BLOG京ノ旅手帖2019.07.09

京都の夏に味わいたい!レトロカフェのアイスメニュー【四条河原町編】

Byデブ子デラックス

厳しい暑さで知られる京都の夏。盆地特有の風が通りにくく蒸し暑い気候で、沖縄より暑く過ごしにくいと言われるほど。今年も猛暑になりそうで、油断できません。そんな真夏の京都旅、流行りのカフェで涼むのもいいですが、レトロなカフェですごすのも粋だと思いませんか?今回は、レトロカフェでいただける、夏にオススメのメニューをご紹介します。

老いも若きもいつだって夢中「喫茶ソワレ」のゼリーポンチ

まずご紹介するのは、阪急電車河原町駅そばにある「喫茶ソワレ」。昭和23(1948)年創業で、今年で71年。戦後すぐから営業の、歴史ある喫茶店です。

店内の木彫刻は、創業者の友人、彫刻家・池野禎春が、フランスの片田舎の教会をイメージして作ったのだそう。ひと粒ひと粒、丁寧に彫られたぶどうや、そのぶどうから連想されるワイン(酒)の神"バッカス"など、今となっては非常に希少価値の高いものになっています。

トイレのノブさえも手彫り。"パニック"の語源になったといわれる、ギリシャ神話に登場する半人半獣の牧神パンが描かれるなど、細部に至るまでこだわりが詰まっている贅沢な空間です。その時代だからこそ叶った、細やかで丁寧な仕事ぶりが垣間見えますので、じっくり眺めてみてください。

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店名のソワレとは、フランス語で「夜会」「素敵な夜」という意味。メニューの表紙にある文字「Soyez la bienvenve」は、フランス語で「ようこそいらっしゃいました」と書かれています。そして喫茶ソワレといえば特徴的なのが、ブルーのライト。 女性がきれいに見える灯りだそうで、創業者の友人、染色家・上村六郎の提案で取り入れられました。当時は夜中まで営業していたといいますし、"素敵な夜"の由来にとてもマッチしています。

絵画がたくさん飾られている中で、ひと際目を引くのが東郷青児のもの。創業者が店のイメージに合うと、気に入って絵を飾っていたといいます。それを見た創業者の画家仲間が「君の絵が飾られている」と、東郷青児本人を連れ来店したのだそう。それをきっかけに繋がりが生まれ、以来ソワレのためにイラストを描き下ろすようになりました。2階にある原画のほか、コースターやタンブラー・コーヒーカップなどにイラストが使われているのはご存知の通り。喫茶ソワレの雰囲気を、よりエレガントなものにしています。

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2階に上がると、窓から木屋町通りの桜の木が全面に眺めることができます。春は桜並木、夏は新緑、秋は紅葉と四季折々の風景が楽しめます。情景の移り変わりが近くで感じられる窓際席に座れたときは、外の風景も存分に楽しんでください。

三角の天井が教会をイメージして作られたというのがよくわかりますし、昔の人のサイズ感で作られたのでしょう、テーブルやイスが今と比べて小さめサイズなところにも時代を感じます。

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夏に喫茶ソワレで味わってほしいメニューが"ゼリーポンチ"。1978(昭和53)年、二代目オーナーの奥さんが考案したそうで、40年以上続く定番メニューです。

最近ではインスタ映えすると人気で、看板メニューになっているほど。サイダーにそれぞれ味の違うゼリーが5色、たっぷり20カット入っていて食べごたえ十分。1889年に発売、100年以上同じ製法で作られているサイダーは、刺激の少ない優しい炭酸。少しの間で炭酸が抜けてしまうほど繊細なので、写真を撮るのもほどほどに。

光にかざすときらきら輝いて涼しげで、これぞ夏イチオシのメニューです。数に限りがあり、早いときにはオープンから2時間ほどで完売するほど人気なのだとか。確実に食べたいときは、オープンすぐの入店がオススメです。

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ゼリーを使ったメニューはゼリーポンチだけではありません。ゼリーコーヒーも人気メニュー。アイスカフェオレの中にコーヒーゼリーが入っていて、ゼリーポンチに比べると大人の味に仕上がっています。

