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「電話番号100以上あります」と豪語するSMS認証代行業者も...盗品販売などに利用されるケースもある『犯罪インフラ?』の実態

特命取材班 スクープ

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 SNSやネットショッピングなどを利用するにあたり、セキュリティ強化のため一部サービスで導入されている本人確認の方法に「SMS認証」がある。メールアドレスではなく電話番号あてのSMS(ショートメッセージサービス)で認証用の番号などを送るものだ。本来は本人確認を行うために活用されている認証だが、これをほかの人にお金を払って代行してもらうSMS認証代行というビジネスがある。犯罪に利用されているケースもあるというその実態を取材した。

狙われる「電動アシスト付き自転車のバッテリー」 盗品がフリマサイトに出品されることも

 去年8月、大阪府八尾市内の駐輪場で、タバコをくわえながら自転車に乗ってやってくる男の姿を防犯カメラが捉えた。男は駐輪場に止めてあった1台の自転車の横で何かをしている。その後、男は画面から消えた。
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 この自転車を見てみると、サドルの下にあった何かがなくなっている。男が盗んだものは電動アシスト付き自転車のバッテリーだ。
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 男は盗んだバッテリーをオークションサイトで8000円で販売するなどし、落札されていた。大阪府内では去年1年間で電動アシスト付き自転車のバッテリーを狙った窃盗事件が366件発生していて、おととしから被害が3倍に急増している。その背景として指摘されているのが『匿名での売買』だ。
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 大手フリマサイトにはバッテリーが大量に出品されている。個人を特定されたくない一般の売り手にとって匿名は便利で安心だが、警察は、盗品販売で匿名を悪用する例もあるとみている。

 (フリマサイトを見る記者)
 「こちらもバッテリーが単体で売られているようですが、見ただけでは盗品かどうかはわかりません。匿名発送となっています」
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 取材班は盗品かどうかを調べるために1つ購入してみた。すると届いたのは一部が割れたボロボロのバッテリー。発送元の情報は匿名だった。結局、盗品かどうかはわからなかった。そもそもなぜフリマサイトで盗品が売買されているのか。

アカウント作成時に行う「SMS認証」

 多くのフリマサイトなどでは、アカウントを作成する際にまず携帯電話の番号を入力する。すると認証コードがショートメッセージで送られてくる。他人になりすましてアカウントが作られることを防ぐためで「SMS認証」と呼ばれている。認証コードを入力すると、名前や住所など個人情報を入力し、アカウントを作成することができるのだ。
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 (記者リポート)
 「SMS認証が必要なアプリに実際に登録してみます。画面の指示に従ってこの携帯電話の電話番号を入力します。するとショートメッセージには4桁の認証番号が届きました」

 こうしてSMS認証が完了し、住所などの個人情報を入力するとアカウントが作成される。

「Instagram1500円、ヤフオク2000円…」SMS認証を代行 専門家は犯罪に当たる可能性を指摘

 本来であれば自分の電話番号を使い、自分の住所や名前を登録してアカウントを作る。しかし、犯罪に利用されるアカウントの多くは“ある方法”を使って作成されているという。それが『SMS認証の代行』だ。ツイッター上にはSMS認証代行の文字が飛び交っている。
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 【ツイッターに書き込まれた文言】
 「SMS認証代行してます!」
 「SMS認証代行。アカウント各種在庫あります」
 「#SMS認証代行」
 「Instagram1500円、ヤフオク2000円、ラクマ2000円、メルカリ2500円」

 フリマサイトなどのアカウントを作る際に必要なSMS認証を数千円で代行してくれるという。
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 取材班は、ある「SMS認証代行業者」にメッセージを送ってみた。

 【代行業者とのメッセージでのやりとり】
 (代行業者)「PayPay払いお願いします。確認後に対応いたします」
  (取材班)「支払い後、どういった手順で手続きが進みますか?」
 (代行業者)「振り込み確認後にこちらが指定した電話番号を入力してもらい、届いた暗証番号をお伝えする流れです」
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 この代行業者によると、アカウントを作成するために、代行業者から伝えられた電話番号を入力する。認証コードは代行業者側に送られるが、そのコードが伝えられ、SMS認証を完了することができるのだ。その後、偽名などを使ってアカウントを作成するという。
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 こうしたSMS認証代行は犯罪行為ではないのか。IT犯罪に詳しい専門家に話を聞いた。

