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「病で苦しむ人を助けたい」"ドクドク鼓動"...細胞の数は「約3億個」iPS細胞でできた『動く心臓』 開幕まであと半年の「万博」最新技術を体感できるパビリオンが続々

大阪・関西万博

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 開催まで約半年と迫った大阪・関西万博。関西から世界へ、最先端技術で目指す未来とは?パビリオンの“最前線”を取材しました。

「アルファ世代に向けてワクワクする全体像をつくれたら」

 (パナソニックホールディングス 小川理子万博推進担当参与)「ついにここまできたなという感じで。多分、万博会場で一番先頭切って走ってるんじゃないかな」

 パナソニックグループのパビリオン「ノモの国」。子どもたちに自らの感性を解き放って新たな可能性に気付いてもらうというコンセプトです。
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 この建築を託されたのが、ドバイ万博で「日本館」を手掛けた永山祐子さんです。

 (建築家 永山祐子さん)「本当に繊細な構造体ができたかなと思います。これに揺れる要素が加わってくるので」
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 永山さんがこだわる“揺れる”要素というのはパイプにつける光沢のある薄い布。これが風に揺られシャボン玉が集まったようなパビリオンになる予定です。

 茨城県の工場にやってきた永山さん。特殊な形のパイプにどう布を張れば子どもたちがワクワクする世界を生み出せるのか?問題は布の長さにあるようです。

 【作業中の永山さんらの様子】
 「絞りすぎ」
 「引きつれてる」
 「窮屈じゃない?」

 その場でサイズの調整にとりかかります。
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 日が暮れた万博会場。LEDライトで照らした際の布の見え方のチェックを行います。

 (建築家 永山祐子さん)「青とホワイトをMAX(最大)で」

 海風に揺れながら光に反射し様々な表情を見せる布。発色の調整は必要ですがイメージには近づいたようです。

 (建築家 永山祐子さん)「アルファ世代(2010年以降生まれ)に向けてということもあるので、もう少し鮮やかさを足してワクワクするような全体像をつくれたらなと」

暗所で光る発光バクテリアを「未来の灯」に

 一方、パビリオンの内部では研究開発中の最新技術が展示される予定です。それが…

 (パナソニックホールディングス 管野天主任研究員)「発光バクテリアを展示しようとしていまして。“未来の灯”にならないかと」

 「発光バクテリア」とは イカの表面などについている微生物で暗いところでは光って見える特性があります。その微生物にエサとなる培地と呼ばれる黄色い液体や、酸素などを与えて培養し将来、空間演出などに使えるバイオライトにすべく研究しています。
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 電気を消して液体を振ってみると…蛍光色の光が浮き上がります。

 この新技術子どもたちにも体感してもらう予定ですが、難しいのが…

 (パナソニックホールディングス 管野天主任研究員)「万博では長期間水槽で明るさを維持しないといけない」

 光は通常なら1日ともたないそうで、エサとなる液体や微生物の動きを活発にする空気の量を調節することで、強く、長く光り続ける条件を探す作業を繰り返しています。

 (パナソニックホールディングス 管野天主任研究員)「空気を送ることで光ることを体感してもらえるように設計しているので、子どもの柔軟な発想だと別の楽しみ方、使い方が出てくるのではと期待しています」

命が宿ったような表情と動き…万博で出合える「アンドロイド」

 続いての関西発の最先端技術は、来年の大阪・関西万博で出合えるアンドロイドです。まるで命が宿ったような豊かな表情と滑らかな動き。 手がけるのは大阪大学の石黒浩教授。日本のロボット工学の第一人者です。

 (大阪大学 石黒浩教授)「(Q完成度は?)いいんじゃないですか。声入れたら本当に自然に見えますよ。指もちゃんと伸びてるし。完成度高いと思います」

 9月上旬、京都府内の研究施設ではアンドロイドの動きの開発が行われていました。

 例えば「耳をすます」仕草。アンドロイドの手を耳に近づける動きは可動域に限界があるため、顔のほうを手に近づけるように改善することで、より人間らしい動きに見せています。
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 今後、パビリオンの演出に合うよう動きを作りこんでいくといいます。

 (大阪大学 石黒浩教授)「積み重ねというか人間を丁寧に観察しながら、どういうところに人間らしさが表れているか、経験で学んでいくしかない」

 石黒教授はこのアンドロイド約20体と交流ができるパビリオン「いのちの未来」をプロデュース。その建物も特徴的なんです。

生命の起源『水』…「命について考えてもらえるといいなと思う」

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 9月11日、石黒教授たちを乗せた車が会場の夢洲へ向かっていました。

 (大阪大学 石黒浩教授)「周りのやつもまあ順調に出来てきている」
 
 パビリオンは去年9月から建設を始め、外観はほとんど完成。石黒教授も間近で観るのは初めてです。

 (石黒浩教授)「お~ちゃんとできてる。もうちょっと調整するの?」
 (スタッフ)「まだ調整します」
 (石黒浩教授)「でもだいたいイメージどおりですよね。天然のクーラーみたい」

 パビリオンでは生命の起源である「水」を循環させて高さ12mの外壁に沿う形で常に流しています。

 石黒教授は水のベールをくぐり、来場者に今回の万博の象徴でもあるいのちの未来を感じてほしいと話します。

 (大阪大学 石黒浩教授)「この場に立ってみると『あ、万博出来上がってきたな』と。人間とテクノロジー、いのちとテクノロジーの関係をここでは感じてもらう。自分たちで命について考えてもらえるといいなと思います」

「動く心臓」iPS細胞からできた心筋細胞を約3億個使用

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 続いてはパソナグループのパビリオン。ナビゲーターは鉄腕アトム、テーマは「いのち、ありがとう。」です。ここでの注目の展示はドクンドクンと脈打つ「動く心臓」です。直径約1.5cmで、iPS細胞からできた心筋細胞が約3億個使われています。
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 この「動く心臓」を手がけるのは大阪大学の澤芳樹名誉教授。

 (大阪大学 澤芳樹名誉教授)「とにかく心臓病で苦しむ人を助けたいというのが根本。心筋細胞たくさん作って、心不全を治せるかに挑んできた」

 がんに次いで死亡率の高い心疾患。数々の手術にあたってきた澤名誉教授が挑んでいるのが「再生医療」です。

 2020年、iPS細胞でつくった心筋細胞をシート状にして虚血性心筋症の患者の心臓に貼り、心機能を再生させる治験を世界で初めて成功させるなど着実に成果をあげてきました。

 今回の万博は、いのちの大切さを考えるきっかけにしてほしいといいます。そこで、実際に治療で使っているiPS細胞からできたひらひらと動く心筋シートと、小さな動く心臓の展示を決めました。この動く心臓はまだ血液を循環させる機能は持っていませんが、将来、研究が進めば人に移植される日もくるかもしれません。

 (大阪大学 澤芳樹名誉教授)「まだまだブレークスルー(飛躍的な進歩)が必要だと思います。すごいエネルギーとともに、命の大切さとか、命の息吹を感じていただけるのではないかと思います」

2024年10月10日(木)現在の情報です

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