菓子"について詳しく教わることができました。正体は「水無月」「それは、水無月(みなづき)というお菓子ですよ」と、教えて下さったのは8代目ご主人・吉村良和さん。みなさんは「夏越の祓え(なごしのはらえ)」をご存知でしょうか。1年のちょうど半分にあたる6月30日に、半年間の穢れや邪気を払い、残り半年を健康で過ごせるように祈願する行事のことです。水無月はこの行事の一環として、主に京都で食べられているようです。 なぜ三角形なのか?もちっとしたういろうに小豆が敷き詰められた三角の形が、水無月の基本スタイル。その始まりは室町時代にさかのぼります。宮中で行われていた「氷を食べて暑気払いする」行事が始まり。ただ、氷は庶民には手の届かない高価なもの...。そんな氷を模して作られたのが、水無月の三角の形なのです。ちなみに、小豆には悪いものを払う意味が込められています。水無月作りの現場に潜入特別に水無月作りの工程を見せていただけることに! 「使う材料はどこも同じ。でも、店ごとに味が違う。それが和菓子の面白さですね」。そう語るのは、この道30年の職人・日野山文雄さん。作る時に大切にしているのは、食感。暑い季節に食べるものなので、つるんとしたのど越しを意識して作っているそうです。仕込みに手間がかかるのは小豆。3回に分けて蜜につけ、目標の糖度に近づけるので、完成に3日もかかるとか。 北海道産大粒小豆がつやつや輝く姿に、思わず見とれました。蒸す、切る水無月は2回の蒸す工程を経て、完成します。まずはういろうを蒸し、小豆をのせてまた蒸す。蒸しあがりを待っている間も、漂ってくる甘い香りにうっとり...。20分ほどで蒸しあがりました。これがあの、三角の水無月の原型! 迫力満点のサイズ感です。熱々の状態では綺麗に切れないので、冷ましてから切っていきます。大きさを測りながら、美しく均等に切る分けるのは、まさに熟練の技。流れるような作業風景に、見入ってしまいます。喫茶スペースで、いただきます!水無月が販売されている期間は、併設の喫茶スペースでいただくことも。価格は1つ292円(税込)、お抹茶などといただける季節の生菓子セットは918円(税込)です。上品な甘さともっちりとした食感...けれど、のど越しはすっきり。確かに、これなら暑い時期にもぴったり! 京都に根付く「夏越の祓え」の文化。販売される6月末の3日間は、水無月しか売れない!? というくらい、水無月を求めるお客さんで賑わうそうです。「和菓子は異文化を繋ぎ、平和な空間を作るもの」と語る吉村さん。初夏という季節を感じながら、みんなでワイワイ和菓子をいただく、というのもよいかも知れませんね。 ■亀屋良長京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19地下鉄四条駅から徒歩10分075-221-20059~18時6月28~30日(発売期間)https://kameya-yoshinaga.com亀屋良長さんの京菓子手づくり体験https://www.mbs.jp/kyoto-chishin/culture/confectionery.shtml私のおすすめ水無月亀屋良長の職人さんが語っていたように、水無月は店ごとに見た目や味が少しずつ違うのが魅力です。京都散歩の際、ふらりと入りたくなってしまうような、私のおすすめの和菓子店を3店ご紹介。食べ比べするもよし、来年の楽しみにするもよし。どのお店でもこだわりの水無月を味わえます。重厚感のある町家建築が素敵「大極殿本舗六角店」四条河原町でお買い物の帰りに立ち寄ったのは「大極殿本舗六角店」さん。かかっているのれんの色柄は季節によって変わります。こちらの水無月は本葛を使用していて、コシのある食感が特徴です。白、抹茶、黒糖と3種の味があり、どれをいただこうか、迷ってしまいますね。1つ200円(税込)、予約価格は180円(税込)です。 ■大極殿本舗六角店京都市中京区六角通高倉東入ル堀之上町120地下鉄四条駅から徒歩7分075-221-33119~19時(販売)、10~17時(喫茶)6月28~30日(発売期間)御苑散歩の折に行きたい「俵屋吉富」天皇陛下の即位でも話題になった京都御苑に訪れた時は、ぜひ「俵屋吉富」さんへ。創業はなんと宝暦5年(1755)! 西陣の地に260余年も店を構えています。ふんだんに入った大粒の小豆の歯触りが心地よいこちらの水無月は、白・黒糖と2種展開。歩きつかれた体をしっとり癒してくれます。1つ303円(税込)。■俵屋吉富京都市上京区室町通上立売上ル地下鉄今出川駅から徒歩5分075-432-22118~17時6月1日~30日(販売期間)http://www.kyogashi.co.jp/a-index.html控えめな甘さに、上品なサイズ感もうれしい「京菓匠 鶴屋吉信」フィギュアスケートの人気選手の選曲で一躍有名になった晴明神社。お参りの帰りに「京菓匠 鶴屋吉信」さんに立ち寄り、併設のお休み処で水無月とお抹茶のセット1,026円(税込)をいただきました。南丹・馬路の大納言を使ったこちらの水無月は、歯切れのよいもちっとしすぎない食感が癖になりそう。甘さも控えめで上品です。■京菓匠 鶴屋吉信京都市上京区今出川通堀川西入ル市バス停堀川今出川徒歩すぐ075-441-01059時30分~18時(LO17時30分)6月1日~30日(販売期間)https://www.tsuruyayoshinobu.jp/shop/旅を終えて...6月の京都に登場する三角形のお菓子の正体は「水無月」でした。昔から続く文化の一部である水無月。小豆の大きさや、ういろうの食感もお店によって少しずつ違うので、食べ比べてお気に入りを探すのも楽しそう!みなさんも、水無月を食べて夏の健康を祈ってみませんか?※価格は取材当時のもの
西垣 愛佳
ライター
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BLOG京ノ旅手帖
2019.04.24
新茶の季節到来!京都で立ち寄りたい、急須で淹れた宇治茶が飲めるカフェ5選
宇治茶は京都を代表する緑茶の名称で、静岡茶、狭山茶と並んで日本三大茶と呼ばれ、日本を代表するお茶のひとつです。鎌倉時代から生産されていたと言われ、創業数百年の茶舗も数多くあります。近年は海外で注目されたり、ペットボトルとして発売されるなど人気の高まりを感じる一方、急須で飲む茶葉の生産量は減少傾向にあるのだとか。そんな宇治茶の美味しさを茶葉や淹れ方からこだわって提供してくれるお店を見ていきましょう。築100年の古民家を活かした「aotake」で、日本茶と向き合う至福の時間 2018年8月にオープンしたaotakeは、京都駅から徒歩10分、高倉通りに面した角地にあります。 店主の田中さんは、2017年までf同名のカフェを木津川市で営業されていて、メディアで紹介されるほど人気がありました。もっとお茶と向き合いたい、お茶にこだわりたいという想いから、京都市内に移転したのだとか。以前に比べ狭くなり席数も減りましたが、ていねいに接客するにはちょうどいいサイズと使い勝手なのだそうです。お店は、大正元年に建てられた古民家をリノベーションしていて、もともと使われていた古材や家具が上手に活かされています。靴を脱いであがる店内は、誰かのおうちに招かれたようでほっとくつろげます。ほの暗い室内から見える庭がとても印象的で、まるで絵のようで素敵です。メニューは、日本茶・紅茶・中国茶と手作りスイーツ。お茶は店主の田中さんが自らセレクト、自信を持って勧められるものばかりです。特に味わってほしい日本茶は「手摘み玉露」。宇治玉露の中でも評価の高い米田さんのもので、自宅用に購入するには躊躇するような価格なのだそう。一煎目は50℃で2分ほどかけてじっくり抽出。そうすることで濃厚な旨味と甘味が引き出されます。口に含むと、これがお茶?と驚くような豊かな味わいに衝撃を感じるほどです。二煎目は60℃、三煎目は75℃と温度を上げていくので、渋みも味わえます。一煎目は田中さんが淹れてくださいますが、二煎目からはセルフで。