実はゼリーシリーズが生まれるきっかけになったのが、このゼリーコーヒー。1974年に生まれたといいますから、ゼリーポンチよりも少し先輩です。

それまでの喫茶ソワレは、男性客が中心。女性は男性に連れられ来る程度で、女性でも来やすいようにと、女性が食べたくなるメニューをと考え出されたのがゼリーコーヒーでした。

写真はゼリーコーヒーフロートですが、深煎りコーヒーの味わいを感じるコーヒーゼリーに、コクのあるアイスが浮かべられています。一緒にいただくと、苦味と甘味がミックスされ、大人だからおいしいと感じる味わい。

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ゼリーポンチと同じころにゼリーミルクというメニューも作られました。5色のゼリーが牛乳に入っているもので、ゼリーポンチとはまた違うおいしさがあります。牛乳臭さを消すためにミントが入っていて、さっぱり飲めるのもゼリーミルクの特徴です。

実はこのメニュー、牛乳が苦手な現オーナーのために、母である二代目オーナーの奥さんが考えたついたのだそうです。結局現オーナーの牛乳嫌いは解消されませんでしたが、子どものためにという、お母さんの愛が感じられるエピソードに温かさが感じられ、いいお店なんだろうと想像できますよね。そんな裏話も感じながら、味わってみたいものです。

ゼリーメニューはほかに、ヨーグルトポンチやゼリーワインもあります。いずれも手作りのため数量限定ですが、夏に味わってほしいメニューです。

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■ 喫茶ソワレ

京都市下京区 西木屋町通四条上る真町95
四条河原町交差点より徒歩約2分
075-221-0351
13:00~19:30(L.O. 1階18:00、2階18:45)
月曜日(祝祭日の場合は翌日)
http://www.soiree-kyoto.com/

幾多の文化人が通りすぎた、本物のレトロ喫茶「フランソア喫茶室」

喫茶ソワレから四条通りを渡り、南に歩いて約2分。四条河原町の交差点からすぐの「フランソア喫茶室」も、京都を代表するレトロカフェのひとつです。創業は昭和9(1934)年といいますから、85年もの間営業していることになり、老舗と呼ぶにふさわしいお店。

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長い年月の間には、画家・藤田嗣治や映画人・吉村公三郎、新藤兼人、フランス文学者・桑原武夫、矢内原伊作など、多くの著名人が常連として通っていました。

1970年の安保闘争のころには、全共闘の指導者が集結という場面もあったそう。見た目こそ物々しい彼らですが、店内でのマナーはきちんとしていましたよ、と、若くでお店を継いだオーナーは語ります。大学生の女性スタッフが、デモに行くから休ませてほしいという、時代を反映するようなエピソードも、今となっては笑い話です。

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現在は北と南の2フロア構成になっていますが、創業時は南側のみだったそう。窓からの光が明るく、白いイメージの南側には、フランスから取り寄せた壁紙が貼られています。2019年4月のリニューアルの際に、新しいものに張り替えられ、より明るい印象に。2、3年ほど前から完全禁煙になっていますが、それまでは、やになどで壁紙や調度品が汚れやすかったそうです。禁煙実施には喫煙家の反発もあったようですが、時代の流れもあり、今では好意的に受け取られています。

北側は、茶色の柱や赤いビロードの椅子が印象的で、南側に比べるとややダーク。イタリアンバロック様式の内装で、豪華客船のホールをイメージして作られたそうです。南側より少しあとの、昭和16(1941)年に建築された物です。

創業者の立野正一さんは、画家を目指していた学生だったので、店内には正一さんが集めた名画が数多く飾られています。フランソアという店名が、画家「フランソア・ミレー」が由来になっているのも、絵画をこよなく愛しているから。

貴重なイタリア・メディチ家出版の複製「モナリザ」は、昭和16年に店をつくるときに、関西に2枚だけあったものだそうですし、ピカソのリトグラフは、100分の3枚目で、ピカソが世界平和委員会に寄贈した作品が日本にきていた物を入手した物です。貴重なものがあちこちにあって、さながらギャラリーのよう。貴重な美術品を眺めながら、クラシックの調べに耳を傾けると、優雅な気分に浸ることができますよ。

