2023年10月26日(木)公開
『登録でポイント3万円分』有名インフルエンサーを信じたフォロワー...『借金30万円』抱える結果に 専門家「返済責任を免れるのは難しい」
特命取材班 スクープ
『ここからの登録でポイント3万円分をキャッシュバック』。このような投稿をSNSなどで見かけることはないだろうか。有名なインフルエンサーが発信していることもあり、投稿内容を信じて登録してしまう人が多くいるという。しかし、登録を進めていくうちに『いつの間にか消費者金融から借金をさせられていた』という被害が相次いでいる。
「LINE追加で3万円分のポイント」SNS広告から登録…気が付くと『30万円の借り入れ』
今年9月にフォロワー数34万人のインフルエンサーがSNSで公開した広告。
【SNSに掲載された広告より】「事前登録したら3万1000円分のキャッシュバック」「お金は1円もかからないよ」
クレジットカードやポイントカードの登録を専用リンクから行うと3万1000円分のポイントが貰えるという。しかし、この誘惑に騙されたと訴える人が相次いでいる。
(マユミさん 仮名・20代)「第三者が私の名義で勝手に借りちゃって。30万円まるごと出金されました」
インフルエンサーをフォローしていたマユミさん(仮名・20代)。この広告を信じて30万円の被害にあったという。マユミさんが広告から登録画面へと進むと…
(マユミさん 仮名・20代)「クリックすると(消費者金融業者の)登録画面に。年収200万円とか希望額50万円とか、これを入力してくれっていう指示が来て。(Q違和感は抱かなかった?)この時にあれっ?と少し思ったんですけど、そのまま進んじゃった感じですね」
マユミさんによると手口はこうだ。まず広告に記載されているリンクからLINEを友達登録する。すると広告主の『A社』を騙る人物から消費者金融への登録を促すメッセージが届く。A社を語る人物は「ポイントのために登録が必要」「借り入れはしない」などと説明して、指定したIDとパスワードで消費者金融へ口座登録をさせる。そしてアカウントができると勝手にマユミさんのアカウントで消費者金融から30万円を借金して引き出すというものだ。
(マユミさん 仮名・20代)「3万円分というポイントで食いついちゃったので。怒りというか悔しい気持ちですね。名義を持っている以上はたぶん私が支払わないといけないと思います」
被害者は複数…インフルエンサーの説明は?
被害者はマユミさんだけではない。
(ミクさん 仮名・20代)「違和感は正直一切なくて。出金も一切しませんっていう確約の言葉が記載されていたので。その時にちょっと信じ込んでしまった」
ミクさん(仮名・20代)も同じインフルエンサーの発信を信じて消費者金融に登録。同様の手口で20万円を騙し取られたという。
(ミクさん 仮名・20代)「一番は悲しいですかね。私が登録してしまったっていうのが悪いのはわかっているんですけど。法で裁くじゃないですけど何かしら罰を与えてほしい」
類似の事案では逮捕者も出ている。10月19日にフォロワー14万人のインフルエンサーを使った同様の手口で男が逮捕された。20代の女性の名義を使って不正に消費者金融から現金20万円を借りたとみられている。
マユミさんらの事案で広告塔となり被害の発端となったインフルエンサーは詐欺に加担していたのか?インフルエンサー側はSNSで涙ながらこう釈明している。
(インフルエンサー側)「本当に被害にあわれた方々、本当に申し訳ないです。ごめんなさい。相手のことをすっかり信じ切ってしまっていて、悪気があってもちろん皆さんを騙したわけではなくて…」
インフルエンサー側は「詐欺とは知らず悪気はまったくなかった」と訴えた。また、今回の広告掲載で報酬は受け取っておらず、警察や弁護士に相談していると話している。
法律上で『被害者』となるのはマユミさんらではなく「消費者金融業者」
今回の被害を法律で裁くことはできるのか?消費者問題に詳しい専門家は次のように話す。
(松尾・中村・上法律事務所 松尾善紀弁護士)「被害者を利用して(お金を)騙し取ったということが立証できるのであればですね、詐欺罪等に該当する」
しかし、ある問題が…
(松尾・中村・上法律事務所 松尾善紀弁護士)「消費者が被害者になるのではなくて、あくまでもお金を取られたのは消費者金融業者ということになるので、消費者金融業者自身が被害届を出さないと警察はなかなか動いてくれない」
松尾弁護士によると、マユミさんら被害者は30万円や20万円の返済義務を負っているが、お金を直接取られたわけではない。直接的な被害者は消費者金融であり、法律上、詐欺罪の被害者はマユミさんらではないというのだ。
(松尾・中村・上法律事務所 松尾善紀弁護士)「(被害者は)お金を引き出すためのIDとかパスワード等を業者に教えてしまっているということなので、やはり返済責任を免れるのはなかなか難しい」
A社を騙っていたが…実在のA社は『勝手に社名を使われた』『弊社は一切関係ない』
詐欺に利用されてしまった『法律上の被害者』である消費者金融業者はどのように対応しているのか?担当者は次のように話した。
(消費者金融業者 担当者)「個別事例については答えられない。本当に第三者による詐欺か見極める必要があり、ケースバイケースで対応している」
詐欺の注意喚起を訴える文言をHPや申し込み画面に表示するなどの対策をとっているという。
今回、マユミさんらを騙したA社を語る人物が提示していた住所を調べると、東京都内にある会社で、屋号は『A社』となっている。取材班がその場所に向かうと、ビルの一室に確かにインフルエンサーがPRしていた電子マネーを扱うA社が入居していた。そしてMBSの取材に対してA社は「勝手に社名を使われた」と話した。
(A社)「詐欺行為について弊社は一切関係ありません。SNSの運営会社に『なりすましアカウント』の削除依頼を行っております」
記者がA社を騙る人物にLINEで罪の意識や被害者への弁済を考えているかなどの質問を送ったが相手からの反応はなかった。インフルエンサーもファンも騙されていたとみられる今回の事案。こういった手法があることを知り、安易な登録を行わないことでしか被害は防げないのかもしれない。
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