不安な時は田中さんにおまかせしてもOKです。柔らかくとろとろな豆腐白玉とともに味わってみてください。木津川のお店でもイベントでは日本茶を出していたそうですが、通常メニューに加えたのは移転してから。お店の規模が小さくなった分手間が減り、お茶に時間が注げる。お客さま一人ひとりにたっぷり時間をかけることができ、一番いいタイミングで提供できる...木津川で叶わなかったことが実現できて、今が理想的と語る田中さん。 おいしいお茶を気軽に飲みに来てほしい、そう願う田中さんの想いが、京都市内で花開こうとしています。■ aotake京都市下京区七条通高倉材木町485070-2287-6866 11:30〜18:30(L.O.18時)火曜日・水曜日 休京都駅から徒歩10分できたてアツアツの本わらび餅を、こだわりで揃えたお茶とともにめしあがれ「茶菓 えん寿」太秦・大映通り商店街にある「茶菓 えん寿」は、2017年8月オープンの比較的新しいお店。広隆寺から徒歩10分ほどのところにあります。老舗和菓子店「老松」で18年修行をした泉さんが、切り盛りしています。喫茶店は「喫茶」(茶を喫する)場所なのに、扱う飲み物はコーヒーばかりでお茶じゃないの?そんな疑問からお茶の勉強がしたい、お茶には和菓子がつきもの、和菓子といえば京都が盛んだろうと、故郷北海道から京都へやってきたという泉さん。そんな想いや修行の甲斐あって、文字通り喫茶店をオープンすることができました。観光地への出店も考えたそうですが、太秦にした理由は、若い世代がたくさん住んでいるから。若い人たちにカフェの感覚で立ち寄ってもらいたい、日常にお茶を取り入れてもらいたい、という想いからだそうです。 取り扱うお茶は、シングルオリジン(単一品種)ばかり40種ほど。老松仕込みの和菓子とともに味わえます。お茶は宇治茶や静岡茶など有名なものから、種子島といった珍しい産地のものまでさまざま。しかもおいしいと納得したものをおすすめしたいと、自ら産地を訪れ選んだのだそうです。直接生産者をたずねることで、どんな人がどんな土壌で育てたかがわかり、知見が増えます。お客さまに提供する際、エピソードを添えることで、より関心を持ってもらえて一石二鳥。びっくりするような山奥の産地もあり苦労が多かったそうですが、素晴らしいお茶の前ではそんな苦労も吹き飛ぶのだとか。イチオシメニューは、煎茶と本わらび餅のセット。国産本わらび粉、甘味、水のみでシンプルに作られています。注文のたびに作られるので、できたてアツアツがいただけます。わらび餅というと白いものをイメージしますが、本わらび粉で作ると黒っぽい色。そして弾力と伸びのよさとなめらかに驚きます。黒蜜がいらないほどの自然な甘みが、煎茶の爽やかさとマッチしていておいしいです。京都産の煎茶でオススメは、和束で作られた「やぶきた」。通常行われる"かぶせ"の作業をしていない品種で、お茶特有のさっぱりとした味が強く出るのだそう。旨味もしっかり感じられ、さっぱりと旨味のバランスが絶妙です。 一煎目は泉さんが、二煎目以降はセルフで味わうスタイル。手をかけ作られているお茶は、二煎目以降もしっかり味が出るそうで、五煎ほど味わえるものが多いそうです。煎茶ならではの、淹れるごと変わる味をじっくり楽しんでみてください。■ 茶菓 えん寿京都市右京区太秦多藪町14-93 chien viverrin1階075-432-7564 10:00〜17:00木曜日・第3水曜日 休嵐電・市バス 帷子ノ辻駅下車 徒歩約5分情緒ある京町家でいっぷく「丸久小山園 西洞院店・茶房 元庵」で上質なお茶を味わいたい二条城近くにある「丸久小山園 西洞院店 茶房 元庵」は、創業300年を数える丸久小山園のアンテナショップとして、2008年夏にオープンしました。 築120年の町家を使った造りで、庭を望むテーブル席と二畳の茶室もあります。街ナカにありながら、静かで落ち着いた雰囲気の中で、お茶やスイーツが味わえます。店頭ではお土産のお茶を購入することもできます。