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夏のオススメメニューは"ゆずスカッシュ"。オーナーの友人が営んでいる、農園のゆずを使ったスカッシュで、香りと色がよく味がまろやか。レモンに比べ飲みやすくさっぱりとしているので、暑い日に涼を取るのにぴったりです。

シックで上品な制服も、お店の雰囲気に馴染んでいます。創業当時から変わらないスタイルで、映画の舞台になった時は、主演女優も袖を通したのだそう。今どきのカフェでは見かけない、クラシックな制服にも注目してみてください。

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俳優・寺尾聰の父、宇野重吉の発案で生まれた、フレッシュクリームが入ったコーヒーや、フレンチトーストも人気メニュー。コーヒーは、今の時期ならキリッとアイスでいただくのがオススメです。

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平成15(2003)年、日本の喫茶店で初めて国の登録有形文化財にも指定された、フランソア喫茶店。由緒ある空間では、外のうだるような暑さも忘れることができるかもしれません。

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■ フランソア喫茶室

京都市下京区西木屋町通四条下ル船頭町184
四条河原町交差点より徒歩約3分
075-351-4042・FAX:075-351-4043
10:00~22:30(LO:サンドイッチ・トースト 21:30、ドリンク・ケーキ 22:00)
無休(12月31日、元旦、1月2日のみ休み)
http://www.francois1934.com/index.html

京都人に愛されてきた地元密着喫茶店「イノダコーヒ 本店」

京都市内をはじめ、関東や北海道にも支店がある「イノダコーヒ」。発祥の地、本店は四条烏丸交差点から歩いて10分ほどの、堺町通りに面した位置にあります。 白い壁の右側が旧館、左の黒い壁が本館で、コントラストが対照的。本館側ののれんをくぐって入店します。

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昭和15(1940)年、旧館"メモリアル館"から創業。当時は4席だけの小さな喫茶店でした。メモリアル館内部も、外観の白壁に「COFFEE」の文字も、ほぼ当時のまま。ハイカラな造りなのがよくわかります。当時の什器が置かれた味わいある空間は、長年営業してきた老舗だからこその価値。今も喫茶席として使われていて、希望すれば座ることができます。

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メモリアル館と並んで人気なのが、奥の旧館。室内に入れば、重厚感のある照明やインテリアが、レトロな雰囲気を醸し出します。ギンガムチェックのテーブル席がかわいく"インスタ映え"すると、若い世代も好んで座ります。2階建てのスタイリッシュな本館と合わせ席数211席は、イノダコーヒ全店舗の中で最大席数。庭には、喫煙OKのテラス席もあります。

希望の席がある時は、スタッフの方に伝えてみて。満席で待つこともありますが、待てば希望通りになることが多いです。

イノダコーヒのスタッフは、みなちょうネクタイをつけ正装をしています。接客も丁寧で気持ちよく、まるでホテルでサービスを受けているかのよう。ホスピタリティの高さにも注目してみてください。

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朝食からランチ、スイーツと幅広いメニュー展開をしているイノダコーヒですが、夏に味わってほしいのは"コーヒーフロート"。ミルク・砂糖入りの深煎りアイスコーヒーにレモンアイスが乗ってやってきます。

一般的にフロートというとバニラアイスを連想しますが、イノダコーヒでは、創業者のこだわりでレモンアイスが使われています。

製造過程でレモンの皮が使われますが、酸っぱさを感じる味ではなく、さっぱりとしたバニラアイスという位置づけ。コクのあるコーヒーとの相性が抜群で、深煎りなのに爽やかさえ感じられます。

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コーヒーフロートと一緒にプリンもいかが?昔ながらの味と形で、懐かしさを感じます。ほどよい硬さにたっぷりのカラメルがおいしい!シンプルですが、レトロなうつわに入れられおめかし。よりおいしそうに見えるから不思議です。食欲が落ちがちな夏でも、つるんと口に入るうれしいメニューです。

ところでイノダコーヒは「コーヒー」ではなく「コーヒ」という表記になっています。もともと"珈琲"と漢字表記だったのが、"こうひ"と平仮名になり、"コーヒ"になったのだそう。時間の流れが感じられるエピソードです。今も昔も京都人に愛されるイノダコーヒで、ひとときの涼しさを体感してください。

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■ イノダコーヒ

京都市中京区堺町通三条下ル道祐町140
四条烏丸交差点から徒歩約10分
075-221-0507 FAX:075-221-0530
7:00~19:00
年中無休
https://www.inoda-coffee.co.jp/

四条河原町近辺には他にも老舗カフェがたくさん!