 (IT犯罪に詳しい成蹊大学の高橋暁子客員教授)
 「私電磁的記録不正作出罪などに当たる可能性があるとされています。これは代行を行った人だけではなくて電話番号などの提供者もそのような罪に当たる可能性があるとされています。盗品などを販売するケースが非常に多いですね」

匿名配送の“ブランドの財布” 出品者は「本物」というが…

 犯罪行為に利用されている可能性が高いSMS認証代行。取材班はフリマサイトでこんな出品物を見つけた。

 (記者リポート)
 「フェラガモの財布です。新品と書かれています。本物のフェラガモの財布なのでしょうか。1万3500円と書かれています」

 出品者はやはり匿名配送になっている。こうしたアカウントがSMS認証代行によって作成された可能性がある。出品物は本物なのか。
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 取材班が出品者にメッセージを送って質問してみた。

 (出品者から送られてきたメッセージ)
 「はい、もちろん本物です。不用品なので、特にお値段にこだわりはありませんでした。もし、不安であればキャンセルいただいても結構です」
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 取材班は検証するため、このフェラガモの財布と、フェンディのロゴが入った袋が写真に映った靴下を購入した。
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 5日後、フェラガモの財布と1399円の靴下が届いた。財布にはロゴなどがあり、正規品のようにも見える。
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 (記者リポート)
 「財布は新品と書かれていたのですが、裏面に少し傷があります」
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 一方、靴下は…。

 (記者リポート)
 「普通のボーダーの靴下のように見えます。ロゴも特に入っていません。薄めの普通の靴下です」
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 購入した2つの商品を念のためブランド買い取り販売店に鑑定してもらった。

 (ギャラリーレア東心斎橋店 齋藤店長)
 「こちらはフェンディとはたぶん別で、3色のボーダーソックスだと思います。たぶんフェンディのものというわけではなく、靴下にフェンディの袋が付いているという出品かなと思います」
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 そして出品者が本物だと主張していたフェラガモの財布はどうなのか。

 (ギャラリーレア東心斎橋店 齋藤店長)
 「大変申し訳ありません。こちらのお財布なんですが、ちょっと弊社の基準というものがございまして、そちらに満たない品物ですので、弊社ではお値段が付けられない判断になります」

 財布はニセモノの可能性が高いことがわかった。偽ブランド商品を販売することはフリマサイトであってももちろん違法行為だ。
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 こうした実態に対して大阪府警の捜査幹部は「昔は実店舗で販売していた偽ブランド品はほとんどがネット販売になっている。ネット販売は匿名性が高く摘発が難しい側面もある」とコメントする。

「データSIM」に警察は注目 代行サービスの男を摘発も

 今回、取材班とツイッター上でやり取りしたSMS認証代行業者に、認証代行で使える電話番号をいくつ持っているのかを尋ねると、「100以上ある」と返事があった。こうした実態について改めて専門家に話を聞いた。

 (IT犯罪に詳しい成蹊大学の高橋暁子客員教授)
 「スマホとかの場合はSIMカードというのが必要なんですけど、通話はできないけれどネットとかSMSが使える『データSIM』というのがある。データSIMは非常に安く手に入るということで、このようなSMS認証というのがはびこっている状態となっています」
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 警察もデータSIMに注目している。代行サービスを名乗り偽名で大量に契約していた男を摘発し、カード3600枚を押収するなど警戒を強めている。

 こうした問題について、大手フリマサイトのメルカリは「詳細な方法はお伝え出来ませんが、SMS認証代行による会員登録は排除するよう努めております」と説明。また通信事業者などの業界団体であるテレコムサービス協会も「SMSつきデータSIMの契約についても音声SIMと同様に本人確認を求める対策を実施し、今後拡大させる方針です」としている。

2022年05月06日(金)現在の情報です

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