長らくお茶の製造卸として営んでいた丸久小山園。以前は消費者との接点が少なく、存在を知ってもらう機会が少なかったといいます。じっくりと直に商品を見てもらいたい、味わってもらいたいと、茶房を開いたのだそう。丸久小山園のお茶は百貨店でも購入できますが、じっくり買い物ができて、お茶もできる茶房は評判がいいのだとか。国内外問わず、観光で訪れる方が多いそうですが、お茶好きの地元の人たちも気軽に利用しているそうです。茶房でいただけるのは、煎茶や抹茶、抹茶スイーツやかき氷(夏季限定)もあってバラエティ豊か。中でも煎茶「翠の院」は、香り立ちが豊かで、旨味のバランスがよいが特徴。コクと旨味が存分に感じられます。上質なものを味わってほしいと、社長自らブレンドし商品化したそうで、西洞院店のみの限定商品です。 一煎目はスタッフ、二、三煎目は自分で淹れて飲みます。淹れ方は丁寧にアドバイスしてくださるので、自分でもおいしいタイミングで淹れることができます。お茶は単品でもいただけますが、和菓子のセットがイチオシ。季節に応じた和菓子が数種類用意されるので、好みのものをどうぞ。主張しすぎない甘味が、お茶のおいしさをより際立たせてくれます。淹れるごとに変化するお茶の味わいとともに、絶妙なバランスをじっくり味わってみてください。種類によっては冷茶が用意されているので、すっきり飲みたいときや飲み比べするのもよさそうです。人気の抹茶のロールケーキは、自社の抹茶がふんだんに使われていて、苦味と旨味が口の中に広がりとても美味。合わせていただきたい自慢の一品です。 週末や休日午後は満席になることが多いので、ゆったりすごせる14時ごろまでの来店がオススメです。■ 丸久小山園 西洞院店・茶房 元庵京都市中京区西洞院通御池下ル西側075-223-0909茶房:10:30〜17:00(ラストオーダー) 売店:9:30〜18:00毎週水曜日(祝営業)、正月三箇日 休地下鉄烏丸御池駅より徒歩約6分<高品質な煎茶を気軽に味わってほしい「YUGEN」でいただく和束産シングルオリジン茶京都イチの繁華街、四条河原町から徒歩5分ほどの場所にあるYUGENは、町家をリノベーションしたコンパクトなお店。2018年7月のオープン以来、おいしいお茶が飲めると話題です。YUGENの店名は「幽玄」から来ていて、気品があり、優雅なことといった意味が込められています。店主・須藤さんは自身も茶道をたしなむほどお茶が好き。お茶や茶道というと敷居が高いイメージがありますが、気軽に自由に楽しんでほしいという想いから始めたそうです。観光地や繁華街から歩いていける場所に出店したのも、地元京都のお客さまが来店しやすいようにという配慮から。おいしくて上質なお茶を手の届く価格で飲めるよう、生産者から直接仕入れるなど工夫をしているそうです。店内は少し座席がありますが、基本はスタンディングスタイル。コーヒースタンドのようなスタイリッシュな造りで、本当に日本茶が飲めるの?というギャップさえ感じます。メニューは、煎茶と抹茶のものを用意。提供方法は異なりますが、すべてがテイクアウト可能で、四条通り界隈を散策しながら味わうこともできます。煎茶は、京都府内一大産地、和束産シングルオリジン(単一品種)を採用。旨味と渋みのバランスがいい「おくゆたか」、玉露の旨味が感じられる「ごこう」、煎茶ならではの爽やかさが際立つ「やぶきた」の三種類が用意されていて、味の個性が楽しめます。旨味や渋みのバランスはメニューにチャートで示されているので、好みと照らし合わせて選ぶことも。一番人気は「ごこう」。店内では2煎まで楽しむことができます。一煎目は65℃のややぬるめで抽出。低い温度で淹れることで、旨味が引き出されたおいしいお茶になります。二煎目は75℃で、煎茶らしい渋みへ変化しているのが感じとれます。添えられる小菓子は季節やタイミングによって変わりますが、お茶と一緒にいただくとよりおいしさが引き立つので、ぜひ一緒に味わってみてください。茶葉も売られているので、気に入ったお茶は家で楽しむのもアリ。