今回は3つのお店を取材しましたが、四条河原町近辺には他にも魅力的なレトロカフェがたくさんあります。暑い夏の京都、旅先でのひと休みに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

スマート珈琲店
昭和7(1932)年「スマートランチ」を創業。戦後「スマート珈琲店」に変わり現在にいたります。山小屋のような雰囲気の中で、自家焙煎のコーヒーが味わえます。ホットケーキが人気ですが、夏はコーヒーフロートやプリンの注文も多いのだとか。お店は寺町商店街にあるので、利便性も抜群です

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■ スマート珈琲店

京都市中京区寺町通三条上る天性寺前町537
市営地下鉄東西線京都市役所前駅から徒歩1分
075-231-6547
8:00 ~ 19:00(2F ランチタイム:11:00 ~ 14:30(L.O))
喫茶・無休/ランチ・火曜日
http://www.smartcoffee.jp/

築地
四条河原町から東へ一筋入ったところにる築地は、昭和9(1934)年創業。繁華街なのに、驚くほど静かなロケーションです。玄関のカラフルなタイルやウェスタンの扉に、当時の時代背景が見えるよう。重厚感ある造りで、豪華な調度品があちこちに。名物のウィンナー珈琲やアイリッシュコーヒー(春・夏・秋提供)を飲みながら、優雅なひとときが過ごせます。

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■ 築地

京都市中京区米屋町 河原町四条上東入
四条河原町交差点より徒歩約2分
075-221-1053
11:00~18:00
休 木曜日

六曜社珈琲店
三条河原町交差点すぐの喫茶店で、1階は「六曜社珈琲店」、地下店は「COFFEE&BAR」として営業。昭和25(1950)年に地下から開店しましたが、のちに1階へ移転し地下はバーに。1985年頃から地下店も、自家焙煎コーヒーの店として昼営業を始めました。1階はネルドリップ、地下ではペーパードリップで抽出されるコーヒーがおいしいと評判です。

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■ 六曜社珈琲店

京都市中京区河原町三条下ル大黒町40
三条河原町交差点より徒歩約2分
075-241-3026
8:30〜22:30(L.O. 22:00)
休 水曜日
http://rokuyosha-coffee.com/

インパルス
昭和41(1966)年に太秦で創業後、河原町に移転。ジャズの名門レーベル「インパルス」が店名の由来で、ジャズ喫茶としてスタートしました。サイフォンで淹れるコーヒーはあっさりと美味。フードメニューも充実していて、お腹も満たせます。奥行きのあるつくりで坪庭もあり、京都らしい"うなぎの寝床"のようなお店です。

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■ インパルス

京都市中京区河原町通蛸薬師上ル奈良屋町292
四条河原町交差点より徒歩約3分
075-255-3629
9:00~22:00
不定休

京都在住ライター
デブ子デラックス

生まれも育ちも住まいも京都西部の、兼業webライター。素敵で知られざる!?京都西部の情報を「#京都西部の良きトコ広め隊」としてSNSで発信しています。趣味はカフェめぐり・写真・マラソン。今までに訪れたカフェは400軒強。カフェで食べるおいしいごはんとみそ汁が大好きです!

Twitterhttps://twitter.com/debu_52

カメラマン
後藤 大次郎 ごとう だいじろう

広告写真のフォトグラファーとして幅広く撮影に従事、写真作家としても活動中。 傍ら、撮影中の山で出会ったお坊様と、カメラを法螺貝に、三脚を金剛杖に持ち替え、修験行者として山を駆ける。

http://den-goto.comhttp://den-goto.com