今だからこそ『テレビについて』しゃべる
西田二郎(ytvプロデューサー)×村田元(MBSプロデューサー)
「"説得力"について」


村田:「説得力」はほんとに持ちたい。
西田:ないの?押しつけてしまうの?
村田:「わからんかー!」ってなっちゃいますね。二郎さんは?
西田:単純な話でね、ダウンタウンのお二人をどのような形で伍して、と言うか、別にイーブンというわけじゃないですけど、僕は『ダウンタウンDX』を始めた時の自分の感覚でいうと、『ごっつええ感じ』があって『ガキの使い』があって、キー局の名だたる演出力っていうか、お笑い力というか、俺たちはダウンタウンとできるでって、すんごい「お笑いの筋肉」持ってる人たちが集ってるわけですよ。僕なんか『11PM』 とかをずっと「ふしぎ」にやってだけやから、「『ふしぎ』もちょっとだけ混ざとってええぞ」みたいな感じで入れられてたんですよね。その「ふしぎ」をなんとなくうちの会社は、「ふしぎ」で入ったから「ふしぎ」のまま、ちゃんと大切にしようぜ、って言う感じで優しかったんですよ。4、5年経っても僕は意外と傷んでなかった。あいつは「ふしぎ」で入ってんねんからな、って誰かが伝えたのか、制作でこいつの「ふしぎ」の感じわかるわ、って思ってもらえたのか。だから、むらげんに憧れてるのは、いろんなものに対してのソリューションをいっぱい聞かれるやん。僕、なんにも聞かれない。「おい、二郎、ちょっと相談あんねん」とか全然声かかれへん。なんなん、このほったらかされてる感じ。嫌われてんのかなと思うくらい(笑)でも、後で思ったのは、ガチャガチャしたこと言うな、とか、ほったらかしとったらなんとかなるで、みたいな加減があったんちゃうかなって。
村田:でも、そうなると勝手にいろいろやっちゃいますよね。
西田:もう勝手に自分でやるしかないんですよ。だって、誰も何も言ってくれへんから、自分で探しに行くしかないんですよ。そんなところでいうと、ダウンタウンに関しても、さっき言ったみたいに名だたる人たちがいる、僕はもう全然「お笑いの筋肉」なんかないと思ってる、だから、最初から戦い方も違うわけですよ。フジテレビや日本テレビのすごい「お笑いの筋肉」持ってるディレクター、演出家、プロデューサー人たちと比べたら、僕なんかなんにもない。なんにもないけど「枠」というものを預かってんのは同じなんですよ。見る人からしてみたら、「お笑いの筋肉」があろうがなかろうが、そのパフォーマンスがちゃんと出て、見られるものだったらいいんですよ。自分は戦い方として無理やなと思ったので、ダウンタウンとの接し方も全く違って、「お笑いの筋肉」的な話なんかしないわけですよ。で、日常の話もしない。「浜田さん、服とかどこの好きなんですか?」とかも言わないから、何も話すことがないんです。だから、自分が考えたことを伝えることだけしかできない。それを考えてる時は、ダウンタウンができることを考えるというよりも、ダウンタウンができるかできないかわからへんけど、僕がテレビの部分を任されてる人として、テレビの人間が作る映像、「画」を考えてきました、っていう話だけをしてたんです。


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ダウンタウン「じゃあ、お前それ何がおもろいの?」
西田「わかりません」
ダウンタウン「いや、わかれへんちゃうやん。企画考えてんねんから、おもろいのあるやろ。これ全然おもんないやん」
西田「あ、そうなんですか」
ダウンタウン「何がやりたいのん?」
西田「画が見たいんですよね」
ダウンタウン「画ってなんやねん」
西田「2人がこないしてる画」
ダウンタウン「俺ら、画なんかどうでもええわ。中身ちゃんと考えてくれや!」
西田「あ、そうなんですか。わかりました、考えてきます」
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西田:で、翌週また打ちあわせ行くんですけど、無理なんですよ、僕「笑いの筋肉」ないから。
作家さんとかにつけてもらおうとするんですけど、そんな付け焼き刃の筋肉なんて、ふたりには絶対にバレる。むしろ、こんな時は筋肉取ったほうがいいんですよね。で、一応いくつか内容はできるんですけど...。
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浜田「なんやこれ、あかんがな。何がしたいねん」
西田「いや、画が見たいから」
浜田「何の画が見たいねん」
西田「いや、僕はテレビでこんな画が見たいんです」
浜田「俺ら、そんなん何の興味もないわ!松本もそうや。もうこんなんやめようや!」
西田「いや、いいと思うんですよね...」
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西田:もう、お笑い論にはなってないんですよ。
村田:強情を張るだけ?
西田:僕には僕の正義があって、ダウンタウンにはダウンタウンの正義があるんです。でも、これはダウンタウンの舞台をやってるわけじゃないんです。テレビなんですよ。だから、トータルでやろうと。僕は「画」、「笑い」はダウンタウン。それの何があかんのですか、って顔を平気でする。だから、僕は笑いの説明なんかをしに行かないですよ。そんな失礼なことない。そしたら二人は「もうええわ」って、考えてくれはるんです。考えてくれはったら、その都度喜ぶわけですよ、ケラッケラ笑うんですよ。そんなんを繰り返してるうちに、二人が「もうわかった。お前の画見られるように考えるか」みたいになって、なんとなく舵が切られて、やってみたら二人もまんざらでもなかったみたいで...。
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浜田「二郎、どやった?」
西田「もうびっくりするくらい、僕が思ってた以上の画をいただきました!」
浜田「うるさいわー、アホ!」
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西田:って、なって終わる。説得してないな、これ(笑)
村田:すごいですね。そこまで正義を貫くって。
西田:折れそうになりますよ。自分で画にこだわってやってることが、ほんとに正しいかどうかなんてわかんないわけですからね。
村田:それはわかります。
西田:でも、何回か本当に実現したら視聴率で出るから、たくさんの方に喜んでいただけた指標にはなるから、そこを自分の武器にして、二人には「続けていきましょうよ」って言えたりするのかな。
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