有田焼の食器など、センスのいい伝統工芸品も置かれていて購入が可能です。どれもきちんと作られたものでありながら、手頃な値段なものが多く、お茶と共通するところがあります。技術を要する美しいもの、おいしいものを、日常に取り入れ楽しんでほしい...須藤さんはそんな想いで、日々お店を切り盛りしています。YUGENのお茶やグッズを取り入れるところから、いつもの生活を少しバージョンアップしてみませんか。■ YUGEN京都市下京区仏光寺通麩屋町入ル大黒町266-2075-606-5062 11:00~19:00 年末年始 休四条河原町から徒歩約5分邸宅の蔵でオリジナルの煎茶を「Salon de KANBAYASHI」で味わう老舗の味祇園や高台寺、インスタ映えスポットとして人気の八坂庚申堂近くにある「AKAGANE RESORT KYOTO HIGASHIYAMA 1925」。主にブライダルやパーティーで使われている施設ですが、カフェラウンジとして「Salon de KANBAYASHI」が併設されています。 宇治にある、創業450年の老舗茶舗「上林春松本店」とタッグを組み、カフェスタイルで日本茶を提案しています。カフェスペースとして使われているのは、100年以上前に建てられた邸宅にある蔵。改装され洋風に仕上げられていて、ホテルのような上質さが感じられます。上林春松本店といえば、ペットボトル飲料「綾鷹」の開発協力をして一躍有名になったのはご存知の通り。サロンでは、急須で淹れるお茶の味わいと文化を伝えたい、という想いを形にするために、上林春松本店の日本茶やお茶を使ったものをメインに提供しています。オリジナルブレンドの煎茶は、料理と合わせてもバランスの良い味に仕上がっています。これはSalon de KANBAYASHIで提供されているオリジナルスイーツに合うようにとブレンドされたものだから。二店舗あるSalon de KANBAYASHIでは、飲むだけではなく茶葉の購入も可能です。お茶を注文すると、スタッフの方がお茶やエピソードを話しながら、一煎目を注いでくれます。流れるような動きの中から抽出されるお茶は、やや茶色がかった色味。少しローストされた部分がブレンドされているためで、料理とのバランスからだそう。旨味と渋みのバランスが絶妙で、すっと喉を通ります。二煎目は自分で淹れますが、不安な時はスタッフさんにお任せを。丁寧に淹れてもらえます。お茶請けには「抹茶のガトーオペラ 枯山水」を。「琵琶の白」という抹茶の銘柄を使ったスイーツで、プレートに枯山水が表現されていてフォトジェニック。抹茶がふんだんに使われていて、特有の苦味が口に広がります。甘すぎず煎茶との相性がよくおいしいので、一緒に味わってみてください。 定休日は火曜日ですが、ウェディングがあるときは利用できませんので、訪問時は確認をお願いします。■ Salon de KANBAYASHI京都市東山区下河原通高台寺塔之前上る 金園町400番1アカガネリゾート京都東山1925 内 075-551-363311:30〜17:00 火曜日休日・土日祝不定休京阪電鉄祇園四条駅より徒歩12分阪急電鉄京都線河原町駅より徒歩15分JR京都駅よりタクシーで約13分***手軽においしいお茶が飲める時代ですが、急須で淹れるお茶はまた格別です。ハンドドリップでコーヒーを飲むように、急須で淹れた日本茶を飲んでみる。少し手間をかけ、出来上がる過程をも楽しむ...京都へ旅行に来たときぐらいは"一杯のお茶に時間をかける贅沢"を体験してみてはいかがでしょうか。今回ご紹介したお店は、いずれも茶葉を販売しています。気に入ったお茶があれば買い求め、自宅でも急須で淹れるお茶にトライしてみて。急須がなくても、まずは手持ちのポットなどで淹れてみてください。まずは形式にとらわれず、自由に取り入れてみましょう。先人たちが受け継ぎ残してきた、素晴らしい日本茶の文化。現代の生活になじませながら、上手に生かしていきたいですね。
デブ子デラックス
京都在住ライター